23.幸運の名医(ハンガリー)
(絵 2006年)
~ 「さあ、この処方箋をもって薬局へ行くといい」
文字が書けないのに医者として開業した靴屋は、すました顔をして文字のようなモノを書いた紙を患者に渡しました。
慌てたのはそれを受け取った薬屋です。
まさかそれが適当に書かれたニセの文字だなんて思いも寄りません。
「どこの国の文字だろう」と首を傾げましたが、字が読めないなんて思われたくもない。
薬屋は患者から詳しく症状を聞き出し、それにあった薬を渡すことにしました。
こんな調子で次々と治療をしていった元靴屋。
"あの医者はどんな病気でも治す"とたちどころに評判になり、診療所は大盛況となりました。 ~
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これだけで終わらないのが、この物語の可笑しく面白いところ。
果ては馬を盗まれて相談にやってくる者まで!
なのに、うまい具合にそれが解決されたりするものだから、やがて王様に呼び出され、盗まれた指輪を見つけ出すように命じられます(医者なのに;;;)。
覚悟を決めて開き直った彼とその妻。
またしても幸運が彼らに味方し、問題は解決。
王様からたくさんのご褒美をもらいます。
まるで「なろう」さんの上手い勘違い話のような展開!!
しかし、医者の活躍を疑う賢い王子様の登場。
だけどこのニセ医者は、最後の難関、王子様も突破するのです。おおおお。
ラストは(読めない)書物を焼き、それを理由に病院を閉め、蓄えた財宝でその後も楽しく過ごしましたという明るくハッピーなお話です。
お話としての完成度も高く、きちんと幸運の裏付けがされていて、オススメ。
このエピソードの中の一部だけ、とか、日本でも童話で出てたような気がします。
全文は大人向けの文庫をご確認ください。「ハンガリー民話集(岩波文庫)」という短編集で、読みやすいです。
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ところで本文にも出てくるのですが、この靴屋さんの本名は"てんとう虫"。
てんとう虫は、海外では"幸運を運んでくる虫"として有名ですよね。
つまりこれは"幸運なお話"とネタバレしてくれているようなもので、オチにそこを持っていくあたり、なかなか心憎い演出。
ですが、彼の強い幸運も、"度胸と行動力があってこそ呼び寄せた"といったストーリー展開は、決して"受け身の運任せではなく"、好感が持てます。
受け身の運任せ誤解系も、面白くて大好きですけどねっっ。
てんとう虫は英語でこそ"Lady bird"(聖母の鳥)ですが、トルコ語だと、まんま"ugur bocegi"(幸運の虫)。てことは、ヨーロッパの他の国々でも似たような名前なのではないでしょうか?
幸運を運んでくる共通認識があるのですね、きっと。愛され昆虫だなぁ、てんとう虫。
地図も2006年に書いたものです。いま変わってたりしないよね? 違ってたら、すみませんが指摘してやってください。
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【注】
上記文章は大部分が2006年の作です。いまネット確認したら「ハンガリー民話集」中古本しかない? 図書館ならあるかな?
というか私自身、ほぼお話の内容を忘れているようなので、実家で本を探してこなくては。質問されてもお答えできないぞ? ←おいおい。それをさも現在のように載せるな~~。……失礼しました。




