078-ウルブレン・ワープドライブ工場見学2
『まずはこちらになります』
リフトに乗って、乗り降り口から出た俺たちが見たのは、何かの金属がベルトに乗って流れていく光景だった。
『あれらは真空崩壊に耐えうる合金材フレームです。マサドライトを非常に微量ですが含有しており、ワープドライブが高価である理由の一つとなっています』
真空崩壊に耐える!?
とんでもない単語が飛び出してきたが、まあそういう事もあるのだろう。
『フレームをもとに、ワープドライブの基盤材を製造する工程になります。もっとも、多くのお客様は何が起きているか分からないといったご様子ですが.....』
「確かに、とんでもなく早いな」
効率を求めているという訳でもないのに、速い。
そうする理由がありそうだと感じた。
『基盤材の一部に、半減期がとても速いビーソニウムを使用しているため、1秒以内の密封が求められるのです』
「成程」
「みえない....!」
アルはなんとか工程を見ようとしているようだ。
だが、無理だな。
飛んでいる蚊の姿まで見えるかとか、そういう類の話だ。
リフトは次に進む。
止まったところは、先ほどのフレーム材とは違うものが組み立てられている場所だった。
薄暗く、非常灯と時折走るスパーク以外はなにも見えない。
『時空間流動性真球を維持・固定するための装置の中央部にあたる「ワープコア」を組み立てています。スパークは、使用されているイサバイト化合物が空気に接触して起こるものであり、これが見えない事があれば生産ラインを停止してチェックを行う事になっています』
暗いのにも理由があるんだな。
俺は納得する。
「あれが見えないと、工場止まっちゃうんだって」
「へぇええ....じゃあ、大事な場所なんだね」
「うん、凄くね」
工場が止まるだけで、とんでもない損失だ。
きっとここに配置されたアンドロイドは、人格がないタイプかもしれないな。
常に血眼になって見つめてないといけないからな。
『次は、別の部品の製造ラインになります。こちらはあまり特別ではありませんが.....』
リフトが動く。
その先は、今までとは比べ物にならないほどのベルトコンベアがあった。
縦横無尽に駆け巡り、そのどれもが別々のものを載せているように見えた。
『ワープドライブのサブ・プロセッサの製造区画です。ワープトンネルの形成に合わせてバブルの規模を変化させたり、重力井戸や質量物に対して変動値の調整を行うなどの機能を持ち、重要な部品です』
勿論、ワープドライブといっても超技術の塊ばかりという訳ではない。
こういう、”ありふれた機械”も付いているのだろう。
『一ミリの誤差もあってはなりませんので、一本の製造ラインを部屋として、五つに分けています。そのため、一介の発注でここの製造が一番早く終わるのです』
「そうだろうね.....この規模のものを一日中動かしていたら、余剰分が出てしまうから」
『はい。余剰生産分は稀に出る事があるので、他社に融通することもございますよ』
「へえ」
それを購入して、他所に持っていけばそこそこ高く売れそうだな、と俺は思った。
というか、海賊とかなら高く買ってくれるだろう。
海賊と取引するのは犯罪なのでやらないが。
『最後に、ワープに必要なエネルギーを充填する装置の製造ラインになります』
曰く、ワープする際にはキャパシターを一定量一気に消費し、そのエネルギーを利用してバブルを生成しているそうだ。
それに使用する三連グラシウム・ア粒子伝導管の製造ラインであった。
この部屋は漏れた高濃度の放射能で汚染されているらしく、入るときと出る時でリフトが除染される工程があった。
さあ、最後は――――
『組み立てと、最終チェックになります』
リフトは工場を殆ど一周し、俺たちを工場見学の最後まで導くのであった。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




