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第48話 エサに食いつく

 広場で民たちに食事が支給され、歓喜が溢れ出す中でイベントはまだ終わらない。


「よし、俺達もゲイ……芸を披露するか」

「異世界で通じるのかよ……大体、俺が得意なのはカラオケだし」


 民たちが広場に集まっている中で広場に簡易なピアノが運び込まれる。

 それは、食事の合間の余興。

 ピアノが得意だというヤマダ。

 歌が得意だというワタナベが、少し緊張した様子で民たちの前に出る。


「では、いくぜぇ! 盛り上がってくぜー!」

「みんなー、俺の歌を聞けぇ!」


 そして始まる二人の演奏と歌声。

 それは異世界の歌で、この世界にはない音。

 だが、それが逆に新鮮で、民たちの心を惹きつけていく。

 そして、広場は一気に活気に満ちていく。まるで祭りのような賑やかさがそこにはある。

 皆が歌に聞き惚れ、食事にありつく。


「ほぉ……カスだと思ったけど、やるじゃねーか」


 相棒をイジメたカスども。お仕置きをした後は、別に死のうがどうでもよかったが、ヤツらの特技は民たちを楽しませるのに一役買ったようだ。

 配給、そして歌とピアノの余興。

 民や魔王軍の兵士たちが続々と広場に集まり出し、頃合いを見てヤミナルに合図を送る。


「おお、だいぶ少なくなったな。追加を用意しようではないか」


 ヤミナルが俺の合図に気づき、ヤミナルのその言葉でイロカとクロカワたちも理解して頷く。


「よーし、まだまだ演奏するぞー! 譜面があればリクエストに応えるぞー!」

「おーい、ちびっ子たちも歌おうぜ!」


 ヤマダとワタナベもそれに合わせ、民たちを盛り上げながら歌い続ける。


「さてと、んじゃ……」


 俺は民たちが盛り上がり、「ヤミナルがその場からコッソリ離れたのを民も魔王軍の兵も気づいていない」ことを確認。

 そして、ここまで順当に来たことで、相棒の作戦を思い返す。

 相棒の作戦。

 相棒のやっていたゲームとやらにおいて、そのルートはなかったとのこと。ただ、もしストーリーにおいてレストルムを放置していたらどうなるのか? というものらしい。

 相棒の意見としては、もしそのルートを選んでいたら?

 まず、魔王軍の虱潰し捜索は既に気づいているだろう。

 そんな中で、この広場の御騒ぎもレストルムは気づいただろう。

 そして、そこにヤミナルが居る。 

 さらに、ヤミナルが自然の流れでその場から離れて、誰にも気づかれずに一人になる。

 そうなれば……






「さて……レイヴァの相棒の想定通りにいくかどうか――――」


「ヤミナル姫」


「ッッッ!!??」





 俺も、マキも、魔王軍の兵が近くにいない状況でヤミナルが外を歩いている。

 相棒の予想では、その好機をレストルムは逃さない。ヤミナルをエサにし、ヤミナルを一人にすれば、必ずレストルムは食いつくはず。

 あとは、ヤミナル次第。

 かつての仲間を裏切るのか。

 それとも俺を裏切るのか。

 さて、どうする?

 そして俺は……


『……あの、レイヴァさん……』


 通信用のマジックアイテムが反応する。

 その相手はシガーだ。


『ヤミナルさんに誰かが声をかけてます』

「……そうか。ありがとよ、シガー」


 やるじゃねえか、相棒。

 まんまと、レストルムがエサに食いついたようだ。

 ならば後は、俺がそこに行けばすぐに問題解決。

 唯一の懸念は、そこでヤミナルがどう動きか……もし、ヤミナルが俺を裏切り、かつての仲間を選べば、ヤミナルとレストルムを同時に相手にすることになる。

 近くにマキや魔王軍兵が居るのだから、そこまでバカな行動はしないだろう。

 とはいえ、もしヤミナルがかつての仲間を選べばそのときは――――





「―――まずはあなた様だけでもこの国を離れるでござる、ヤミナル姫」

「レストルム……」

「そして、体制を整えて、我らと共にこの国の解放を」


 ヤミナルが一人になったところに、突如現れたのはレストルムだ。忍者装束のレストルムは、ヤミナルに対し、この国を魔王軍から解放するということを話している。


「魔王軍の捜索で某たちもこのままでは見つかるであろう。もはやその前に脱出するしかないでござる。だが、このまま終わるわけにはいかないでござる。ヤミナル姫、あなたも一緒に。この状況であなた様と接触できたのは暁光でござる」


 レストルムはヤミナルに呼びかける。

 レストルムにとって、ヤミナルが敵に敗北したことは聞いている。

 しかし、それでも生き残ったのであれば、まだ共に戦える。

 レストルムはそうヤミナルを誘う。

 だが、ヤミナルは首を縦に振らない。


「残念だが、レストルムよ、それは出来ぬ」

「な、何故ですか、ヤミナル姫! レイヴァに負けたとは聞いています! しかし、だからこそ、レイヴァに一矢報いなければ……」

「わらわはレイヴァに敗れ、その上に捕らえられた身だ……いや……それどころか」


 ヤミナルは唇を噛みしめ、これから言おうとしている言葉を一度飲み込む。

 言えるはずがない。簡単に。

 だけど、もし言わねば、レストルムは……


「っ、う、うう……」

「ヤミナル姫!?」

「……い、言えぬ……う、ぐう、このような残酷なことを――――」


 だよな。

 ヤミナルが途端にポロポロ涙を流した。

 それを見て俺は、どうしようもなくなり、作戦の途中ではあるが……


「修道会の……レストルムだな」

「ッッッッ!!!???」


 エサにかかったネズミの前に姿を見せてやった。



「き、貴様、烈将レイヴァッ!」


「そうだ、初めましてだな。そしてようやく会えたな。俺の女になって子を産んでラブラブしようぜ」

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