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狼娘の嗅覚を使って捜索!

ホーン邸を飛び出したはいいけど、どこら辺で落としたのかを聞けばよかったなぁ…

ただ、落ちているとすればホーン商会の本店とホーン邸の間では無いかと思う。

地図によればホーン商会の店は南主要道路に面しているようなので店までの道のりを嗅いでいこう。

南道路に向かう道は来たときと同じなので迷うことも無い。

しばらく嗅ぎ進みついに南道路まで出てしまった。ここまで手がかりは無しだ。

南道路に出るとなるといろんな人の匂いや食べ物などの匂いが多くするため探し辛くなるのでできればこれまでに何かしら手がかりを掴んでおきたかったのだが…そう簡単には行かないみたいだ。



南道路を探し始めて数十分、1回物陰に隠れて変身し直したがまだ手がかりは見つからない。

ポーチから借りた布を取り出してもう一度匂いを確認してからまた捜索に移る。

その時、ほんの僅かだがこの布以外からハンナさんの匂いがした気がした。

匂いがしたと感じた方へ一目散に走り出す。周りの人の訝しげな視線を無視してひた走る。段々と匂いが強くなって行き匂いの元にたどり着いた。だがそこにいたのは…


「カラス…?」


元の世界で言うカラスに似たような鳥だった。なぜこの鳥からハンナさんの匂いがするのだろうか?しかも相当微かにしか匂ってこない。なら…


「もしかしてこのカラス?が持ち去ったとか…」


元の世界にも光るものを好んで巣に持ち帰る鳥がいるというのは聞いたことがある。もし巣に持ち帰ったならこの鳥を追いかければ指輪があるかもしれない。現状、他に手掛かりが無いのでそれに賭けるしか無い。

鳥は今、餌を探しているのか道路脇の花壇を嘴でつついて…あっ飛んだ!

嘴には虫が咥えられているのでやはり餌を探していたのだろう。いや、今はそれより追いかけなければ。


「まずいな…見失いそうだ」


鳥に道路は関係ないので建物の上空を悠々と飛んでいく。


「こうなったら…」


もう建物の屋根の上を走るしか無い!狼娘の脚力なら不可能では無いはずだ。南道路を外れ、脇道に行った所で塀を使い一気に跳躍する。

あっけなく屋根の上に乗ることができた。これから走るであろう屋根がついている建物に住む人には申し訳ないがこうするしかない…と思う。

件の鳥を見失っていないことを確認し走り出そうとして道路から視線を感じた。視線を感じる方向を見ると14歳くらいの男の子が顔を赤くしてこちらを見ている。なぜ顔を赤く…?と考えて気付いた。自分は今ワンピースだということに。

その瞬間その男の子以上に顔が赤くなったのが自分でも解った。ワンピースでこれだけ激しく動けばワンピースの裾が捲れるのは言うまでも無い…

顔を赤くしている男の子はボクのぱ、パンツを見て赤くなっているのだろう。

相手が年下と思われる男の子だとしてもは、恥ずかしい…!もしかしてこれまで走っているときもつい男の時のように何も考えずに走っていたけど

もしかして見えていたかも…?


「~~~~っ!」


い、いや今はそれよりも鳥を追いかけないと…あれ?これ屋根から屋根に飛び乗るときも下から丸見えじゃ……うん手で押さえればな、なんとかなる。

早く追わなくちゃ…だいぶ呆然としてしまったが鳥はまだ見える範囲にいた。ほっと胸に手を当て(ふにゅっ)息をなで下ろせ…なかった。

意識から外して動いていたがいざ気になり出すと止まらない…がそうは言っていられないくらい鳥との距離が離れ始めているので、無理矢理意識から外し走り出す。……無理だった。走ってジャンプする度に小刻みに揺れる胸を否応なく意識しながら鳥を追う。

10分ほど追いかけたところで鳥が下に降りてきてとある建物の軒下に隠れて見えなくなった。


「あそこか…」


王都の建物の屋根は大体三角屋根なのだが、追っていた鳥はどうやら三角屋根の上の角の部分に巣があるよう。

しばらく待つとその鳥が巣のあると思われる場所から出てきてまたどこかへ飛び去っていった。


鳥の巣があるはずの建物の屋根に飛び乗り巣を探すと思った通り三角屋根の角に巣があった。

覗いてみると卵と一緒に金色に光る指輪がある。


「あった!」


匂いを嗅いでみると鳥の匂いの他に間違いなくハンナさんの匂いがする。


「よし、取ろう」


屋根のギリギリから巣に手を伸ばす…指輪を掴んだ!「ガァッ」


「きゃっ!?」


先程飛び去ったはずの鳥がいつの間にか近くに来ていた。驚いて屋根から落ちる。が狼娘の反射神経のおかげか、特に足を捻ったりすること無く着地できた。

ここに居たらまた鳥に襲われそうなのでさっさと立ち去ることにして少し離れた建物の屋根に飛び乗った。


「ふぅ……なんとか探し出せたな。後は渡すだけだ」


屋根の上から周りを見渡してみると南の大門が一番近くに見えた。


「結構遠くまで来たな。そりゃハンナさん達には見つからないわけだ」


とりあえず南道路に出て南道路沿いにホーン邸に向かおう。にしても…さっき鳥に襲われたときに出た悲鳴…完全に女の子の悲鳴だったなぁ…



南道路を経由してホーン邸に帰ってきた。ここまで来る間に変身は解けたので今は元の姿だ。

…南道路ではボクの事が噂になっていた。「屋根を駆ける狼の獣人の女の子がいた」とか「めっちゃ可愛かった」とかいう話が聞こえてきて身震いする。

これは数日は狼娘の姿で王都をうろつけないな…


使用人さんが出てきてくれて客間に通される。少ししてハンナさんが来た。


「どう?見つかった?」


「ありましたよ。はい、これ!」


ポーチから指輪を取り出し渡す。すると指輪を見た瞬間ハンナさんがパッと笑顔になった。


「そう!これよ!ありがとうね、見つけてくださって」


「見つかって良かったです」


「それで…一体どこにあったのかしら」


「それが…南の大門の方にありまして、鳥が拾って持って行っていたみたいで、巣の中にありました」


「そんな遠くに!?見つからない訳ね…」


「ではこれで依頼達成って事で」


「えぇ、本当にありがとう。成功報酬を出すわ」


「…ギルドの依頼金じゃないんですか?」


「あれは探索協力のお金よ。見つけたら別途報酬を出すって書かなかったかしら?」


「いえ…見てないですね」


そういえば依頼書自体は見てないなぁ…


「まぁ見つけてくれたお礼だから素直に受け取って」


「わかりました。ありがとうございます」


「お礼なんていいのよ。はい、これ依頼達成書ね」


昨日と同じく達成証明の紙を貰った。


「では、僕はこれで失礼しますね」


「えぇ、困りごとがあったら言ってね?何か力になれるかもしれないわ」


「ありがとうございます!」


ホーン邸を後にし、ギルドへの帰路に着いた。



何事も無くギルドに着いたので受付に向かいリラさんに話しかける。


「無事見つけられたよ!」


「見つけれたんですか!よく見つけられましたね!探し物系の依頼は依頼者が探しているものを見つけられれば報酬が貰えることか大半なんですが…広大な王都内でなくした物なんてそうそう見つかりませんからね…それに探し物が見つからないと協力料しか貰えなくてしかも大したことの無い値段だから魔物を狩った方が断然稼げるって事で人気が無い依頼なんです」


なるほど…だから依頼が溜まりがちな訳か…


「では今回の報酬は日当金6000イムと別途報酬として50000イムの合計56000イムになります!」


おぉ!そんなに貰えるのか!銀貨5枚と大銅貨6枚を受け取った。銀貨は初めて見た。しばらくは依頼をしなくてもいいくらいの値段を稼いだわけだが…貯めるに越したことは無いので明日も普通に依頼を受けよう。


「で、どうやって見つけたんですか?」


「狼娘の時は嗅覚も敏感になるからそれを使ったんだよ」


「なるほど女の子の姿で探索したんですね!確かにそれなら見つかる可能性も高くなりますね!」


「語弊がある気がする…」


「気のせいです」


いや…絶対分かってて言ってるだろ…


「…そう。じゃあ今日はもう休もうかな


「わかりました!お疲れ様です!」


「ありがとう。リラも仕事頑張ってね」


「はい!」


受付を後にして部屋に向かった。

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