第28話 友達になってあげる!
「マチルダ、聞いてくれ。お前は家族すべてを失った。わかるぞ、俺にも家族なんていないからな」
「………………」
「人生に必要なもの、つまり家族を全部失って、希望なんてないかもしれない」
俺には家族がいないけど、どうも普通の人間には家族というものが必要らしい。
「だけどな、まだ人生のすべてを失ったわけじゃない」
「全部失った。全部ない」
ぽつりと呟くマチルダ。
俺はなるべくやさしく聞こえるような声で言う。
「希望を失ったのはわかる。でも、希望を与える側にはまだなれる」
「与える側……?」
「そうだ。お前は王族の血をひく王女だ。魔族に蹂躙され支配された人間たちだが、お前が生きていることを知れば、希望を持つだろう。まだ人類には望みが残されていると。王国は滅んでいないと。なぜなら後継者が――お前が、まだ生きているからだ。しかもその後継者は世界最強のニンジャと手を組んでいる」
「………………」
「いいか、世界中にはお前と同じような子どもがたくさんいる。家族を殺され、すべてを失い、幼いながらも奴隷のような扱いを受け、魔族相手に売買されたり身体を売らされたり。お前には彼ら彼女らを救う力がある。ここには魔王の後継者もいる、な、アルティーナ」
「まあそうじゃが、でも、魔王位継承順でいえば52番目くらいじゃがな」
「十分だ。権利があるということが重要なんだ。継承順位なんて実力行使でなんとでもなる。で、人類の王家の後継者もここにいて、聖女までいる」
カルアがおそるおそる言う。
「あのー。私は別に……偽物ですし……」
「でも現実に信仰を得られるのなら、それはもう本物だからな。魔王の座を受け継ぐ権利、人類の王座を受け継ぐ権利、そして宗教的な権威。それがを持つものすべてここに集まっている。もっとも重要なのは、……わかるか?」
アルティーナが腕組みをしながらフン、と鼻をならした。
「それを実現するための暴力装置じゃな」
「そうだ。そしてそれが俺だ。いいか、マチルダ、お前は人類の希望になるんだ。お前が味わっている絶望は深いと思う。だが、子どもたちにこれ以上お前と同じような思いをさせないようにしてあげることはできる。そしてそんなお前を見れば……天国にいる家族も、とても喜ぶだろう。誇りに思うだろう。そんなマチルダを育てた親も素晴らしい人物だったと人々も思う」
「……………………」
「そして。人々を救うことができれば、とても気分が良くなる。お前が、お前という存在がこの世に生まれて生きている価値を、そこに見いだせるからな。自暴自棄になっちゃだめだ、自分を大切にしろ、それができれば他の人も大切にできる、救える、お前にはその力がある」
と、そこに、リチェラッテがマチルダに抱きついた。
「え!?」
困惑するマチルダ、リチェラッテは構わずに言う。
「そうだよ! カズヤの力を利用して、人類を救おう! あと、あたし、マチルダの友達になってあげる! ずっと一緒にいよう!」
カルアがそんなリチェラッテの腕をひっぱった。
「ちょ、なにやってんのリチェ! その人王女様だよ! そんな気軽に話していい相手じゃ……」
リチェラッテはそんなカルアの腕を引っ張り返し、マチルダとカルアを腕力でくっつけてさらにその上から抱きついた。
さすが戦闘力6821。282と8では抵抗することもできないだろう。
「ね、今まであたしの親友はカルアだけだったけど! マチルダも入れてあげる! これから三人一緒! ねっ!?」
「……………………」
マチルダは何も言わないが、リチェラッテのなすがままに身を任せている。
うんうん、リチェラッテはデリカシーゼロだが、それが良い方にむかっているようだな。
あとは。
俺の仕事だ。
「とりあえず、北の町もやるか」
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