074-アイネマン観光計画
というわけで、引き続き民間商業ステーションにて。
俺はアルと一緒に、観光ガイドのもとを訪れていた。
順番待ちも無く、ガイドアンドロイドのいる部屋に通された俺たちは、席を勧められ座る。
『さて、誠に勝手ながらお客様のデータを事前に収集させていただきました』
「ええ、アンケートに答えた以上の事を....という事ですね?」
『はい。予算などを鑑み、中流階級向けのアイネマンの観光プランをご案内させていただきます』
今回、俺よりもアルのしたい、見たい事を重視する。
俺はアルの方を見た。
「何か見たいものはある?」
「アイネマンって、工場がいっぱいあるんだよね? 作ってる所が見たい!」
「なるほど.......ガイドさん、そういうものはありますか?」
『ええ、工場見学はいくつかご案内しております』
ガイドアンドロイドが端末を操作すると、俺たちの前にホログラムディスプレイが表示される。
そこには、アイネマンの星系図が表示されている。
『例えば、アイネマンⅤにある農業コロニー。こちらでは、青果がドリンクや食材に加工される工場を見学可能です。また、果物狩り――――収穫体験なども行っております』
「どう?」
「うーん.....食べ物はあんまり.....」
「じゃあ、機械類って事?」
「うん!」
まあ、これは選択肢の一つという事だろう。
元々クラリウム星系群は最先端技術が集まる地、そしてそういったものは、バイオテクノロジーよりもより即物的な技術として見たいというのが、アルの希望なんだろうな。
「アル、これなんていいと思わない?」
「ワープドライブ....工場?」
「なかなか見れるものじゃないと思うんだ」
「行きたい!」
要するに、この世界標準搭載のワープドライブ工場だ。
オリオンのものとは違うだろうが、俺も興味がある。
何より、様々な艦船に使用されるワープドライブが量産されている光景なんて、地球人からしたら是非見ないと損だろう。
『でしたら、こちらもいかがでしょう? アイネマンⅧに位置する造船所ステーションにおける、造船工程の見学です』
「見たい! ねえ、いいよね?」
「うんうん、いいよ」
やはり男の子なのだなあ、と俺は思う。
メカが嫌いな男の子などこの世にいない。
.....百歩譲って居たとして、メカと同じくらい好きなものがあるかだ。
『そちらのお客様は、ご希望は何かございますか?』
「私? そうだなあ......ここの中央惑星は確か、惑星自体が工場なんでしたね?」
『ええ、古代語でエキュメノポリスと呼ばれる、惑星全体を人工物とする特殊な加工を施しております。』
「そちらを見学したいなと考えています、可能ですか?」
『はい。ただし、シャトルによる遊覧船によるものなので、ルートの指定などは出来ませんが、よろしいでしょうか?』
「構いません」
とりあえずは観光プランが決まった。
ガイドアンドロイドは、一度のアクティビティに掛かる時間などを考え、この三つが一日に詰め込める限度だと言った。
異論も変更も無く、観光プランは確定した。
俺はただ同然の相談料を支払い、アルと共に観光ガイドを後にした。
「明日からが楽しみだね」
「うん!」
とりあえずはオリオンに戻る事にして、俺はアルの手を握りステーションの通路を歩くのであった。
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