073-繁栄と喧騒のアイネマン
『貨物搬入が開始されました。七番デッキの作業員は注意して作業を行ってください、繰り返します、貨物搬入が開始されました。七番デッキの作業員は注意して作業を行ってください』
「ふう~」
俺はため息を吐く。
輸送依頼で持ってきたカーゴを、苦労して車両に載せ、搬入を終わらせた。
いつもの作業だ。
だが、アイネマンⅣ-民間商業ステーションは活発なステーションだ。
アナウンスがうるさい。
『452番搭乗口のお客様にご案内です。現在給油関連のトラブルが発生しており、出発が15分遅れるとの事です。5分後にシャトルへの搭乗を開始いたしますのでお待ちください』
「買いたいものが増えるなあ」
ヘッドフォンが欲しくなるくらいには、アナウンスの密度が凄いのだ。
それだけじゃないが。
轟音と共に駆け抜けた船が、俺の長い髪を揺らす。
落ち着かないほどに、船の出入りが激しい。
俺が頑張って貨物を運び出している間に、両隣の艦が出発していた。
『輸送艦デルサムに警告します、そちらは観光シャトルの発進口です。直ちに退去するか発進してください』
またアナウンスが聞こえる。
そういうのは通信でやれよ.....
『3551通路を作業用ドローンが通過します。作業員は退避してください』
「うるさ....」
気だるげに呟いて、俺はオリオンの内部へと戻る。
ハッチを閉じて、それに身を預ける。
「人が多いのは苦手だな」
この身体を気にする人間は少なくない。
異種族なら、むしろ付き合いやすいが。
まだ会った事はないが、例えばクローリア星人。
タコみたいな頭の異星人らしいが、女性の魅力とは知識量と知的さらしい。
胸や尻に惹かれるわけではない。
「あるいはダラト星人となら、友人にもなれるかもな」
ダラト星人とは、裏社会でよく見られる種族らしい。
大男、大女ばっかりで、厳しい母星の環境で生きられるのは体積が大きい者ばかり。
自然に、美的感覚も体が大きければ大きい程惹かれるというものだ。
「アルくらいだからな、全く」
元男として、真の意味で女性に理解を示すことになるとは思わなかった。
自分が無力で弱いというのに、自分は男にとって価値のある存在であり、簡単に熟した実を捥いで口内に放り込まれ、貪られると考えれば怖くもなる。
「まあ、その為の買い物だが」
いい加減、運転資金とは独立した文字通り俺の個人財産である約2億MSCを消費するときだろう。
金を稼ぐ人間は、その金を落として経済を回す義務がある。
タンス預金はいけない事だからな、知らんが。
「となると、今後は...」
とりあえずはアイネマンで観光をして、その後クラリウム星系群の中央星系であるインナーリウムへ向かい、買い物をする。
その流れでいこう。
俺は携帯端末を起動し、納品したものが受理され報酬が振り込まれるのを見た。
その上で、アイネマンの観光について調べるのだった。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




