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41-13 かまって欲しいと決めつける

 地の神ジミダ・ワーンは、自然の中で育まれた神だ。自然の営みと大地の祝福の顕現であり、その恵みは大地より生じ、大地に還元する。

 しかし人と一切関りが無いかと言えば、そういうわけでもない。人間もまた、大地の一部であるという概念が、ジミダの中にある。

 そしてジミダは、大地を穢す者を許さない。大地を穢す者は大抵が心無い人間であり、ジミダはそれらを尽く屠ってきた。


 そんなジミダが、悪神監獄の所長に目をつけられ、悪神監獄へと収監された。


 悪神監獄には結界が張られている。神の力の源である信仰心が届かなくする結界だ。しかしジミダは信仰を糧としていない。監獄内でも、床から大地の力を吸い取って糧に出来る。


(あの両手に持った二本の曲刀。常に床に突き刺しているあれだね。床の下から常に力を吸い続け、ジミダに供給している。つまり――)


 ジミダの力の流れを遮断すれば、ジミダを大きく弱体化できると、ミヤは考える。


(刀を折るか? いや、刀もすぐに再生できるだろう。あの刀はジミダの体の一部だしね。力の供給が一瞬途切れたからといって、すぐに再開できる)


 力の遮断も容易ではないし、その方法に執着するのもいい手ではないと、ミヤは判断した。しかし手の一つではある。


 チューコの手下の神々が、ミヤを攻撃しだす。


「余計な真似を。私の獲物だぞ。かつてないほどの好敵手だ。邪魔をしてほしくないものだ」


 その光景を見てげんなりするジミダ。


 ジミダはチューコに精神支配されそうになったが、抵抗してはねのけた。その後、チューコが解放してくれるという理由で、取引を行い、チューコ達の敵とこうして今戦っている。故にチューコの方針にただ従っているわけではなく、やり方に反感を抱くこともある。


「結構ヤバい所だったよ。二人共いい所に来てくれたね」

「ぶひー、ノアちんはともかく、ミヤまでピンチとは中々レアなシチュでして」


 ミヤが言うと、サユリが真顔で返す。それだけ強敵であると認識し、気を引き締めていた。 


「レオパ、サユリ、操られている囚神の担当よろしく」


 ノアが声をかける。


「あはっ、そこのチューコに洗脳されてるって聞いたよっ」


 レオパが伺う。


「チューコに洗脳されてるけど、面倒だから殺していいよ」

「相変わらずノアちんは血も涙も無いのだ」


 ノアの身も蓋も無い台詞を聞いて、サユリがおかしそうに笑った。


「ごぉおぉおぉぉっ!」


 レオパが咆哮をあげ、空中を泳ぎ、神々めがけて突っ込んでいく。


「ブヒビーム!」


 サユリが悪魔の羽を生やした子豚を四匹呼び出す。子豚達が一斉に鼻からビームを放つ。


 レオパを追い越す格好で、複数のビームが神々に着弾した。防いだ者もいたが、いずれにせよ多くの神々がひるんだ。


 その隙をつく格好で、接近したレオパが神の一人の喉元に噛みつき、回転する。喉笛を引きちぎられた神が、血をまき散らしながら崩れ落ちる。


「これで集中できるな」


 ジミダが呟くと、ミヤとの間合いを再び詰める。

 ただ間合いを詰めただけではなかった。ジミダが駆け抜けた直後、床が破片上になってめくれていき、ジミダを飛び越えて、石つぶてとなってミヤに飛来する。


 ミヤは魔力障壁を張り、石つぶてを全て受け止めたが、突っ込んできたジミダが刀を振るい、障壁を切り裂いた。


 そのままミヤに迫るジミダであったが、ミヤは至近距離まで引き付けた所で衝撃波を放ち、ジミダに浴びせる。


 強烈なカウンターを食らった格好のジミダが、大きく吹き飛ばされたが、空中で一回転して着地すると、またミヤに向かって正面から突っ込んでいく。


「ここまでガンガン攻めてくる奴も珍しいね」


 曲刀の連続攻撃を避けながら、ミヤは呆れと感心が入り混じった声で言った。


「ふむ。私からすれば、私の攻撃を尽く凌いでいる貴方に驚きだがね」


 ジミダが言った直後、ミヤが念動力猫パンチを横薙ぎに繰り出した。


 念動力猫パンチをまともにくらい、ジミダが再び大きく吹き飛ばされ、そのまま猛スピードで空中を何回転もして、今度は着地することもできずに床に打ち付けられ、仰向けに倒れた。その際、マスクの半分が破壊されて破片が飛び散る。

 ジミダの素顔が見える。白髪の老人だった。長い口髭と顎髭も真っ白だ。


 ジミダが吹き飛ばされて倒れるとほぼ同時に、ノアも倒されていた。こちらはうつ伏せに倒れている。


「逆にすればよかったんじゃない? どう見てもレオパとあの豚みそ女の方が、あんたより強いし、あんたじゃ私に敵わないのは歴然としているのにさ」


 ノアを攻撃したチューコが、嘲笑交じりに言い放つ。


「いや、俺の方がチューコより強いよ」


 口から血を垂らして立ち上がり、ノアはにやにや笑いながら言い切った。


「チューコは弱い。半端者だからね。苦悩しなくていいことに苦悩しちゃってる、可哀想な子だからね。そんな子に俺は負けないから」

「まだ言うの……」


 苛立ちを覚えるチューコ。


 何をどう見ても、実力では自分の方が大きく上回っている。ノアより確実に強い。それなのにチューコはノアの言葉を無視しきれない。一笑に付すことが出来ない。小さな刺が刺さり、痛みと不快感をもたらしているような感覚だ。


「むしろ俺がチューコに付き合ってあげてるんだよ? チューコが可哀想だから。俺はチューコと違って完璧な悪。チューコが憧れる存在であり、チューコは俺にかまって欲しいはず」

「勝手にほざいてろ!」


 チューコが自分でも驚く声量での怒声をあげた。無意識で叫んでいた。


「二つの心があるから苦しんでいる。どちらかに傾け、固めればいいのに。馬鹿なチューコ。そしてそれが出来ない可哀想なチューコ」

「うるさいっての! あんたに何がわかるの!」


 哀れみに満ちた顔と声で告げるノアに、激昂するチューコ。


「わかるから哀れんでいる」


 言いつつ、ノアはペンギンロボを一瞥した。


(ペンギンロボを出してはいるけど、今はこいつの力を見せないでおく方がいいかな。ここぞという時にとっておこう)


 ここでチューコとの決着がつくと、ノアには思えなかった。そして今急いで決着をつける必要も無いと感じた。


 ジミダがまたもネックスプリングで起きると、ミヤのいる方へ猛然と駆けていく。


「しつこい奴だよっ」


 鬱陶しげに吐き捨て、念動力猫パンチを二発連続で放つミヤ。


 ジミダの動きが止まった。しかし念動力猫パンチを受けてはいなかった。ジミダの足元から石壁が幾重にも出現し、二発の念動力猫パンチを代わりに受けて、威力を殺していた。


(そしてしぶとい奴だよ)


 ミヤが口の中で呟いたその時、ジミダが再び駆け、一気に間合いを詰めてきた。

 床を切りつける音が一際激しく響き、ジミダの刀が振り上げられる。


 初太刀を回避したミヤであったが、ジミダはさらに踏み込んで、もう一振りの刀を一戦させる。


(さっき見たパターンだ)


 二太刀目を回避し、さらに続く三太刀目を警戒するミヤ。

 三太刀目がすぐに繰り出されることはなかった。代わりに石筍が床から無数に生え、ミヤの体を貫かんとする。


 床からの何かしらの攻撃も予測していたミヤは、これも器用に避けていく。


 少し遅れての三太刀目が繰り出されようとしたその瞬間――

 ジミダは目を剥いた。突然ミヤと自分との間に、大きく口を開いたレオパが現れたのだ。


(監獄内では転移は使えぬのでは無かったか? 空間操作がされた気配も感じなかったぞ)


 一瞬驚き戸惑ったジミダであったが、レオパが自分に向かって噛みつこうとしてきたので、ミヤに繰り出すつもりだった刀を、そのままレオパに向けて切りつける。


 刀は空を切った。何も手ごたえは無かった。


(幻影かい。してやられたわ。しかしセコい手を――)


 突然現れたレオパが幻影だと知ったジミダは、そのままレオパの幻影を突き抜けて、ミヤに切りかかろうとしたが――


「なっ!?」


 驚愕の叫びをあげるジミダ。レオパの牙が、ジミダの首筋に食い込んでいたのだ。

 ただ噛みついただけではない。レオパは噛みついた相手に、牙から破壊の魔力を注ぎ込む。単純なダメージに加え、しばらく再生不能にしてしまう。


 ジミダが横向けに倒れる。その上にレオパが乗り、動きを封じる。


(あはっ、ミヤの奥の手、うまくタイミングを合わせられたっ)


 離れた場所にいるレオパが、空中で噛みつきく動作を行ったままほくそ笑む。


 レオパはミヤから念話で、自身が遠方にあるものを幻影で投影し、モデルとなった本体の動きに合わせて、幻影を一時的に実体化させる魔法を使えると、伝えられていた。そのため、チューコに支配された神々と戦いながら、ミヤとジミダの戦いも注視していた。

 そしてミヤからの合図を受け、レオパの幻影が出現した瞬間、レオパはジミダに襲いかかる動作を行った。そして何も無い場所で、噛みついた相手に流し込む破壊魔法を実行すると、実体化した幻影も魔法を発動させた。ただしミヤ曰く、魔法の威力は本来より弱くなるとのことだ。


(空間操作で攻撃を転移させているわけではなくて、幻影を通じての連動らしいねー。そして魔法の効果は、オリジナルの100%の状態を引き出すには至らないってことかー)


 ジミダの様子を見て、レオパはミヤから聞いた情報通りであることを確認する。レオパの魔法の効果がいまいち弱い。再生は不能にしているようだが、破壊エネルギーを注ぎ込まれたダメージがいまいちだ。

 ミヤも以前、レオパの噛みつきが再生不能にする効果があることを聞いて知っていたので、それを利用させてもらった。そして再生できなくなった今こそ、最大の好機だ。


 幻影のレオパに覆いかぶされ、動きを封じられたジミダに向かって、ミヤは念動力猫パンチを散髪連続で打ち込んだ。


(再生が……出来ない……?)


 刀によって力を吸い上げているにも関わらず、ダメージを再生できない事態に、ジミダは混乱していた。


(色々とわけがわからないが、どうやら私の負けのようだ……。わけがわからなかったが、最期の戦いは楽しかったぞ)


 ジミダは満足顔で、敗北を、そして死を受け入れる。


「お前は……本当に強かったよ。疲れたわ」


 ミヤが寄ってきて、倒れたジミダを覗き込み、告げる。


「あんたもな……。猫の神か何かか?」


 最期にそう問いかけ、ジミダは目を閉じた。


(魔王サリーと遜色ない強さだったかもね。速いし手数も多いしで大変だった)


 ジミダの亡骸を見下ろし、ミヤは大きく息を吐く。


「あはっ、こっちも丁度終わったよー」

「残るは一人であるが……あ、逃げた」


 レオパとサユリが神々を掃討して報告すると、チューコが大急ぎで逃げていた。


「ノアちん、どうしてむざむざ逃がしたであるか」

「どうしてって、俺がチューコ相手にどれだけ苦戦していたと思ってるの? そんな余力無かったよ」


 サユリが問うと、ノアが倒れた状態で答える。


「それにしても、幻影を実体化して魔法まで拝借するなんて、反則級な魔法だよねっ。あははっ」

「ふんっ、相手を再生不能にする魔法も反則級に脅威だよ。儂も使えるけどね」


 笑いあうレオパとミヤであった。

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