031-頼もしき精鋭たち
輸送艦オリオンはジオランド星系へのゲートを通過し、ジオランド星系の第一惑星――――ジオランドプライムに向けてワープ準備に入っていた。
だが、そうはさせじとゲートから現れた艦隊が、オリオンにワープ妨害を仕掛ける。
それを指揮するのは、アリコンであった。
「何としても沈めろ! ここで殺せばいい!」
彼は半狂乱になって叫ぶ。
どちらにせよここで始末できなければ自分も終わりであるからだ。
対象を殺しさえすれば、自分は暫く刑務所に入るだけで済む。
デュールは出世し、自分を牢屋から出してくれると。
巡洋艦で構成された艦隊は、シールドを展開するオリオンに対して集中砲火を浴びせかける。
「あいつらは本気だ.......」
ブリッジで、リリーは呟く。
星系軍でも対処しきれるか分からない戦力を相手に、ミサイルではなくレーザータレットだけで応戦していた。
『敵巡洋艦四隻がシールドに接触』
『巡洋艦二隻を撃沈』
『巡洋艦二隻を撃沈』
強引にシールドを突破しようとする艦艇が、オリオンのシールドに接触する。
だがすぐに、オリオンによる近接砲撃で撃沈させられる。
「このままだと.......」
『付近に重力変動を検知、ワープアウト....総数測定中』
その時。
巡洋艦隊の後方の至近距離に、艦隊が出現する。
王国騎士団のタグが付いた、エリート艦の艦隊である。
『不明勢力の艦隊を確認』
「討て。――――一切の情けはかけるな!」
王国騎士団が現れてから、アリコン達の戦局は一気に不利なものとなった。
数が一対多だったのに対し、多対多になったのだから。
『駄目です、突破されます!』
「沈めろおおおっ!!! 沈めるんだぁぁぁあああ! あの輸送艦を! 何故沈められないのだぁッ!! たかが輸送艦一隻であろうがァ!!!」
シールドにより、七十隻を超える巡洋艦からの砲撃を耐えるオリオン。
だが、王国騎士団に続いて星系軍も到着し、巡洋艦隊はますます窮地に追い込まれる。
『不明艦隊に告ぐ! 現宙域より直ちに離脱せよ! 追撃はしない、直ちに離脱せよ!! 繰り返す、追撃はしない!』
「撃ち落とせ!!! あの輸送艦を沈めるまでは、逃げても必ず追い詰めて殺すぞおお!!」
オリオンのブリッジでは、リリーがジュディと会話していた。
『どうやら救援は間に合ったようですね?』
「はい、お陰様で」
『.........申し訳ございません、フレデリカ様も、表立って動くわけにはいかないのですよ』
「大丈夫です、どうにか生き延びれそうです」
あくまで王国騎士団は、たまたまジオランド星系に駐留中で、襲われていた輸送艦を救出しただけである。
そういうポーズだと、リリーは受け取った。
「ただ、妨害を受けていて離脱は出来ません」
『......ええ、大丈夫でしょう。遅れを取る弱者たちではありませんから』
恒星間通信で、若干のラグが生じている。
ただ、そこまでの距離ではないのでまだ話せる範囲内だ。
『TRINITY.だ! 全員現行犯で逮捕する!』
そして。
星系軍と王国騎士団に加えて、警察組織のTRINITY.の艦隊が現れた。
『もう駄目だ、全艦離脱!』
「いくらでも金を積む! どうした、怖いのか! このクソ野郎どもがああ!」
アリコンは必死で叫ぶが、TRINITY.の脅威はならず者共の間でも有名である。
下手な艦隊ではないのだ。
三点収束式粒子加速レーザー砲を装備したTRINITY.の艦は、驚異的な打撃力を持つ。
残存した巡洋艦隊は、脱兎のごとく戦線を離れていく。
残ったのはアリコンの偵察艦だけである。
「くそぉ、必ず奴らに.....!」
アリコンの偵察艦は離脱を試みるが、ワープ中にTRINITY.から発射されたミサイルによって捕らわれる。
そして、エンジンを破壊されたのちに、数隻のTRINITY.艦に曳航されていった。
『大丈夫ですか?』
「はい」
『要人を乗せていると伺っている、我々はこのまま随行します!』
星系軍、TRINITY.、王国騎士団の艦隊が一つに合流し、オリオンを中心として連動ワープを開始。
ジオランドプライムに向けて一斉ワープを開始するのであった。
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