047-新天地(星系内)へ
三日後。
俺たちは、ダズ・リベラ第五惑星軌道上を離れ、第三惑星軌道上のステーションに向けて移動していた。
何故かというと、まあ輸送依頼を受けたからだ。
鉱石の輸送依頼を受け、鉱石用のカーゴスペースにインゴットを満載している。
『ワープ終了まで残り二分』
「アル、今日はどうしたの?」
「なんでもない」
アルは今日、ずっとブリッジに居て俺が何をしているかを後ろから見ている。
いつもの事だが、見ている時間が長すぎる気もするな。
普通に動画を見ながら、前世で言うスプレッドシートに商品の項目を入れ、税率などを自動で計算できるようにしている。
もっと便利なツールがあるんだろうが、それが見つかるまではこれでいい。
「つまんないと思うけどな」
「でも、リリーさんは楽しそうだし」
「おっと」
楽しそうにしていたか。
俺は内心、失敗したと思った。
「まあ、これ自体はそんなに面白いものでもないよ。ただ...商材を限られたカーゴスペースにどれだけ詰めて、それをどれだけ元値から高く売れるか、もしくは全て売り捌けるか、考えること自体が楽しいんだ」
「...?」
「ごめん、ちょっと難しかったかな」
真面目に働くよりこっちの方が楽しいと思える俺は、もしかすると望んでこの世界に来たのかもしれないな。
死んだ後に何があったかは正直よく覚えていない。
気が付いたらここに居た。
だから...
『ワープ終了まで残り三十秒』
「そろそろ着くよ」
「うんっ」
趣味がない俺は、移動中もする事と言ったらそれくらいしかない。
アルにも何か用意してやりたいな。
「......アル、やる事ないの?」
「ち、違うもん」
「前はどうしてたの?」
少し気になったので聞いてみる事にした。
その結果、アルの趣味が俺のイメージとは大きく違う事が分かった。
俺の中の子供の趣味と言えば、昆虫採集にサッカーなどのスポーツ、アニメやヒーローものの特撮なのだが、アルの趣味は読書(絵本から挿絵多めの高学年児童書)が中心であり、辛うじて屋内遊戯――――ちょっといいゲームバーなどに置いてあるようなものが好みであるようだった。
総じて俺の予想とは異なり、俺は今までアルに不自由させていたことになる。
その上で義務ばかり強要して、情けない限りだ。
「アル、今度携帯端末買ってあげるから、遊ぶときはそれでゲームさせてあげるね」
「えっ、やったぁ!」
そういえばと思い至った事を口にする。
アルは携帯端末を持っていない。
正確には所持しているが、アル専用の端末を持っていいのは「アルベルト・フィオーネ」本人だけである。
アルがアルのままで居続ける限り、彼はアルベルトのために用意された全てを手にする事は許されていない....というよりは、手にすれば本人にとっても幸せではないという事だろうな。
「着いたらご飯にしよう」
「今日のご飯なに?」
「ふふふ....秘密」
今はただ、俺はアルとなんとか付き合っていこうと思う。
決断を迫るのは、俺が死んだときか彼が成長した時でいい。
そんな事を思いながら、ワープが開けた先で航行コンピュータに指示を入力するのだった。
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