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~世界の民話・伝承集~最奥の森、最果ての海。  作者: みこと。@ゆるゆる活動中*´꒳`ฅ


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32.濡れた服(イタリア)

~ 幼い子どもを亡くした女が、子を諦めきれず、昼も、夜も、子どもの墓の上で泣いていた。


 ある※公現祭(エピファニア)の夜のこと。


 美しい魔女の女王、青い服のブレクタに導かれ、亡くなった子どもたちが(つら)なり、長い長い行列をなしていた。


 その列の最後尾を歩く子どもは、服がぐっしょりと濡れ、重そうにしながら、必死に皆の後を追いかけている。


 あまりに疲れ果て、寒そうにしている子どもを見かね、女が近づいてみたところ。


 なんと、その子は失った我が子であった。


 驚き喜ぶ母親に抱かれながら、子どもが言った。


「また会えて嬉しいよ、お母さん! でも、あんまり泣かないでね? お母さんが泣くとホラ、僕の服、いっぱい濡れちゃって、皆についていくのがやっとなんだ」


 子どもの言葉に、母親はハッとし、そして、もう泣かないことを約束した。


 服が軽くなった子どもは、皆に続いて、天に昇って行ったという。 ~

挿絵(By みてみん)

(絵 2006年)


◆◆◆


 子どもを失うと、それはもう泣き暮らすこと間違いなしかと思います。泣くなというのも無理な話。だけど、子どもの服が重く濡れるのは、親として望むことではなく……。むむぅ。元気に生きててくれるのが一番! ほんとそれに尽きます。


 日本でも言われてますよね。生者の嘆きは死者の成仏を妨げる。

 遠く離れた北イタリアでも、同じように考えられているのは興味深いです。


 寒い山岳地帯に伝わるお話ですが、青い服の女王は、魔女の女王にして豊穣の女神。彼女が亡くなった子どもたちを連れ歩くのは、古代の大地母神として、命を再びその胎内に迎え入れる特性を示しているそうです。


 参考にした図書『イタリア異界物語』(東洋書林)によれば、彼女はフラウ・ホッレとイコールでつながれていました。フラウ・ホッレ? ドイツの魔女の? へぇ――。

 こちらの書での名前はブレクタ。優しく厳しく、美しく恐ろしくといった多面性を持つ、まさに北山の化身のような描かれ方をしています。


 山が白くなるのは、女王がシーツを直したから。


 ドイツでも雪が舞うと、"フラウ・ホッレが羽根ぶとんを直している"と言われているらしいので、やはりブレクタ = フラウ・ホッレなのでしょうか?

 エピソードがつながっていて、面白いです!

挿絵(By みてみん)

(絵 2008年)


◆◆◆


※公現祭 = エピファニア (Epifania)

キリストがはじめて公の場に姿をあらわした祝日。1月6日。子どもや庶民のために働く人たちに贈り物をする風習があり、ここでの魔女の名前はベファーナ (Befana)。サンタクロースのようにお菓子を配りながら、箒で1年の厄災を祓う良い魔女だそうです。

お読みいただき、ありがとうございます(^^)/

ご感想たくさんいただいていて、嬉しい悲鳴をあげております!

が、いかんせん、お返事の方がまるで追い付いておらず、申し訳ありません。

かけていただくお言葉、とても有難く、いつも宝物のように読ませていただいております!!

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― 新着の感想 ―
[一言] おおおう、これは泣きますよ……! なんと切なく優しい話~! イタリアやドイツのあたりの民話はあまり存じ上げなかったのですが、キリスト教以前にいた神々がまだそのままに近い姿で残っている感じなの…
[良い点] 親よりも先に死んだ子が、何かの形で死後も苦しむ理不尽って世界でも共通なのですか。 三途の川で、石を積んでは崩されエンドレスな姿を見ているような、どこかやりきれない気分になりますね。 最後…
[一言] 2006年でも絵のタッチに「みこと。」さまの「色」が見えますね。 ギリシャ神話ローマ神話北欧神話やケルト神話、世界に様々な伝承などが有ってしかも共通する部分が有ったり面白いですね。
感想一覧
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