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スライムでできることと名前

ギルドを出て屋台を見て回る。今日の昼食はホットドッグ(?)にした。

ヘルミネは今朝僕が食べたソーセージを2本食べたようだ。


昼食が終わったのでまたギルドの地下練習場に戻る。今度はスライムの姿の時にできることについて検証しよう。

先ほどヘルミネにスライムの時にできることの検証を手伝ってほしいという話をしたのだが一も二もなく「いいぞ!」と言われた。

面倒だとは思わないのか?と聞いたところ、「スライムに変身した姿を見られるだけで十分なご褒美だ!」と満面の笑みで言われた。

……聞いた自分がバカだったようだ。

気を取り直して検証を始めよう。だがその前に、


「これから変身するけどもし僕たち以外の人がこの地下練習場に入ってきたら昨日みたいに小さくなるからすぐポケットに入れてくれ」


「わかった」


頭の中で変身、スライム!と念じると例によって全身が魔力に覆われる。そしてやっぱり頭もふわふわしてきた。

目の前が見えるようになった。重心が変化したからか少しよろめく。女の子のからだに変身するのも数回目だけどまだ変な感じ…


「うわぁ…やっぱ可愛いな…またぷにぷにしたい…」


ヘルミネがぶつぶつ言ってるけどきこえない、きこえない。


「よーし張り切っていってみよー」


まずは小さくなれること。昨日と同じように念じて体を元の大きさから小さくしたり戻してみる。でも元より大きくなることはできないみたい。

次、物理的な攻撃を受けなくできる。


「ヘルミネ、ひびの入ってない木剣でボクの体を叩いてみてくれる?」


「いきなり何を…あぁ。物理攻撃無効か、でも本当じゃなかったら痛いぞ?」


「うん。たぶん…だいじょぶ」


「そうか。ならば行くぞ」


ヘルミネが木剣をボクの肩に振り下ろす。さすがに少し怖いので目をつぶる。木剣はボクの肩に当たった瞬間ぼよんと音を立てるように止まった。肩に当たったって感触はあるけど全く痛くない。木剣を振るったヘルミネもびっくりしたみたいで


「本当に効かないのか…」


とぼやいていた。

その後も何度か他の体の位置や強さで叩いて貰ったけど全く痛くなかった。

ほんとに物理的攻撃が効かないみたいだ。

次、スライムの姿で魔法は使えるのかな?

ファイヤーボールを作り出してみる。…ファイヤーボールは作り出せたけどなんかスライムのようにぐにょんぐにょんしてる。

ためしに壁に投げてみる。するとファイヤーボールはそのまま壁に当たって普通に飛び散った。どうやら形が変わるだけで

効果には特に影響は無いみたい。数回やってみたけど結果は同じだった。

4つめ、最後は酸だ。


「ヘルミネ、何か紙みたいないらない物を持ってない?」


「いらない紙か…それならたしか…」


ヘルミネはポーチから紙片を取り出して床に置いた。


「ありがとーそれじゃあ酸は危ないから少し離れてて?」


「酸を出すのか。わかった」


ヘルミネが離れたことを確認して、酸をイメージする。すると喉の奥に液体が溜まってきたのでそれを床の紙片に向けて。吐き出す。


「んーーーぶぇっ」

酸がかかった紙片は色が黒くなり、しばらく経って溶けて消えた。そしてやっぱり体がだるく感じるから自分の魔力を使って酸を作り出している

ことがわかった。これで一応スライムの姿でできることの確認は終わったけど、まだ元に戻る時間は残っている。

するとヘルミネが口を開いた。


「もう検証は終わったのか?」


「うん」


「なら残った時間はぷにぷにしていいか!」


…しょうがない。手伝ってくれたし。


「……いいよ」


「やった!」


ヘルミネによるぷにぷには変身時間が終わるまで続いた。



変身が解けて気付いた。酸は魔力を消費して吐き出すなら魔法で再現できたりして…

早速やってみることにする。スライムの姿で酸を吐き出したとき、自分の魔力を多く消費していた。

しかも大気中の魔力を使っている感じはしなかったので自分の魔力だけで酸をイメージすれば酸を魔法で作れるのではないか?

自分の魔力だけを使い、広げた手のひらの上に魔力を集め、酸をイメージする。すると透明の液体が手のひらの上に出現した。

出現したそれを先ほどの紙片の一枚に飛ばす。すると紙片は黒ずみしばらくすると部分部分溶けた状態になった。


「よし!できた!」


「これは…もしかして酸を魔法で作ったのか?」


「あぁ、そうだ。こんなに上手くいくとは思わなかったけどね!」


「酸を作り出す魔法なんて聞いたことないな…」


「ほんとうか?やった!」


過程はともかく異世界で魔法を作ったかもなんて…異世界に居るって感じがする。

喜んでいると今度はヘルミネが口を開いた。


「そういえば、スライムの時に出す酸より魔法で出す酸の方が弱いと思うのだが」


確かに…魔法で出した酸だと紙片が完全に溶けずに残っている。気にしていなかったがそうかもしれない。


「…確認してみよっか」


あまり変身したくないが確認は必要だろう。

スライムの姿になってさっきと同じように酸を口から吐くそういえば吐く量を減らす事ってできないのかな?前よりも少ないイメージで紙片に向けて酸を吐く。


「んーぶぇっ」


さっき出した量より少ない量出せた。酸が当たった紙片は黒く変わり、そして全部消えた。


「やはり酸の強さは魔法より強いみたいだな」


「そうみたいだね!」


確認が終わって一段落した。その時、階段の方から誰かが降りてくる音が聞こえた。

すぐヘルミネと顔を見合わせ小さくなる。十分な小ささになるとヘルミネがポケットに入れてくれた。

だけど入ったとき逆さまだったから苦しい…


「フウガさーん!ヘルミネさーん!調子はどうですか!」


この声は…リラさんかな?


「リラじゃないか。どうした?こんな所に」


ヘルミネが応答してくれる。


「いやー諸事情でフウガさんにはギルド長から目をかけるように言われてるんですよーだから手が空いたので様子を見に来ました!というかフウガさんは?一緒じゃないんですか?」


ギルド長に目をかけられてるのかー転生者だからだろうなぁ。…それにしてもスライムだとしても体勢が苦しい。早く戻ってくれないかなぁ。


「…今はちょっとな。」


うぅ…やっぱり苦しい…少しだけなら動いてもバレない…よね?

もぞもぞ


「…今ポケット動きませんでした?あっそうかフウガさんはそこに入ってるんですね!」

「な、なんでわかった!」


「え?ほんとに入ってるんですか?」


「いや、その…」


ヘルミネがこっちを見てきたのでうなずく。するとボクをポケットの中から取りだした。


「えっ!?スライム!?」


ボクを見たリラさんは目を見開いて驚いた後、満面の笑みに変わった。


「わっ!ほんとに入ってた…今度はスライムですか!かっわいぃぃおぉぉ見た目通りぷにっぷにだぁ!」


思った通りぷにぷにされた。


「むっ!君もこの可愛さがわかるか!」


混ぜるな危険!な二人を合わせちゃったかも…

そろそろ手を止めてくれないかなぁ…


ひょっほろほろやめへ(ちょっそろそろやめて)…」

ほっぺたをむにられているので変な発音になった


「はい!ヘルミネさんもふうちゃんの可愛さがわかるんですね!」


うぇっ!?


「ふうちゃん?」


「そうです!私とエルは女の子の時のフウガさんをふうちゃんって呼ぶようにしてます!」


うぅ…ヘルミネにふうちゃんって呼ばれてることバレた…

「ぶはっ、ふうちゃん?フウガお前二人にそう呼ばれてるのか?」

「……うん」

「随分と可愛い名前を付けられてるじゃないか。だがリラ、提案があるんだが…こんなに姿が変わってるんだ。どうせなら名前のもじりじゃなくて別の女の子っぽい名前を考えないか?」


「ちょっ!?勝手にーー」


「ふうちゃんも女の子っぽい名前だと思いますが…そうですね!どうせならもっと女の子っぽい名前を考えましょう!」


だめだ…聞こえてない…「ふうちゃん」だけでも呼ばれたら恥ずかしいのに…

遠い目をしながら現実逃避をしている間にもう決まったようだ………早くない!?


「フウガ!お前の女の子の時の名前を考えたぞ!トランって名前だ!どうだ!」


どうだって言われても…


「で、できればフウガって呼んでくれると…」


「「却下だ(です)!」」


うぅ…本当に呼ばれちゃうのか…

でも案外しっくり…いやいやいやボクはまた何を考えて…


「これからはトランちゃんって呼ばせてもらいますね!もちろんエルにも話しておくから!」


ボクに拒否権はないみたいだ…

この後、変身が解けるまで二人に可愛がられた…

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