47.バナナを選んだ人間(インドネシア)
~ 天の神ラモアは、人間に石を与えようとした。ところが。
「石より、別のものがいい!」
人間が石を返したので、ラモアは次に、バナナを贈った。
バナナに喜んだ人間は、それを受け取った。
このため、人の寿命は、石のように不変ではなく、植物のように枯れゆく定めとなった。 ~
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天の神ラモアのお話は、インドネシア・スラウェシ島内陸トラジャ族に伝わる神話です。
ラモアは最初、石を刻んで男女一対の人間を創りました。
けれど、石の人間は動きませんでした。
そこで、高い山に運び、風をはらませると、彼らは呼吸し、動き始めました。
ラモアが天から蔓にくくった石を降ろしたところ、人間たちは拒否。
そこでバナナを降ろしたところ、彼らはバナナを選んだということです。
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日本神話にもありますね!
天孫・邇邇芸命が、大山津見神から岩長比売と木花之佐久夜毘売を贈られ、醜女の岩長比売を返してしまったことから、岩のような永遠性を得らることが出来なかった、と。
「美しい方だけを娶るなんて、邇邇芸命さまぁぁ」
と、思わないでもないですが、稲穂を賑わい実らせるホノニニギ神と、花の女神の組み合わせは、"豊穣"を意味し、つまりは"食"。
インドネシアのバナナも"食"。
やはり人間は、永遠の命より、"食"の悦びを求めてしまう、ということなのでしょうか。"食"="文化"という解釈もあるようですが。
う、うん。それに、考えようによっては、姉妹ふたりで嫁いで、妹さんだけ厚遇されるという状況より、ずっと配慮されているのかも?
ちなみに、このタイプの類似性を持った神話は、「バナナ型神話」と呼ばれるそうです。
バナナ型。世界のあちこちで、似た話を耳にします。
骨と肉、どちらを選ぶか? というギリシャ神話。
"生命の樹"と"知恵の樹"からなる創世記のお話。その他、いろいろ。
それにしてもバナナ型とは、なんだか可愛い呼び名。命名はイギリスの人類学者さん。シンプルでストレートな先生だなぁ。
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別タイプに、神から人間に使者が使わされるというパターンもありまして。
"若水"と"死水"を運ぶとか、聞かれたことあるかもです。
珍しいのは、トカゲとカメレオンが、神様からのメッセージを届けるお話。
トカゲには「人間には死が訪れるように」
カメレオンには「人間は永遠に生きるように」
神様は両者に、それぞれ別の内容を言付けました。
でも、永遠を預かるカメレオンが寄り道したがために、トカゲの言葉が先に人間に伝わり、人間は不老不死を得られなかった、という。
カメレオンんんんん~~っっ!!
トカゲ(変色しない)とカメレオン(移ろいゆく色)が、それぞれ対比的なメッセージを与えられたところがまた、意味深いです。
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【10/1追記】感想欄でトカゲとカメレオンにカッコイイお言葉をいただきました!
"不変は死、変化は永遠"
なるほど~~!! ザ☆哲学!!
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※コノハナサクヤヒメ
言わずと知れた富士山の神霊にして、桜をあらわす女神。サクラは、稲・座で、春、里に来た稲の神の座す木とも。やはり稲との関係が深い! でも違う話題になってしまうので、この話はここまでで。
お読みいただき、ありがとうございました(^^)/
連日の投稿にお付き合いいただき、大感謝です。こちらの感想、200件超えました!! おおお、すごい嬉しい!! お返事出来てなくて、すみません。
明日から10月。企画参加の作品を執筆するため、こっちを止めなくては……。
ちなみに現在参加中の"ブルジョワ評価企画"には、
『挨拶がわりに星押して、救われた彼の話。』https://book1.adouzi.eu.org/n5290hf/ を投稿しています。
短編なので、未読でしたら、ぜひのぞいてやってください♪




