081-カマロイア・シップヤード見学2
次に俺たちが向かったのは、ステーションの下部外側に位置する中型艦船建造区画であった。
流石に小型艦専用のスペース程の大きさはない。
『こんなにスペースが狭くてもいいんですか?』
『巡洋艦より上の艦船は基本的に受注生産ですので、普段からフルで稼働させることはないんです。ウチの主力は小型艦の薄利多売なので!』
『ソレ、言っちゃっていいんですか?』
『構いませんよ、どこもそうですから......』
中型艦用の建造区画ということで、空いている場所もあるが、巡洋艦が並んでいる。
どこかで見たことあるものばかりだが......
『この艦はここで設計を?』
『いえ、設計図をライセンス付きでシップメーカーが売却しているんですよ。それに、お客様の持ち込みで設計図を使う事もありますね』
『なるほど』
『あっ、これ! 高級ヨット! お父さんが乗ってたやつ!!』
アルは、まだ未塗装の巡洋艦に近づいていく。
あれもよく見る船だな。
多分だが、金持ちのクルージング船なんだろうな。
『R-451型、アサトムース高級ヨットですね。お値段は一隻2500万MSC程でしょうか』
『意外と安いんですね』
採掘艦が1500万MSCだから、それに毛が生えた程度だ。
『ええ、高級ヨットの中では安い部類ですので。ものによっては一隻十億を越えますからね』
この辺は、快適な性能の代価という事なのだろうな。
そう考えれば、オリオンは輸送艦としては居住性能と安定性が高い。
この世界なら、高級艦の部類に入るかもしれない。
『あっちの艦はどうして止まってるんです?』
『ああ....』
俺は気になったところを指し示して質問する。
建造中なのに、作業用ドローンもマニピュレータも動いていない。
『ダズ・クヴァタ星系群からの鉱石輸入に頼っていたのですが、供給が止まってしまって....一度建造を止めて、新たな輸入先を探しているのですよ』
『..........なるほど』
不可抗力でもあるとはいえ、遠因は俺たちにある。
若干罪悪感を感じるものがあるが、ファーストペンギンに俺たちが選ばれたというだけの話だ。
欲深さの代償を支払ったが、それによって波及した出来事にまで責任は取れない。
『まあ、納期は伸ばしてもらっていますから。お客様が不安に思われることではありませんよ』
『え、ええ.....』
遅かれ早かれ起こっていたことだ。
だから俺は、前を向くしかない。
『アル、満足?』
『うん....次は戦艦だよね!!』
『ええ、大型艦建造区画――――つまり外側になります!』
次の目的地は、ステーションの外側。
来るときに見た、桟橋エリアだ。
『ここから先は、移動用の小型艇を使いますので、こちらへどうぞ』
『はい』
俺たちは再びエアロックを通過して、ステーションの外。
空気のない世界へと踏み出した。
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