092-買い物タイム!
翌日。
宿を出た俺たちはオリオンへと戻り、出航準備を整えていた。
既にエンジンを付けているので、後は出港申請だけだ。
「こちら輸送艦オリオン、出港許可と出口への誘導を申請する....っと」
いい加減、音声での通信機器も買わないとな。
正確には、ローカル回線でつなげるものはあるんだが、こう人が多いと拾ってくれるかもわからない。
基本的にはチャット形式だから、応答が遅い。
『Hotel-Ascied06:出港許可を出します、82番出口より出港してください』
『Lily-Orion:了解』
俺はオリオンの航行コンピューターに出航を指示し、オートパイロットで船は82番出口へと向かっていく。
この精緻な操船は真似できそうにない。
ゆったりと格納庫の下部へと降りていくオリオンは、時折小型船が抜けていくのを感知して止まる。
民間船だけではなく戦艦用のスペースまであるのが、客層の広さを実感させるな。
傭兵は戦艦とか乗ってるらしい。
居住性悪そうだ.....
「アル、先に任務進めておいて」
「うん」
アルは今日もゲームをプレイしている。
一応俺は操艦に問題ないか確認する必要があるので、目を凝らして監視している。
オリオンは格納庫から外への回廊へと入り、非常灯の光に時折照らされながら飛んでいた。
宙域に出ると、航行コンピューターがワープの可否を問いかけてきた。
ここはもう出航すればすぐワープできるので、俺はワープの許可を受理する。
『ワープに入ります』
そんなシステムメッセージが表示されると同時に、オリオンが回頭を始める。
今回はそこまで距離は離れていないので、せいぜい十分程のワープとなる。
俺は深く椅子にもたれ掛かり、重心を椅子に預ける。
「さて....」
俺の呟きはアルには聞こえなかったようで、返事は来ない。
まず向かうのは、アンドロイドの専門店になる。
頭の中で、どんなアンドロイドを購入するかは決めてある。
だが、高い買い物だ。
これでいいのだろうか......?
不安だ。
「よし、入った。......私もゲームつけるね」
「うん、広場で待ってる!」
「おっけー」
俺は携帯端末を起動する。
このゲームの名前は「エグニカ・ドールクライス」といい、まあ要はMMORPGだ。
この世界ではゲーム自体の多様化により、ジャンルの概念が失われている。
ゲームソフト自体を探すのが面倒なんだよな。
とはいえファンタジーの概念はあるようで嬉しい。
いつの時代も人間は剣を振るう事に憧れがあるらしい。
俺じゃ無理だけどな。
「もうそろそろ着くよ」
娯楽があれば、時間は速く過ぎ去るものだ。
十分程度など簡単に消化して、オリオンのワープはもうすぐ終わるところまで来た。
「アル、来て! スゴイよ」
「ホントだ...!」
ワープを抜けると、そこはステーションから少し離れた場所だった。
直接ステーションにワープすると、他の船とぶつかる可能性があるからだ。
だが、そこも既に船の群の中だった。
『輸送艦オリオンに告ぐ、待合い列内への割り込みは禁止されています、最後尾へ戻ってください』
「おっと」
怒られた。
俺はオリオンを、待合い列の後尾へと移動させるのだった。
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