059-救援来たる
戦闘はコンピューターに任せて、まずは状況を俯瞰しようと思う。
オーバービューに敵の残骸らしきものは映らなかったことから、採掘艦隊の持つ火力では宇宙怪獣に対して有効打を与えられなかったという事だ。
『相対速度、相対距離の算出を完了、全砲塔は集中射撃に切り替え』
戦闘コンピューターも、敵の正体が分からない以上分散して撃っても仕方ないと判断したようだ。
ただ、セントリードローンは出していない。
敵の能力を評価できていないからだろう。
「うわっ、撃ってきた!?」
こっちの砲身回転に反応したようにも思える。
幸い、シールドで防がれる。
敵の小型は、こっちに真っすぐ突っ込んできては八の字を描きながら艦の周囲を旋回しながら撃つタイプと、距離を取って撃ち込んでくるタイプの二種類がいるように見える。
そもそも形状自体違う。
『二機撃破、目標変更』
どうも、攻撃は効くようだ。
ただ、ミサイルは直撃しなければ効果はない。
戦術コンピューターの評価によれば、表面で爆発力で生まれた衝撃波が急速に勢力を失っているともされている。
「わああっ!?」
「大丈夫、シールドがっ!!」
その時、その内の一隻がブリッジに張り付こうとしてくる。
すぐにシールドに阻まれて、吹き飛ばされるが。
「気持ち悪.....うっぷ」
見た目が最悪すぎる。
文字通り、「虫」だ。
発射されたミサイルが全弾そいつに命中して、粉々になった。
「今回は流石に相手が悪いか......」
もともとオリオンは、多対一で勝てるような船じゃない。
特に、小型の相手は苦手だ。
さっきから、五匹しか落とせていない。
「これだけの数が、個別に意識を持ってるわけじゃないとは思うんだけど....指揮官みたいなのはどこだろう?」
口に出してみる。
アルからの返事はないけれど、直後。
遠くにいた中型が、こっちに向けて撃ってきた。
.....そうだ。
中型がたった2、3匹しかいないのはどうしてだ?
小型の数に反して少なすぎる。
俺が結論を出すのと、戦闘コンピューターが遠くにいる中型の存在に気付くのは同時だった。
『中型を優先ターゲットに指定』
『微速回頭、全火力を有効打とする射線を確保』
ログが更新されていく。
俺が出来ないような判断をバンバン出して、即断即決でやっていく戦闘コンピューターは、もう様を付けて呼んでもいいくらいだ。
『リリーさん、大丈夫なのか!?』
「大丈夫です、それよりそっちは.....ワープで逃げられない理由があるのですか?」
『リオを収容したい、このまま置いて行けるか!』
「成程――――敵の注意をこっちに引き付けます、今のうちに救助を!」
『助かる!』
セントリードローンを射出するように指示し、中型をこっちに引き付ける。
中型は中型採掘艦のうち一隻を狙って撃っていたが、セントリードローンによる射撃を喰らってこっちを向いた。
「直撃したのに、なんで!?」
「当たる前に曲がったよ! シールドじゃない?」
「シールドなわけ....いや、有り得なくはないか.....」
確かに、シールドよりも低出力のビームが直撃したときの挙動と似てる。
そんな生物がこの世に居ていいのか....?
「とにかく注意はこっちに向いた、このまま....」
俺が次の言葉を紡ごうとしたとき。
『――――――――ぜ?』
『――――は....――――か』
どこかで、声が聞こえた。
通信かと思った俺が、慌てて周囲を見渡した時。
「見て! 星系軍が来たよ!」
「本当だ、通信を拾っちゃったかな」
「え?」
「ほら、声がしたでしょ?」
「いや、何も聞こえてなかったけど......」
あれ? 変だな....
ともかく、救援は来た。
これで、この場は何とか収める事が出来た....と信じたいな。
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