第4話・認知症話
誰でも病気になります。令和7年現在、我が国では身体の不調がある場合は、誰でも受診しやすい環境にあります。同時に受診することで患者さん本人の置かれている立ち位置、家庭外では隠しておきたい出来事がバレざるをえないことが多々あります。その手の話は何度か書いていますが、重複しないようにかつ個人情報には深く配慮しています。本日は調剤薬局にいる薬剤師から見た家族関係のありようの話です。認知症患者を取り上げてみます。
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認知症の診断が下りたら、ドネペジルを処方される人が多いです。これは先発薬剤名をアリセプトといいます。一番最初に発売したエーザイは多分これでかなり儲けているはずです。
開発者は杉本八郎博士です。開発のきっかけはやはり博士の母親の認知症ですね……あんた誰? と実母から質問された博士は名前を名乗ると「まあ~私の息子も八郎っていうのよ~」 と言われて認知症薬の開発を決めたらしい。そしてこの薬の開発で種々の賞を受賞されています。表に出てこられず、エーザイの名前に隠れていますが報奨金で安楽に暮らしておられるといいなあと思っている。
杉本八郎 - Wikipedia
ja.wikipedia.org
話を戻します。
認知症だろうと家族に連れてこられた患者の処方で一番多いのは令和7年現在もなお、ドネペジルです。初回は3㎎から開始します。なぜなら、食欲不振や不眠、逆に興奮しやすくなる副作用が出る人が多いから。様子見で、大丈夫そうだったら5㎎、もっといけそうだったら10㎎になります。現在はドネペジル以外にもいろいろな認知症薬が出ていますが、どれも根治はしません。なので、こちらからも認知症を治すのではなく、進行を遅らせますとはっきり説明します。
この時の様子で、患者が家族に無理やりに受診させられたか、そうでないかわかります。
説明を受ける家族の様子で普段の仲の良さ悪さも丸わかりになります。個人的には、こいつに説明するだけ無駄ですと言い切ったお嫁さんが忘れられない……でも連れてこられるだけ、ついてくるだけ、マシな関係だともわかる。というのは、身寄りがなく行政関係(市区町村役場の福祉係など)に連れてこられる人もいるから。そういう人はかなり進行していることが多い。また、これから福祉施設に入ってもらうなど行政のお膳立てで先行きが決まっている。日本はそういう仕組みが整っている。( 話がそれるが移民が増えたらこの辺り行政はどうする気だろう…)
人生いろいろです。家族がいるからといっても、その家族がめちゃめちゃなケースもあります。それでもわたしは家族同席で受診ができるだけ良いと言い切る。
薬局に来た時点の患者さんの表情でがっかりしているのを隠さない。それでも心配そうな家族に囲まれて「ぼくもダメになっちゃった~」 といっているうちは幸せです。実は認知症の症状を笑い話にしているうちが花なんですよね……症状が進むと、他害が出る人もいます。モノを盗んだ、取られた、気に入らないから家族を殴る、糞尿で周囲を汚すなどするようになったら今までの関係も壊れます。他害が酷いと、どこの施設からも受け入れを断られるようになる。過去、そういった家族の方が自暴自棄になってわたしが勤務する薬局に来て今から親を殺して自分も死にますと宣言されたことがあります。応対したわたしは、時間をかけて愚痴を聞きます。その時出された処方内容も、かなり強めの安定剤が出ており、日中も眠ってもらうような感じでした。医師もわかってる。処方意図を説明し、ついでに住所から福祉関係の電話番号を割り出して今からでもいいから電話相談してと伝えました。なんとかなるものです。その人も降圧剤を毎月もらいに来てくれる人なので、後日談も聞いています。どういう人でも、受け入れしてくれるところはありますので、なんとかなります。介護で死なないでください。
子としての努めは果たしていても兄弟があれば介護をどうするかで揉めるし、お金がからむともっと揉めます。お金に関しては基本ノータッチだが、たいてい薬剤師にまで愚痴をいう人は兄弟が極悪人だと訴える。わたしは、傾聴するだけですが。
大昔は長生きできたら、それだけで尊敬されていましたが、今は違います。自分のしたいことがあるなら、後悔のないようにやっておいた方がいい。同時に家族に万一のことがあれば、こうしてほしいなど言っておいたほうがいいです。わたしも、子どもたちには、わたしに関しては無駄な延命処置だけはするなとは、言ってある。
終わります。




