4.頭か尾か?(トルコ)
1500文字越えで少し長めになってしまいました。
~ 愛しい人
地上に帰ればやがてあなたは私を裏切るでしょう
けれども私はあなたを愛しています
変わることなく とこしえに ~
(2004年7月絵)
◆◆◆
洞窟から地下世界へ迷い込み、世界のすべてを識るといわれる女王シャフメランと出会った人間タフマスプは、彼女との恋に落ちます。
しかし、シャフメランとの甘い恋の後、彼は地上に戻ることを決意。
彼女の居場所は誰にももらさず、また"人前で水に入らない"という約束をして戻ったタフマスプですが、その頃地上では、不治の病にかかった王様がシャフメランの肉を所望し、シャフメランを捜し求めていました。
わずかな綻びからタフマスプは捕らえられ、水に入れられてしまいます。
全身に蛇の鱗がついていた彼は、拷問の末、ついにはシャフメランのことを話してしまいました。
かくしてシャフメランは捕まるのですが、彼女は最期に"恋人タフマスプへの変わらぬ愛"を語り、そして【自分の頭の肉を食べれば、即座に死に至る】こと、【自分の尾の肉を食べれば、この世のすべての秘密を知る】だろうことを伝えます。
ここからお話としてはお約束の展開に。
実は王様の背後には悪い大臣がいます。大臣が王様をそそのかし、シャフメランを捕まえさせたのです。そしてこの大臣、殺したシャフメランの知識を得ようと彼女の尾を口にします。
一方タフマスプは、シャフメランへの申し訳なさから、彼女の後を追うため頭の肉を食べます。
結果は……ご想像通り。
大臣は即死し、タフマスプはシャフメランの知識を受け継いで、放浪の旅に出ることになるのでした。
◆◆◆
余談ですが王様の病は治ったそうです。不治じゃなかったの? やはり大臣が画策して焚きつけていたということね?
世界の知識を識ってしまうことも結構残酷ですが、なかなかにそそられる背景だと思ってしまうのは私だけでしょうか?
◆◆◆
シャフメランはトルコ・アナトリアの地母神で、家庭と女性を守護する蛇の姿をした女王様だそうです。
上半身は人の姿をしていますが、下半身は蛇身。
なんとなくメデューサを彷彿とさせますが、メデューサも元は大地母神でトルコと深い関わりをもっているところから、ルーツは同じなのかも知れません。
諸説ありますが、アナトリアのトルコ読みは"アナドル anadolu"といい、分解すると、
ANA=母の(←ちなみに"お母さん"はトルコ語で"アンネ")
DOLU=満ち溢れた(←ドルマdolmaは食べ物名としてよく聞きますが"詰まった"という意味)とも。
おおお。なんだかもう、この土地の名前自体、すでに大地母神と密接な関係を匂わせてくれています。【母の愛に満たされた土地】。カッコイイ。
更にアナトリアの遺跡でも"ヘビ"は智慧、癒し、病気治療もつながってます。医師会のシンボルもヘビ。日本でも、皮を脱ぐヘビは再生の証。
ヘビって私は怖いけど、神秘の力満載の生き物として、世界共通で古代から一目置かれていたことがよくわかります。
◆◆◆
さて、そんなシャフメラン(Sahmeran)。
言いにくいので、私はよくシャフラメンと間違えます。シクラメンとも似てますよね。
シャフは「王」だって。メランは何だろう。ユランなら、トルコ語で「蛇」という意味なのですが……。あちらの怖そうな、ちょっと力のある獣系は名称に「~ラン」がつきます。アスラン(獅子)とか。
あ、話が逸れましたね。私はすぐに逸れる。
まあ"シャフメラン"の言いにくさも、"タフマスプ"には劣ります。こちらの名前は、もはや覚えようという気すらおきません。断固、無理。
えーと、つまり。
「頭か尾か?」のタイトルは鯛焼き食べる順番じゃなく、あと私だって"二人が絡んでいる絵も描けるのよ。"という、そんなお話でした。(精一杯のボケ) 絵の手首が細いのは、当時の私がハマってたみたい。こういう絵が添えられる恋愛話を書いてみたいものです……。(遠い目)
【2021.1.28.追記】
情報いただきました。「Shah」はイランの称号で王やリーダー。「Mar」はクルド語やペルシア語で蛇。「Maran」はその蛇の複数形だとのことです。メランではなくマランになっていますが、ほぼほぼ同じだと思います。
お読みいただき、ありがとうございます(^^)/
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