44.絵姿の真実(中国)
~ 昔、中国の皇帝は、後宮に何千人も美女をかこっていたため、宮女の顔を知らず、夜のお相手に誰を選ぶか、絵姿によって決めていました。
いまでいうカタログです。
そのため、皇帝の目にとまりたい女性たちは、少しでも美人に描いてもらおうと、画家に賄賂を渡していました。
けれど、そういった行為がキライだった王昭君は、画家に何の心付けもせずにおりました。
画家は王昭君を逆恨みし、とびきり美人の彼女を、大層醜く描いて、提出していました。
◇
さて、前漢の元帝の時代。
皇帝から匈奴(※モンゴル)の王へ、後宮の女性を贈る約束がありました。
美人は勿体無くて選びたくない皇帝。「どうせ蛮族のもとにやるのだから」と、絵姿(肖像画)から不細工な娘を選出します。
選ばれたのは、王昭君でした。
匈奴の王は「大変な美人をもらった」と大喜びし、皇帝に礼を述べに参じます。
王昭君の顔を知らない皇帝。
(あんな不細工な女でこんなに喜ぶのだから、匈奴はやはり田舎者だ)
内心そう馬鹿にしつつ、匈奴の国へ旅立つ王昭君に言葉をかけてやるため、初めて彼女を見ました。
後宮の誰にも勝る、圧巻の美しさ。
皇帝はいたく後悔し、しかし、取り消すわけにもいかず。
あとで腹いせに画家を斬首刑にするしか、出来ませんでした。
その後、王昭君は故郷から遠く離れた、匈奴の土地で暮らすことになりますが、両国の友好のため心を尽くしたそうです。 ~
(絵 2008年)
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王昭君における有名な伝説ですが、具体的な記述は残っていないため、実際は違っていたかもしれません。このエピソードは"創作"とも言われています。
きっと皇帝ざまぁが面白いし、ウケたんですね。
画家は……うん、まあ、斬首は厳しいけど……時代……。
(匈奴からは皇女を望まれていたが、身内を送りたくない皇帝は、皇后と同じ名字の王姓の中から、王昭君を差し出すことにしたという別話あり。皇帝ぃぃぃ……)
そんなわけで、"王昭君"という女性が、漢の宮廷から匈奴へ嫁ぎ、漢と匈奴の関係に尽力したというお話は史実のようで、中国には王昭君の像もあるようです。
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【おまけ】
"王昭君"は、"中国四大美女"の一人。
他の三人はそれぞれ"西施"、"貂蝉"、"楊貴妃"。
時代は、西施が春秋時代、王昭君・前漢、貂蝉・後漢、楊貴妃・唐となっています。
そんな王昭君の渾名(?)は、【落雁美人】。
故郷・漢の地に向かって飛んでいく雁の群れを見て、望郷の想いに琴を鳴らし、その音色の哀しみに、雁たちが羽ばたきを忘れて墜落したことが由来だそうです。
が。
空征く雁の群れを落としちゃうの? 凄すぎない? 遊牧民"匈奴"の、狩りの才能が大有りでは?!
ちなみに、別の四大美女、西施の渾名は【沈魚美人】。
川で洗濯する彼女に見惚れた魚たちが、泳ぐのを忘れて沈んだから。
待ってぇぇぇ。
貂蝉や楊貴妃みたいに、照れた月が隠れたり(閉月美人)、恥じらって花が萎む(羞花美人)ような、たおやかさが……ないことない?
気のせいかな、時代かな? ワイルドでは?
(そして魚は沈むより、浮いて欲しい)
いいけど、貂蝉は架空の人物です。2次元キャラなのに、人気高い!! (※モデルは居た。董卓の侍女)
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藤水名子先生の同名小説「王昭君」では、『琴操』の記述を参考にされたらしい解釈で描かれているため、今回紹介したエピソードは出てきません。
このお話を読みたいなら、陳舜臣先生の著書、「小説十八史略」をオススメします。そちらは『西京雑記』という書物を元ネタに書かれていまして、ネット検索すると『西京雑記』の原文出たりします。良かったら。
お読みいただき、ありがとうございました(^^)/
今日、ちょっと文字数多かったですよね、すみません。
ご感想、いつもとても励みになっております!!
お言葉をかけていただくこと、作品アップ時のなによりも楽しみです!!
ところで"中国十大美女"となると、感想欄で出た"封神演義"の妲己ちゃんがランク・インしてきます。妲己ちゃん、藤崎竜先生の漫画の彼女はインパクト大きかったです。漫画は、講談社から文庫で出てるのとは、だいぶ違います(笑)。漫画の解釈、当時は賛否両論だったみたいですね。




