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黎撃のインフィニティ  作者: いーちゃん
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第9話 part-b

 インド洋沖で<アクトラントクランツ>が第二形態(セカンドフォルテ)による暴走を起こしてから数日。

 砲撃の得意なイアル・マクターレスと、近接戦闘に長けたフィエリアが仲間に加わった。

 中東にてOSSの密売情報を得たレナは、飛行能力のある<アクトラントクランツ>単機で砂漠都市へ向かうことになる。

 そこで出会った傭兵の少女は、名を戦狂という。

「よォ」

 砂埃の中で、金色の眼差しがレナを真っ直ぐに捉えていた。

「あたしに勝てたら、データなんざタダでくれてやるよ」

 世界最強の腕を持つ傭兵と、激闘が始まる。

[part-B]


 人気のない場所で<アクト>を起動させると、レナは指定されたポイントへ向かった。場所は市街地の上空である。

 眼下は多くの見物客で溢れていた――まるでお祭り騒ぎのような状態である。

 滞空状態で待っていたのは、真紅色のAOFだった。旧世代機とは異なる鋭角的なフォルムであるが、かといって<アクト>や<オルウェントクランツ>などの次世代機とは一線を画した構造だ。

 ブラッドレッドの装甲には肉抜き処理が施されていて、軽量化を図っているらしかった。背面には小型のブースターが装備されているが、目立たないためか機体は飛んでいるというよりも「浮いている」ように見える。

 特徴的なのはその武装だ。機体の身の丈ほどもある "槍" を担ぐように従えていて、武器はそれだけ。

『おーおー、逃げずに来たか。しかも相手が最新鋭機<アクトラントクランツ>とは、今日は最ッ高にツイてるぜ』

「下のギャラリーは何とかならなかったの? これじゃあ関係ない人々まで巻き込んでしまうわ」

『アイツらは楽しんで観てんだぜ。それを止める資格はねえ、死んだら自己責任だろ』

 レナは静かに敵の姿を見据えた。

 チート・ウィルスと呼ばれるOSSの拡張データ――それは機体の性能を格段に飛躍させるものだった。無秩序に広まってしまえば、世界各地での戦闘は必ず激化するだろう。そうなれば、もっと多くの犠牲者が出ることになる。

 特にASEEの手に渡ったら――と考えただけで、レナはぞっとする思いを味わった。

 ギリ、と奥歯を噛む。

「……何としてもデータは渡して貰うわ」

『やれるモンならやってみな』

 戦闘モードをアクティブへ。レナは操縦棹を握ると、強くフットペダルへ蹴りをいれた。

 最初に敵へ突っ込んだのは<アクトラントクランツ>だ。青白いサーベルを横へ一閃。

(一撃当てれば勝てる!)

 肉抜きだらけの装甲だ――機動性は充分であっても、その耐久力はカスみたいなものである。

 横に薙いだサーベルを槍が受ける。対ビーム用にコーティングされた部分が盛大な火花を散らせ、まるで悲鳴にも似た金属音を発した。

『甘ェんだよォ!』

「!?」

 身を翻して強烈な蹴りを放つ。

 レナは<アクト>を緊急後退させてライフルをグリップし、敵を照準して二射。敵は一射目を軽々と避け、次の射撃を槍の柄の部分ではじいた。

「なっ……ビームを受け止めた!?」

『そんなモンが効くかっての!』

 肉迫。

 気づいたときには懐へと潜り込まれている。機体のコンパクトさと機動性を活かした究極の接近戦仕様――それが、真紅の敵機<ヴェサリウス>の特徴だった。

 レナは慌ててサーベルを振るうが、敵の姿はすでに別の位置にあった。何もない空間を斬って、彼女は憎々しげに舌を打つ。

 遠距離から槍が伸びる。

 ライフルを応射しながら、レナは敵の姿を追う。目まぐるしいほどの相手のスピードは、しかし瞬きすれば見失ってしまう。

 無線から声が入った。キョウノミヤである。

『データ照合したわ。敵機の名前は<ヴェサリウス>、操縦主は<戦狂>のコードネームで傭兵活動を続けてる』

「強いんですかコイツは!?」

『腕は確実よ。非登録の傭兵だけど世界でもナンバー1、2を争う技量。手を抜くと危険よ』

 やれやれ、とレナは思った。

 迫りつつある槍の一撃を回避し、レナは機体を翻して上空へ。すると<ヴェサリウス>も深紅の機体を追った。

 自分の周りに、そんなに何人も世界最強が居てたまるもんか。ただでさえ<オルウェントクランツ>だけで手一杯だというのに、こんなに多くの「最強」を相手していたら命が幾つあっても足りないだろう。

 レナは雲の切れ間から<ヴェサリウス>を照準、トリガーを引いた。不意を突かれた敵機は危ういところでビームの矢を回避したが、その一撃が脚部をかすめた瞬間を、レナは見逃さなかった。

(……勝てる!)

 胸の内で、怒りにも似た感情がフツフツと沸き上がってくる。

 こんな場所で負けていたら、きっと誰も守れないのだから。

 レナはライフルを連射しながら敵機へ迫り、逆手に構えたサーベルを横薙ぎに振るう――しかし<ヴェサリウス>は槍で攻撃を受け止めた。レナは立て続けに至近距離で2射、3射を仕掛けるが、敵機は防御姿勢を崩さない。

 だが、それでいい。

 レナは笑む。

 余った左手で2本目のサーベルを抜き、

(これで――!)

 敵機に光刃を突き立てようとした寸前、コクピットに響いたのは警告音(アラート)だ。

 空から放たれたビームの矢は、しっかりと<アクトラントクランツ>を捉えていた。危険を察知したレナは緊急用のスラスターを使って右方向へ空転し、わずかな隙を得た<ヴェサリウス>はここぞとばかりに後退する。

 最強の傭兵・戦狂と戦うことになったレナ。

(一撃当てれば勝てる!)

 肉薄の装甲を持つAOFと対峙し、そう直感したレナは猛攻を仕掛けるが、真紅の敵機<ヴェサリウス>はすべての攻撃を阻む。

(これで――!)

 敵機に光刃を突き立てようとした寸前、コクピットに響いたのは警告音(アラート)だ。

 空から放たれたビームの矢は、しっかりと<アクトラントクランツ>を捉えていた。危険を察知したレナは緊急用のスラスターを使って右方向へ空転し、わずかな隙を得た<ヴェサリウス>はここぞとばかりに後退する。

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