閑話 新たなる不穏の気配
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
今週はリアで色々ありましてちょっと短いです、すいません。
side 奴隷商人
あれはエルフだった……せっかくあと一歩で捕獲出来るという所まで追いつめたのに、馬鹿な魔法使い達がエルフの魔法に対抗して5人がかりで爆炎魔法なんぞを使うから死体が黒焦げになり、ちゃんと確認できなかったが確かにエルフだった。
エルフや人魚、獣人の隠れ里があるという話は、神殿の大神官が麗しの君から聞いているとの確認はとれていたから、付き合いのあった王族や貴族をたきつけて捜索隊を出すことに成功したのに、あの病が蔓延したせいで……
捜索隊の出資者のほとんどは死んだが、魔力が多く見目麗しいエルフの奴隷は他の王侯貴族にとっても喉から手が出るほど欲しいはずだ。
一人でもエルフを生け捕れば儂は金も地位も思うがまま、ぐふふふふ。
そういえば、あのエルフを発見したウエストダンジョン付近には、昔からエルフを見たという話が多かったな、あの付近の森に罠を仕掛けてみるか……
side ?
「母上、父上はまだ帰らないのですか?ダンジョンに入る前に食料を探しに行かれてからもう3日も、父上はご無事なのでしょうか?」
「大丈夫よ、もうすぐお戻りになるわ……きっと、もうすぐ」
不安そうに私を見上げた我が子にはそう言ったものの、あの人は多分もう戻らない……
エルフの隠れ里に行くには、人間や魔物が多くいるダンジョン内を10日は進まなければならない、その為の食料を探しに行ったあの人から、
「くそっ、人間に見つかってしまった……お前達は森の奥に逃げろ!!」
と通信魔法がきた時にある程度の覚悟はしていた、それに昨日の大規模爆炎魔法が使われた気配、多分あの人はもう生きていない。
昔、ダンジョン内の閉鎖的な隠れ里の生活に耐えきれず、若い20人程のエルフが里を飛び出しはぐれエルフになった。
人間達から隠れなくとも、エルフの魔法は人間より優れているのだから簡単に撃退できると過信していた若者達は、麗しの君から神官に与えられたエルフを見つけ出すことができる神器と、人間達の数の暴力に適うはずもなく深い森の中を転々と逃げ回る生活を余儀なくされた。
そんな逃亡生活の中でも、若者達の中には結婚し子供が生まれ新しい家族を作る者も現れた。
しかし定住することが出来ない為に冬になれば食料は不足し餓死する者、ケガや病気になってもまともに治療も出来ずそのまま命を落とす者、仲間を逃がす為に囮となり人間に捕まって奴隷となった者と、一人減り二人減りとうとうはぐれエルフは私と夫と娘の3人だけになってしまった。
このまま逃亡生活を続けても死を待つばかりだと、エルフの隠れ里に帰る為にやっとここまで来たのに……
大規模爆炎魔法が使われた日から、何十人もの軍人や冒険者がウエストダンジョンの付近でエルフの捜索を始めた、ここまでは私達もすぐに見つかってしまうと、その場から逃げたものの……
秋になれば、普段より多くの人間がキノコや木の実を求めて森の奥深くまでやって来る、例え秋の間逃げきれたとして私と娘の二人で冬を乗り越えるのは無理だろう。
夏の間はダンジョン内に人間も少ないと聞いたことがある、せめて娘だけでもエルフの里に……




