13.黄金の繭(ウイグル)
国名を迷いました。中国の新疆ウイグル自治区が舞台です。
~ あの方の不実な心のように 偽りの金を纏うより
私は真実、白を望む
蚕よ、蚕、金の繭よ
私の心が分かるなら、その身を真白に変じておくれ ~
(2004年絵)
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昔、絹が黄金と等価で交換されていた時代。
生糸は見事な黄金色をしていた。
まばゆく輝く金の絹の製造方法は、"絹の国"だけの極秘事項であり、その製造法は門外不出の禁制とされていた。
あらゆる国はその秘密を知りたがった。
小さな国、"于闐"でも同様だった。
若き国王ティルカは一計を案じ、秘密を得るために"絹の国"の姫を自国の妃へと望む。
ティルカに請われ、遠い砂漠を旅してやっとの思いで"于闐"へ嫁いだ姫。
しかし、夫ティルカが欲していたのは姫ではなく、彼女が髷に隠して生国から持ち出した金色の蚕だけだった。
夫の本心を知った姫は蚕に願い、以来、蚕の口から吐き出されていた金の繭は、一夜にしてすべて白くなったという……。
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黄金色の蚕が白くなった理由の物語。
"絹の国"の姫君は、伝説では于闐(ホータン)の王に冷遇されたことになっています。だって、そうじゃないと繭は白くなりませんものね。
ですが、史実ではとても大切に扱われたと残っているようです。国を豊かにするための大切な繭(国家機密)を決死の思いで持ち込んでくれた姫君を熱烈歓迎し、蚕の餌となる桑を総出で探し、国を挙げて産業を盛り立て、絹の産地として名を馳せるに至りましたから。
ちなみに、糸と紡ぎ、布を織る技術は姫君が、女性の教養として身につけていたそうです。
まさに姫君さまさまですよね? 嫁ぎ先で大切にされて良かったよ――。
シルクロードの丹丹烏里克遺跡から発掘された木簡『蚕種西漸図』に、この(繭を髪に隠して運ぶお話の)原形ではないかと思われる絵があるそうです。どんな絵なのでしょう、とても見てみたい!
漫画家・神坂智子先生がシルクロードシリーズ「金の髪 金の繭」(白泉社刊)で、この嫁いだお姫様のお話を漫画にされていてましたが、それは伝説にあわせた薄幸バージョンでした。いまはもう手に入らないかな? 雑誌掲載が1985年とか激しく昔で、私もず――っと後になってから読み、さらにその後年月が経っていますので。漫画では晶妃という名があてられていたように思います。名が不明な姫君に名前が付くと、いっきに親しみが湧きますよね。名前って大切。
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全くの余談ですが、新疆ウイグル自治区といえば"楼蘭の美女"と呼ばれるミイラが展示されています……。タクラマカン砂漠で発見された……。
ミイラ、めちゃくちゃ苦手。たとえそれが美女だとしても! エジプト展なんかでミイラ展示があると、そこ避けて通るくらい。
で、あるのに、学生時代、大学の夏期集中でスクリーンいっぱいに、この美女ミイラを見せられるという講習がありました。ひぃぃぃ。しかも集中講義ということで、昼食挟んでまた続く同じ授業。
ミイラ見た後、お弁当、そんでまたミイラ。あ゛~~、あれはもう脳裏に焼き付いて離れません。私、食べ物と結びついた記憶は強いんです。そんなわけでシルクロード→タクラマカン→ミイラという連想回路が出来上がってしまい、話題に出すたび思い出すのでした。シナプスめ、こういう時だけ活発に働く。くっ。
ミイラ話につきあわせてすみません。セットなの。シルクロードとセットなの。私の中で。なんて残念。
それから、こちらは詳しくないのですが、金色の繭は現代でも実在しています。
あと蚕の好物、桑。桑の実は、ジャムがとても美味しいです。ドドメ色ですけど。(←何の話(笑))
絵を描き直そうかなぁと悩んだのですが、当時の絵が何の漫画の影響を受けたか、自分の中で一目でわかって「ああ」と思ったので、これも思い出として、そのまま使用しました。
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