33.花咲きて雪想ふ(ポルトガル)
~ かつて。
ポルトガルにムーア人が支配する、イスラムの国があった頃。
当時の王は、北の国からとても美しい妃を貰いました。
ところが冬になると、妃は故郷の雪を懐かしみ、哀しみのあまり衰弱していってしまいました。
ポルトガル最南端は暖かく、雪が降ることは到底有り得ません。
王は妃を慰め、喜ばせるために、たくさんのアーモンドの木を植えました。
やがてアーモンドの木々は、いっせいに白い花を咲かせます。
まるで雪が降り積もったかのよう。真っ白な世界、穢れない愛。
妃は、王の想いに包まれて元気を取り戻し、ふたりはいつまでも仲良く幸せに暮したということです。 ~
(絵 2003年)
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そんなこんなな影響か、ポルトガルのお菓子には、アーモンドを使ったものが多いそうです。
過去、『世界ふしぎ発見!』で披露されたエピソードですが、この話大好きで!
確か、アーモンドと桜の花が似ていると覚えたのも、この時だった気がします。
以前こちらの感想欄で、「四国から長野に嫁いだお姫様が寂しくないよう、長野のお殿様が、もともとはなかった杏の木を長野に植えた」というご投稿をいただいたことがあります。その時も、まっさきにこのお話を思い出しました。奥方のために心を砕くお殿様、素敵ですね!
そして嫁入りと共に、遠い地に新しい動植物や習慣が入る点も感慨深いです。
有名なところでは、メディチ家のカトリーヌ様かな。イタリアからフランスに、テーブルマナーや香水、パラソル、ダンス等々、様々なものをもたらしたとか。
逆に言えば、文化も風習も気候も違う遠国に嫁がなくてはならなかったお姫様たちは大変でしたよね。いえ、いまもなんですけど。入る側は大変。
私は海を見て育ちましたが、遠方のお見合い話をいただいた時、「海のないところで暮らすのきっと無理」、と感じたことがあります。幸い地元でおりますので、海は身近です。大切な相互様が時々、「海のない県に嫁いだ」と仰ってて、お聞きするたびに「海、欲しいだろうなぁ」と思ってしまいます。転勤での移動も同じですよね。
海。何をするわけではないんですが……。そして泳げもしないのですが。私にとって海は必須です。
北の国出身のお妃さまには雪が必須だったのでしょう。わかりみ。
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今回の挿絵は2003年作。後ろのムーア人の旦那様、肩幅とかの狂いが気になるところですが、気にしないでやってください。
お読みいただき、ありがとうございます(^^)/
アーモンドの花言葉は「真心の愛」なのだそうです。ピッタリ!




