18.セドナの指(イヌイット)
~ 切り落とされたセドナ(Sadna)の指は、アザラシ、クジラ、魚などの海獣となり、セドナ自身も海に沈んで、海の支配者となった。
彼女は海底にある死者の国の王であり、また、人間の始祖神でもある。 ~
(2004年絵)
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いきなりでしたが、セドナはイヌイット(カナダ北部)の"指のない神"とのことです。
その姿は巨大(※1)で、隻眼の醜い老婆だという話ですが、若い頃はそれなりの娘さんだったはず……!
鳥(※2)の悪霊が、美しい人間の男に化けてセドナを誘惑し、求婚を受けたセドナは孤島に連れていかれます。
父親が助けに来るのですが、脱出の際、男(鳥の悪霊)の呪いで海が大荒れ。
自分が助かりたい父親は、荒波で海に落ち、船のへりに捕まっていたセドナの指を切り落として逃げます。
それでセドナには指がなくなったわけですが。
……お父さん、助けに来たんじゃなかったの??? シュール過ぎる……!!
指を切った相手が父親と言うことで、衝撃を受けたエピソード。
ちなみに切られた指からは、海の生物が生まれ、セドナは海獣たちの生みの親となり、また陸地にあった時に産んだ子どもは、イヌイット(※3)の始祖になった、という伝説なのでした。
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※1 巨大 = 古い種族である巨人の娘説。
※2 鳥の悪霊 = なぜ鳥がそんな真似を? そして悪霊? 更に海を荒らすパワーすごいね?! と気になること満載なのですが、さらに言えば、その鳥とは、カモメやアホウドリ、または海燕、はたまた犬という説があるようです。犬は鳥ちゃうやん!! 多分、伝説につきものの"気にしたら負け"な部分です。
※3 イヌイット = カナダの先住民。エスキモー系諸民族にしてモンゴロイド。氷雪地帯に住む。こういう方たちは、真っ白なはずの雪や氷の色を見分けることが出来ると聞いたことがあります。色づく世界らしいです。さすがですよね?
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別説。セドナは嫁ぎもせずに肉を鷲掴みにして食べる凶暴な娘だった、または幼少期より凶暴で両親を食おうとしたために捨てられた、という、父親側の言い分が成り立つ話もあります。
海の底に"死者の国"(冥界アドリヴン)があり、セドナは海の生き物の守護・管理を行う"海の女王"にして、人間の祖。
設定がすごい。昔の人たちは、生き物の起源が海にあったことを感じ取っていたのでしょうか。
いずれにせよ興味深く思ったのは、アイルランドの端とカナダの端で似た伝説がある点。
アイルランドでは「水底に沈んだ都イス」のお話があります。いずれご紹介したいと思っていますが、有名なのでご存じの方も多いはず。
どちらの伝説も、奔放な娘が、男(悪いのが化けてる)と恋に落ち、それによって災いが起こり、父親が娘を水底に突き落とすという流れ。これらが象徴することはいろいろあるらしいですが、気になる方は解釈をお調べくださいませ。
さて、海底のセドナ。
彼女はクジラの骨で出来た家に住むとされています。
クジラの骨。つい先日、「なろう」さん内で、クジラの骨は詰まっているものが無くなると、スポンジ状になると知ったばかりで。ということは、スポンジのおうち……? 不思議な感覚。
海獣の骨は緻密に詰まって重たいのに、クジラの骨は柔らかく軽いとか、面白いですよね。話それるから掘り下げませんけど。
水底の物語。実に好物なのでした。
お読みいただきありがとうございました。
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