070-脱出
ようやく、カイオーン星系へと俺たちは出た。
待っていた列全員が飛び込んだせいで、あちこちで衝突事故が起きて、警備隊が出動する事態になってはいたが.....
「何とか抜けたね」
「うん......」
ゲートを抜けてからは、暫く待機の指示が出ている。
整理券番号に従い、受け入れ先が割り当てられるという。
『物資補給が必要な艦は申し出てください、補給船が向かいます』
との事だったので、ゲートを抜けてから数日は大丈夫だろう。
こっちには軍からせしめたレーションが大量にあるので、わざわざ他人の物資の取り分を減らすことは無いだろう。
「プラド、こちら艦橋、ゲートを抜けてカイオーンに出た。あと一日以内に引き渡しが始まると思う」
『了解、何ならもうハッチを開けてしまってもいい。俺らがこれ以上ここに留まるのは....忍びない』
「分かった」
中型艦ドックのハッチを開く。
数分後、採掘艦がゆっくりと飛び出し、オリオンの近くで止まった。
『いやぁ~~~数日の缶詰は大変だったな、リオは残念だったが気にすんな!』
『叩くな、イルゼ!』
通信はそれだけ響くと、消えた。
プラドは苦労人だが、彼には友にも等しい仲間がいる。
だからこそ.....
「アル、リオみたいにはならないでね」
「うん」
「リオは、何も見てなかった」
リオは、俺の前に立ったあの時、何も見ていなかった。
現実も、プラドの心労も。
....俺自身ですら。
俺嫌いもあそこまで行くと狂気としか思えないが、何が彼を駆り立てたのかは俺には分からない。
採掘フリゲートを失ったことだけではないだろうな。
ともかく、あんなはた迷惑な思考を、アルには持ってほしくない。
「アルは全部見て、自分の考えだけじゃなくて誰かに相談して物事を決めるんだよ――――まあ、全部誰かに聞けって訳じゃなくて、自分の考えが大事な時もあるけど」
「???」
ちょっと難解だったか。
俺は頭を掻く。
「まあ....アルが大人になったら、また教えてあげるよ」
「うん!」
アルが大人になるまで、俺が生きてればの話だが。
このペースだとマジで死ぬぞ。
今後はもっと生き汚くならなければ、”いなくならない”なんて夢のまた夢だな。
もっと慎ましく生きないと。
「燃料がヤバいかも、給油しておこ」
「お腹減ったなあ....」
「いいよ、食堂にレーション積んであるから。おかわりはこの間のケーキでね」
「はーい」
レーションを食べて、足りなければこの間のケーキの残り。
あれは一日に何度も食べる類の食事じゃないからな。
エレベーターでアルが降りていくのを確認してから、俺はアルがやっていた宿題を見た。
「戦闘中も勉強してたのか.....」
今日の分がほとんど終わっていた。
やはりアルって、肝が太いというか、何と言うか....
「まあ、いいか」
続報を待たないと。
それが終わったら、とっととクラリウム星系群に向かう。
そこで、いろいろと買い揃えてしまおう。
今回の仕事や事件で、俺は色々と学んだ。
その上で、足りないものは金を惜しまず補充するべきだと感じたのだ。
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