6-4 怒った顔の絵を描かれて、プレゼントされたらどんな気分?
ある日、ポーカーフェイスの魔術師ジャン・アンリは、同胞達が集まる会合に出席した。
「副棟梁、賛同者が中々増えませんね」
会合の場にいる同志の一人が、ジャン・アンリに声をかける。
「どうしても選別に時間がかかる。どうしても慎重になる。我等の組織の存在が知れてしまった事は痛かったと、いうことでよろしいか?」
抑揚に欠けた声でジャン・アンリは話す? しかし最後の一言だけ、語尾のトーンが上がっている。何故か疑問形だ。
彼等は秘密結社『K&Mアゲイン』の一員である。
K&Mアゲインは、王政と魔術師ギルドの復権を目指す者達が集いし組織だが、その人数も規模も微妙だ。何より手間取っているのは、同志を増やすのが難しい事だ。現体制に不満を持つ魔術師を集めるのは、非常に困難だ。探りを入れるテンプレートは確立しているが、その手順を踏んで、同志として迎えられる人材かどうか見極めるのは、非常に困難だ。
あげく、ジャン・アンリの言う通り、組織の存在そのものが、貴族にも魔術師達にも知られてしまい、今や彼等はお尋ね者となった。ジャン・アンリもそのメンバーの一人である事が判明している。
幸運なのは、棟梁の正体が知られていない事だ。しかしその棟梁は、最近会合に姿を見せない。
「棟梁も一年以上も前に、西の大陸に行くと言ったきりです。もう組織の存続も、崇高なる大義も、棟梁は諦めて投げ出してしまったのではないかと、疑う者さえいる始末ですよ」
「では、彼女に限ってそれは絶対に無いとしておこう。案ずるなとも言っておく。彼女の魂の中に光が、その強き輝きを失うことはないというわけだ。理解してもらえたか?」
ぼやく同胞に、ジャン・アンリは淡々とした口調で、独特の言葉回しで答える。
(しかし停滞している現状は好ましくないとも言える。長年かけて、貴族達を削ってきたが、我々の存在もバレてしまっている)
ジャン・アンリが憂いていたその時、使い魔である虫達が部屋に一斉に飛び込んできた。
「先に逃げろと言っておく。あっさりバレたという話でいいだろう」
「えっ!」
あまりにも冷静かつ普通に告げるジャン・アンリに、同胞の魔術師は困惑し、すぐに行動できなかった。
黒い甲冑姿の騎士達が室内に踏み込んでくる。黒騎士団だ。
「うおっ! 何だこれは!?」
「虫だ! 鎧の中に入ってくる!」
「ぐわっ! 目に入った!」
騎士達が大量の虫にたかられ、身動き取れないうちに、ジャン・アンリとその同胞は逃走する。
逃亡生活を送るようになって四日後、ジャン・アンリは唐突に現れた空間の歪みの中にと、吸い込まれた。
***
「あっさりとバレたという解釈でよろしいか?」
ジャン・アンリと指摘されたお鼠様の体が縮んでいき、顔も鼠のそれから人の顔になる。服装も変化して、魔術師を示すローブを纏っている。
「黒騎士団がここまで追ってきたというわけではなく、皮肉な偶然だが、結果としてまた黒騎士団と戦わねばならなくなったのではないか? そして、そうしなければこの物語は進まない。皮肉に皮肉を重ねた話という解釈で問題あるまい?」
「皮肉はこちらにとっても同じことだ。指名手配中の貴様が救出対象だったとはな。そしてお前を倒すことで、この人喰い絵本は攻略できるのかな?」
独特な言葉遣いで淡々と語るジャン・アンリに、ゴートが不敵な笑みを広げながら、こちらは皮肉げに話す。
「何を言ってるのかわからんが、同志よ、こいつらは敵だぞ」
「では、承知していると答えておこう」
お鼠様が促すと、ジャン・アンリは呪文を唱え始める。
「させるかっ」
ユーリが魔法で攻撃する。凄まじい突風を巻き起こし、ジャン・アンリの呪文を阻害しようとしたが、ジャン・アンリの呪文の詠唱は短く、即座に魔術を完成させていた。
ジャン・アンリとお鼠様の前方に、お鼠様と宝石百足の巨体をも上回る体高の、巨大な虫が姿を現した。ナナフシとカマキリを足したような外見で、昆虫よりずっと足の数は多い。カマキリの鎌に当たる部分が、六本もある。体中のあちこちから棘が生えている。頭部もカマキリのそれだ。
しかし何より目を引いたのは、虫の胸部に埋まっていたものだ。成人男女と子供二人の計四人が、虫の中に体の大半を埋没させて、頭部と胸部だけが露出している。
「あれは行方不明になっていたガウェイン侯爵っ」
騎士の一人が、虫の中に埋まっていた男を見て叫ぶ。
「選民派の大御所だったが、一家まとめて蒸発していたな」
ゴートが呻く。実は貴族の行方不明事件や殺人事件はあまり珍しいことではないので、大して気に留めていなかった。
「少しずつ。少しずつだ。削り取ってきたと告げておく。無理せぬように、少しずつ、貴族達を間引いてきたと知ってもらおう。そして今や選民派の数は正道派を下回っている。これが我々の努力の成果という事で、どうだろう?」
「何だと……」
「何でいちいち変なタイミングで疑問形なんだい」
ジャン・アンリの台詞を聞いて、ゴートが眉をひそめ、ミヤはツッコミを入れた。
「お鼠様は私と同じだと言っておく。だから私は人喰い絵本に選ばれたとも言っておく。敵をただ殺しただけでは気が済まない。復讐の正義に、趣味を混ぜて楽しむ。そこの魔法使いの少年。君は随分怒っていたな。では私の作品を御覧じろ。さらなる怒りを見せて欲しい、その表情を見せて欲しいと望んでおこう。即ち、君の魂の光を見せて欲しい」
ジャン・アンリがユーリを見て告げる。
(お鼠様と同じ? つまり『被り』かい。お鼠様の役をジャン・アンリがやるはずなのに、お鼠様も絵本の中に同時に存在しちまっているんだね)
ミヤはそのような特殊ケースもこれまで幾つか見てきている。かなり稀だが。
「子供にまで罪があるっていうの?」
虫に混ぜられている二人の子供を一瞥して、ユーリが怒りを押し殺した声で問う。子供の年齢は、どちらも十歳にも満たない。
「ふむ。そういう理屈で来たか。ではこう返すとしよう。ゴキブリの子はゴキブリ。誰も子供だからといって、ゴキブリの子に情けはかけない。それと同じではないのか? 貴族の子は貴族。私は断じて情けをかけないということでよろしいか? 蔑みと憎悪をもって対処して構わないか? この貴族の子も成長したら、税で贅を尽くし、民を踏みにじる。民を生かさず殺さず弄ぶ。民から搾取して、民を苦しませる。この理屈でどうだろう? 理解してもらえたか?」
感情を交えず、まるで教師が生徒に説くかのような口調で話すジャン・アンリに対し、ユーリは先程以上の怒りを露わにする。
(こんな人間がいるんだ……。こいつ、自分のしたことを正当化どころじゃない。一切疑問も無い。良心の呵責も無いし、本当にただ害虫の処理をしたってくらいにしか認識してないんだ)
そう考えることで、ユーリはジャン・アンリという男に対し、強い怒りとおぞましさを感じた。こんな男の存在を許してはいけないと強く思い、殺意に繋がる。
「ふむ。よい表情だ。怒りが露わになっている。魂の光が見えているか? 正義感の強い者に見受けられる、とても素直かつ率直な反応だ。非常に好感が持てる」
そんなユーリを見て、ひどく淡々とした口調でジャン・アンリは言った。
「ユーリ、頭に血をのぼらせて暴走するんじゃないよ」
「わかっています。師匠」
ミヤが釘をさし、ユーリは深呼吸をしながら、敵の出方を見る。
巨大化けカマキリが動く。ユーリ達がいる場所に一気に間合いを詰めると、六つの鎌のうち二つを縦から、別の四つを横から振るう。
鎌は全て途中で止まった。ミヤが作りだした魔力の防護壁が止めた。
(家屋を切り裂いてしまう威力があるのだが、これは流石は大魔法使いミヤと言えばよいのか?)
渾身の攻撃をあっさりと防がれたが、ジャン・アンリは慌てる事無く、感心していた。
カマキリの動きが止まった所で、魔術師が呪文を唱え終え、火球を巨大化けカマキリの顔めがけて放つ。
ミヤは魔術師の用いた魔術を見て、防護壁の一部に穴を開き、火球が素通りして巨大化けカマキリに届くようにした。
火球が巨大化けカマキリの顔を直撃し、巨大化けカマキリは顔を炎に包まれた状態で、大きく身をのけぞらせた。
次の瞬間、巨大化けカマキリの胸部が、爆発するように吹き飛んだ。中に貴族の家族が埋まっていた辺りだ。
爆発はユーリの魔法によって引き起こされたものだ。
「ふむ。そこを狙ったのか。つまり、解析した結果、救出は無理だと判断して、解放したという事か。しかも即座に実行とは、中々大した少年――という認識で記憶しておこう」
ジャン・アンリが喋りながら、興味深そうにユーリを見る。
ユーリはジャン・アンリを静かに睨み返す。彼の指摘は的を射ていた。巨大化けカマキリに混ぜられた四人を、魔法で分離して助けられないかと、解析していた。しかし内臓まで巨大化けカマキリと繋がったこの四名は、救助不可能だと悟って、苦しめずにさっさと殺すという選択を実行した。
(相変わらずだね。この子は……)
ユーリの決断力と行動力の早さに、ミヤは舌を巻く一方で、危ぶんでいた。それらは長所とは言い難い。必ずしも良い結果に繋がるとは限らない。
(いつかどこかで――痛い目を見るくらいならいい。致命傷を負ったりしなけりゃいいけどね)
そう案じて、気が気で無いミヤであった。
「お鼠様」
「何だ?」
ジャン・アンリに話しかけられ、お鼠様が応じる。
「君が私をここに呼んだ意味を、最大限に活かすのはどうだろう? この意味はわかるな? 私からすれば予定通りであるが」
ジャン・アンリの問いかけに対し、お鼠様のマウスフェイスが笑みの形になる、
「殺すわけではない。一つになる。私に還れ。魂の横軸を交わらせるだけだ。お鼠様という個は死んでも、君の魂は光となって生き続ける。私が生きている限り」
「わかっているさ。死じゃない。同じ魂なんだからよ。やる事も同じだ」
お鼠様がかがんで、ジャン・アンリの方に手を差し出す。ジャン・アンリがお鼠様の方に歩いていく。
不穏な予感を感じて、ユーリが魔法で攻撃しようとしたが――
「邪魔しては駄目よ」
宝石百足がユーリを制した。
「多分、これが物語のあるべき流れ。この人喰い絵本に求められ、呼ばれたのがあの人なのよ。だから……」
宝石百足が話しながらジャン・アンリを見る。
ジャン・アンリが手を伸ばし、お鼠様の手と触れた瞬間、お鼠様の姿が光り輝き、消滅した。
「おお……お鼠様が消えた……」
「お鼠様がいなくなった。いや、斃された!」
「ははは、お鼠様がくたばったぞ! これでもう子供を差し出すまでもない!」
「もう人さらいなんてして、他所の村に恨まれることもないぞっ」
「子供の血を抜いて殺す作業もしなくて済む―。あれすごく嫌だったのよね~」
「これでまた鼠が狩れるっ。狩りまくれるぞー! ひゃっはーっ!」
「やったやったー!」
お鼠様が消える場面を見て、村人達が歓声をあげる。
「貴方達は……自分さえよければ、他はどうなってもいいっての? 他所の村から子供をさらってきた事もそうだし、鼠達を過剰に狩った事も。そしてお鼠様が現れて悲劇を招いた事を知ってなお、まだ同じ過ちを繰り返すの?」
「ユーリ、こいつらに腹を立ててそんなこと言っても、無駄だし無意味だよ。絵本の攻略にも無関係だ。胸糞悪い奴のことなんてさっさと忘れちまいな」
憤慨して村人達に問いかけるユーリを、ミヤが制する。
その村人達の首が、一斉にはねとばされた。
胸部を失った巨大化けカマキリが動き、六本の鎌を高速で振りかざし、次々と村人達を殺していく。
「お鼠様の望みは叶って、これで絵本はめでたしめでたし――という事にしておこう」
村人達が殺されていく様を見て、ジャン・アンリは淡々と告げる。
ユーリもミヤも宝石百足も騎士達も魔術師も、一切動かずにその光景を見ている。助ける気にはなれなかった。
「師匠……ジャン・アンリの力が劇的に跳ね上がりましたよ。あれは――」
解析したユーリが言う。
「見ての通りさ。お鼠様を吸収したんだ。そして同じ魂であることを認識しあった。それよりも驚くべきことがあるけどね」
ミヤが数歩進み出る。
「魂の横軸だって? お前はそんなことまで知っているのかい。随分とまあ博識だね」
ミヤが皮肉っぽい口調で声をかけると、ジャン・アンリはミヤの方に振り返った。
「大魔法使いミヤに言われると光栄だと返しておこう」
ジャン・アンリは胸に手を当て、ミヤに向かって会釈した。
(やはり嬲り神の言う通り、人喰い絵本に吸い込まれているのは、絵本の中の主要キャラと、同じ魂を持つ者ってことかい。魔術師でしかない、こいつがそこまで知っているとはね。しかも予定通りと言っていた。まさかこいつは、嬲り神か、宝石百足か、図書館亀と接触して、何らかの知識を得て、人喰い絵本の中に、意図的に自分を吸い込ませたってことかい?)
それこそがミヤの口にした、驚くべきことだった。ジャン・アンリという男の底が見えない。人喰い絵本や魂のシステムの秘密を、かなり知っていると伺える。そのうえで、人喰い絵本の住人に訴えて、同一の魂を持つ者と引き合わせたのではないかと、彼の台詞から推測する。
ジャン・アンリがミヤから視線を外し、ユーリの方を見る。
「さっきの君の表情は良かった。非常に素晴らしかった。魂の中の光が見えた。絵に描いてもよいか?」
からかっているのかともとれる質問だが、ジャン・アンリは真面目だった。
「答えて欲しい。絵に描いてもよいか?」
ユーリが黙っていると、ジャン・アンリはなおも尋ねてくる。
「何言ってるんだ……。意味が分からない」
「許可でも不許可でもよいから、答えは欲しい。答えが無いままでは、もやもやしてしまう。許可も無く、勝手に描くのはポリシーに反する。この答えで理解してもらえたか?」
「勝手にすればいいだろっ」
「よし。許可を得た――という事にしておこう」
ユーリが吐き捨てると、ジャン・アンリは納得する。直後――周囲の空間が歪みだす。
「この人は多分、ここで得た力を持って帰るでしょう。イレギュラーとなるわ」
宝石百足がジャン・アンリの方を向いて言った直後、全員が人喰い絵本の外へと出された。
「元に戻った……」
魔術師と共に行方不明扱いになった騎士が呟く。絵本の外に出ると、夕陽の射す街中にいた。
「ジャン・アンリはっ!?」
ゴートが叫び、周囲を見渡すが、ジャン・アンリの姿は無い。
「同時に出されたのではなく、あいつだけ先に出されて、その隙に逃げられたみたいだね」
と、ミヤ。
(異様な男だった。物凄くおぞましかった)
ユーリはジャン・アンリという人物に、激しく生理的な嫌悪感を抱いていた。
***
まんまと逃げおおせたジャン・アンリは、『K&Mアゲイン』の隠れ家の一つに滞在し、絵を描いていた。
ジャン・アンリのいる部屋に、組織の魔術師が訪ねてくる。
「おお……ジャン・アンリ、激しくオーラが出ていますよ」
魔術師が驚く。相変わらず無表情であったが、ジャン・アンリが凄まじい熱をこめて絵画に夢中になっている事は、如実に見て取れた。
「ああ。久しぶりに私の魂の中にある光が、輝きを増している。傑作が描けそうだということにしておく。ところでわざわざ訪ねてくるとは何用かと尋ねてよろしいか?」
魔術師の方を向きもせず、絵を描きながら問うジャン・アンリ。
「棟梁がやっと西の大陸から帰ってくるそうです。手紙と、これが送られてきました。で、これをジャン・アンリに直接手渡すようにと」
「そうか」
手紙と荷包みを受け取るジャン・アンリ。
手紙に目を通し、魔術師を見る。
「自分が帰る前に、これを先に送ってきたという事は、さっさとこれを使えという事だな。そう解釈しておく」
「ええ? 何ですかそれ。ていうか何で俺を見るんですか?」
ジャン・アンリの手の仲の荷包みと、ジャン・アンリの視線を見て、不安になる魔術師。
「君にこれを使ってもいいかと思ってな」
「ええええっ!? やめてくださいよ!」
魔術師の顔が強張り、必死になって拒絶する。
「その反応、実験台にされるとでも思ったのか? 嫌がる必要は無い。一人にしか使えない。一度しか使えないものだ。そしてこれがどういうものかもわかっているぞ。実験などする猶予も必要も無い。理解してもらえたか? しかしそれでも嫌がるなら、無理強いはしない」
ジャン・アンリの言葉を聞いて、魔術師は胸を撫で下ろす。
「それは一体何ですか?」
「同胞達にも伝えておいてくれ。これは――」
***
ミヤの家に宅配物が送られてきた。
差出人の名前にジャン・アンリと書かれていたので、ユーリは驚いて解析魔法をかける。危険物ではなかった。さらには記憶の逆戻しの魔法もかけたが、対策が施されていたようで、これは途中で途切れた。
「その包からすると、絵かねえ?」
ミヤが言う。
ユーリが包を開くと、確かに現れたのは画版――絵だった。ユーリの怒った顔を描いた肖像画が送られて来たのだ。その絵を見て、ユーリは絶句してしまう。
「隋分な趣味じゃないか。しかしまあ……よく描けているのは間違いないね」
呆れと感心が混じった様子のミヤ。
「気持ち悪い……。こんな絵を見せられて――気持ち悪いし、見たくないのに――目が離せませんでした」
思いっきり顔をしかめて、正直に告げるユーリ。
「そうさね。自分の顔の絵なんて――しかも怒りに満ちた顔の絵を、あんな男に描かれて、気持ち悪い話ではあるよ。しかし出来が良すぎて見入ってしまうのもまた確かだ。絵画でも凄い才があるようだね」
ユーリの顔が描かれた絵を見つめたまま、ミヤが言う。
「捨てるかい?」
「捨てたいです。こんな絵。でも……」
「捨てるのも憚られる、か。気持ちはわかるよ。しまっておくかね」
「はい」
返事をしつつ、ユーリは手を合わせて祈っていた。
「何を祈っておる?」
「ジャン・アンリがこれほど素晴らしい絵を描けるなら、悪いことは一切やめて、素晴らしい絵描きとして生きますようにって祈りました」
「ははは、これまた酷い、手前勝手な祈りだね」
「僕もそう思います」
ミヤが笑い声をあげると、ユーリも手を合わせたまま微笑んだ。
(でもユーリ、お前のそんな所がいい所でもあるのさ。悪い所にも繋がりかねない、危うい所だけどね。ポイントはプラマイゼロだよ)
ユーリを見て、声に出さずにそう評価するミヤであった。
六章はこれにて幕であります。




