表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/38

三十六之巻:魔王よ刮目するが良い

「ほう、断るか」


 服部一蔵は暗黒の力を増大させていく。

 奴の周囲から闇が広がり、広大なる謁見の間をじわじわと覆い尽くさんとする。某の周囲のみが闇に揺れる蝋燭のように心細く光が残った。


「せめて交渉の際には殺気を隠すべきでござったな。いや、伊賀の頭領ともあろう方が隠せぬ筈はない。魔王と一つになっている故か」


 魔王が聖女を身内に受け入れはせぬというものであろう。


「ふむ。だが、断ったとてお前と俺の力の差は歴然。四天王如きに苦戦する聖女がこの魔王・服部一蔵に敵うと思うてか?」


「ふん、魔王よ刮目するが良い。シルヴィア」


――はい、おいしそうさん!女神様……御力を!


 某の内でシルヴィアが祈りを捧げる。

 某が身体に乗り移ってより、大半の時間を心の内へと篭り、聖女の力を蓄え続けた彼女の力を見ると良い!


「臨兵闘者皆陣列在前!」

――神よ、我が願いを聞き届けたまえ!


「忍法!口寄せの術!」

――その威光を以って地をお照らし下さい!


「忍法奥義!神降ろし!」

――聖法奥義!女神降臨!


 某の身体が光輝に包まれた。

 背からは四対の光の翼が生え、頭上には白金の冠。右手の剣は先端より光刃を伸ばす。


タン。


 軽く地を踏み鳴らせば闇を払い、謁見の間全体が光を取り戻す。

 一蔵は呟いた。


「その身を女神と化しただと……」


「否」


 某はゆらりと身を動かす。ただそれだけで光が揺れ、形を成す。


「「影分身……。女神では無い。忍法の使える女神よ」」


 舌打ちをした一蔵は高速で印を結ぶ。


「臨兵闘者皆陣列在前!忍法奥義!萬川集海ばんせんしゅうかい!」


 闇が湧き上がってくる。ずるりずるりと一蔵の背後に蠢く闇が無数の川のように顕現する。

 それは負の思念、瘴気、怨念といったもの。世界中よりそれらを集め、川が海に流れ込むように一蔵の身体へ。


 それは人間に耐えられる業ではない。魔王と融合している故の力。一蔵の身が膨れ上がり、その巨大な玉座に見合う巨体と化した。


 一蔵より闇が溢れる。それは某が放つ光と拮抗した。


「手加減はできぬぞ」


「「「「無論」」」」


 魔王・服部一蔵が巨大な拳を振るい、無数の光と化した某が杖を振るった。


 刹那、謁見の間は内より爆発、魔王城は瓦解した。


 一蔵の拳は地を割る。


「忍法!溶岩の海!」


 某の杖が天を裂く。


「忍法!流星の雨!」


 某たちが動くたび、天変地異とよぶに相応しい術がおこる。


 付近に誰もおらぬ魔王城でのこの戦いは、人も、魔も、世界の全ての者から見えていたという。


 三日三晩戦いは続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i521206
― 新着の感想 ―
[一言] そして伝説へ( ˘ω˘ )
[一言] おおう。クライマックスですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ