第27話 サーロインステーキ
「復讐? できるよー! やろうよ、復讐!」
「……は?」
「あのね、ここにいるアルティーナはもうね、カズヤにわからされて、カズヤに降参しているの! 降伏文書まで調印しているんだから、実はカズヤの部下! でねでね、カズヤは超強い! 多分世界で一番強い! 魔王より強い!」
「……ほんと……?」
アルティーナは渋い顔で腕組みをして言う。
「まあ確かにこやつの強さは……。この私でも見たことないレベルじゃ……。魔王様、つまり私の父上と比べても遜色ないかもしれないな」
「ただ、残虐さも魔王レベルですけどね……。しかも楽しんでやってるっぽいし……」
カルアが失礼なことを言う。
俺はな、人類平和のために仕方がなく爪を剥いだり歯を抜き取ったりしているだけで、決して楽しんでやっているわけじゃあ、ないんだぞ。
ま、いやでもないけどな。
「だからね、王女様。王女様はさっき、自分には復讐する力なんてない、って言ってたよね? うん、王女様にはその力はない。でもね、カズヤにはある! 最強だから!」
ふふふ。
そう、リチェラッテの言う通り、俺は最強だ。
「だからね、カズヤの力を利用して復讐しちゃえばいいんだよ!」
マチルダは俺の顔をちらっと見ると、
「でも、その人、人間も殺してた……」
「違うぞ」
俺は即座に反論した。
「俺が殺すのは、人間も魔族も関係なく、悪いやつだ。あの司祭とか騎士たちなんて、若い女たちを、魔族の命令だって嘘ついて集めて、魔族に献上するフリをしながら魔族に売っぱらってたんだぞ」
「あの人たち、そんなことを……」
カルアとリチェラッテもうんうんと頷いて、
「そうそう。インチキのクジまで作って私たちを騙してたんです」
「そうだよ! 何年もそのインチキやってたんだよ?」
マチルダは動揺した顔で、今度は別のことを尋ねる。
「で、でもそこにいるのは魔族の将軍ですよね?」
それにはリチェラッテが自慢げに答える。
「だから! さっきも言ったけど、アルティーナはカズヤがもう『わからせ』たから! カズヤの言う通りに動くよ! で、カズヤは今の魔王をやっつけて、このアルティーナを新しい魔王にするつもり」
俺はアルティーナのそばまでいくと、その頭をポンポンと叩いた。
アルティーナはむすっとした顔をするが、抵抗はしない。
「大丈夫だ。こいつが魔王になったとしても、暴走しないよう俺が見張っているからな」
それでもマチルダはまだ納得しない。
「でもでもでも! 魔族は人間を食べるし……」
「しかし、俺がアルティーナから聞き取りしたところだがな。別に、人間は美味しいが人間を食わなきゃ生きていけないってこともない。な、そうだよな? アルティーナが一番好きな肉はなんだ?」
「……牛じゃ」
「次は?」
「次は鶏、その次に豚、あとは白身魚……サーモンとか好きじゃ」
「人間は?」
「私は食べない……好きじゃない。ファモーとかは好きみたいだけど、あれだって一番好きなのは牛のサーロインステーキじゃぞ」
そう、これは重要な情報であった。
魔族は人間を食うが、それは数ある食材の中の一つというだけであって、生存に必須な食べ物というわけじゃない。
うまく誘導することで、たとえば現代日本人が犬の肉をほとんど食べないのと同じように、魔族のあいだに人間を食べる文化を消していければ……。急には無理かもしれんが、時間をかければ可能なはずだ。
いつの日か、人類と魔族が融和する時代がやってくるかもしれない。
それを、俺がつくるのだ。
そして人類と魔族の頂点に俺が立ち、最高の権力者としてモテモテになってイチャラブ授乳プレイを楽しむのだ。
さすがに最高権力者になったらモテる……よな?
なーんか俺って人に嫌われる要素があるみたいで、今まで全然モテなかったし……。
性欲は金で解決してきたけど、すっごくむなしいしな……。
だから、それこそが、俺の最大目標なのだ!
「マチルダ」
俺はすべての希望を失った、十歳の女の子に声をかけた。
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