37.やったのは自分?(イギリス)
~ 妖精は言った。「私はエインセルよ」
男の子も言った。「僕もエインセルだよ」
ふたりは一緒に遊び始めた。 ~
◆◆◆
夜遅くまで起きている男の子に、母親が「早く寝ないと、妖精に連れていかれるわよ?」と告げたものの。
いつまでもひとりで遊び続ける少年。
そんな彼の前に、暖炉からフワリと降りてきたのは妖精の女の子。
ふたりは互いに「エインセル」と名乗りあって、しばらく仲良く遊ぶうち、暖炉の火が消えかけた。少年が慌てて棒で火をかきまぜた途端、はぜた火が妖精娘に飛び……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」
突然激しく泣き叫ぶ少女に驚いて、思わず隠れてしまう少年。
と、凄まじい勢いで老妖精が部屋に飛び込んで来た。
「誰がおまえを火傷させたんだい! そいつをとっちめてやる!」
老妖精の剣幕に、隠れた少年が震え上がっていると、妖精少女は泣きながら言った。
「エインセルがやったの――っ」
「……? 自分でやったのかい? なら、しょうがないじゃないか。ほら、とっと帰るよ!」
こうして妖精たちは部屋から消え去り、以後、少年が夜更かしをすることはなくなった。
◆◆◆
うろ覚えで絵を描いた後に確認したら、少女が火傷した部分は足で、少年が隠れたのは薪の後ろだった――!! そして妖精少女はもしかしたらミニ・サイズだったかも――。
すみません。でももう描いたから、直したくない。(こら)
今回は、"子どもが描きたかった"という衝動だけで突発的に挿入したお話です。
元のお話は、井村君江先生 訳『妖精Who's Who』(ちくま文庫)。いろんな種類の妖精が、名前と逸話で紹介されています。「エインセル 妖精」と検索すれば、BIGLOBEさんのA項目で、文庫内容そのままそっくりのものが読めます。(びっくりしました。いいのかな、著作権的なものは?)
ところで"エインセル"というのは、固有名詞ではなく、"自分自身"を示す言葉だそうです。
my self的なものなのでしょうか? ※my own selfだそうです※
だから、少年・少女の名前が本当に「エインセル」だったかどうかは、よくわかりません。
ただ響きとあわせて、ずっと印象に残っていて、個人的に好きな単語です。いつか自分のキャラに名付けたいくらい。
◆◆◆
妖精もののオススメ文庫。
『妖精Who's Who』『ケルト妖精物語』『ケルトの薄明』『ケルト民話集』など。前3冊は井村君江先生訳、後1冊は荒俣宏先生訳。いずれもちくま文庫です。
章タイトルだけでそそられたり、興味深いものがたくさんあるので、良かったらどうぞ。
妖精を信じない男が、自分で脱いだブーツで叩かれまくったり。異種族の妻を持つ男が、妻を責めた途端、相手が消えうせ絶望したり。埋葬時の死衣が短すぎると、煉獄で膝を焼かれてしまったり。
歌の上手な男が、古墳の妖精たちに背中の瘤を取ってもらうお話もあります。でも気難しい別の男の背には、2つめの瘤が乗せられてしまう流れなどは、"こぶとりじいさん"のお話そっくりです。(ケルト妖精物語、ノックグラフトンの伝説より)
世界って、つながってるんですね?
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【9/22追記】
感想欄にとても詳しい内容をいただきました!! ぜひあわせてご覧ください!! ありがとうございます、ジャガイモ探偵様!! ジャガイモ探偵様から、原文のURLも賜りました。後書きに載せます♡
お読みいただき、ありがとうございました(^^)/
【My Own Selfについて】ノーサンブリアの民話
原文URL : https://fairytalez.com/my-own-self/
集話 ジョセフ・ジェイコブズ (オーストラリアの民族学者)
没後100年経過のため著作権問題無し ※ジャガイモ探偵(ID 2221799)様より
更新ペースについて、感想欄で思いやりに満ちたお言葉をたくさんかけていただき、とても嬉しかったです。無理のない範囲で頑張っていきたいです。ありがとうございます!!
(おかげさまで900pt乗りました! お礼に、盛り上げたくて更新♡(∀`*ゞ))




