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聖騎士:憂いを掃う

「糞、糞ぉ……!!」


 この我が、エルダーリッチが徒人にしてやられる等……!!


「必ず報いを受けさせてやる! 手始めにあの男が守っていた女を――」

「廃教会を根城にしていた時点で疑っていましたが、生前は聖職者だったんですね?」

「!?」


 誰だ⁉ 声が聞こえるまで外敵が居る事を一切関知できず、慌てて周囲を見渡すとあの憎たらしい小僧が何かしらの書物を眺めながら聖壇前で寛いでいた。


「き、貴様は――ぐぁ!?」

「永遠の命を求め邪道に堕ちたリッチは、魂の依り代に指定した穢れた聖句札を破壊しない限り無限に再生する……」


 な、なぜリッチ化の秘法をこんな小僧が知っている!?


「……クハハ! その通りだ愚かな人間よ、どれだけ我が仮初の肉体を痛めつけても!! 完全に消滅させる事はできない!! お前には我を倒す事は不可能だ!」


 強がってみたものの、無駄な抵抗だと本能が告げて来る。この小僧は……何かがおかしい。


「分かったらさっさと去――あああああああああああああ!? 何をす――ぎゃあああああ!?!?」


 無慈悲に振り下ろされた小僧の剣に四肢を削がれ、寄り掛かっていた聖壇に背中を預けたまま身動きを取れなくなる。


「む、無駄だと言っただろう!? 聖句札がある限りこの体は無限に再生する、お前に我は倒せない!!」

「倒せなくても誰にも迷惑を掛けられない様にする手段は幾らでもあります」


 ぱたんと片手で開いていた本を閉じ、小僧が冷たさすら感じさせる蒼玉の双眸で見下ろして来る。


「どれだけ痛めつけても蘇る肉体……素晴らしい」

「何を考えているのか分からないが、わ、我はお前に屈しないぞ!?」

「エリス様の練習台に相応しくないと言いましたが、私が調教さえすればどうとでもなりますね」

「調教……??」


 こやつは何を言っているんだ!? 我はリッチだぞ!!


「舐めるな――」

「まずは生意気な台詞を吐く舌を切り落としましょう」

「……え?」

「四肢を捥いで呪文も詠唱できなくすければ、エリス様の浄化魔法の練習台にはぴったりだ」


 熱を感じさせない冷たい青の瞳を覗き込んで理解する、こやつがマジで頭のネジがぶっ飛んでいると。


「ば、化け物……!」

「ふふ、同期にも散々似た様な事を言われてきましたが……リッチにまでそう言われたら流石に傷付きますよ?」

「やめ――やめろおおおぉおおおおお!?」

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