40 その後の話2
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そんなある日、仕事をしていると突然お腹が痛くなり、踞った。
「リア!? 大丈夫か!? 産まれるのはもう少し先と聞いていたが」
ニールは流石三人の父、落ち着いてはいるが、私の踞る様子に違和感を覚えたようだ。
「ニール、何か違うわ。双子に何かあったのかも」
私は額に汗をかきながらニールに運ばれ、モーラ医務官のところへ向かった。
「ふむ。腹の中で魔力暴走を起こしているな。不味いかもしれん。ニール、子供達を全員呼んできてくれ」
ニールは急いで子供達を医務室に呼び寄せた。
「「「お母様、死なないで!」」」
子供達は泣きながら部屋に入ってきた。子供達も私のお腹の変化に気づいたみたい。
「ミレーユ、ライネル、マルクよく聞くのだ。幸いなことにお前達は光魔法を持っている。
全員で腹の子に治療魔法を掛けるのだ。だが、お前達はまだ魔力を上手く使いこなせていない。ニールが子供達の魔力の調整を。良いな?」
ニールが頷き、合図と共に子供たちは泣くのを止めて真剣な表情で光魔法を私のお腹に向けて流し始める。
三人の歪な魔力をニールが上手く纏め、お腹の子達を包んでいく。
暫くするとお腹の痛みが徐々に無くなり、ようやく安堵に包まれた。
「……リア、良かった。君が居なくなってしまったら僕は生きていけない」
ニールは泣き出しそうな顔をして抱きしめてくれた。モーラ医務官も安堵の表情を浮かべお腹の状態を確認している。
「リア、もう大丈夫なようだ。今日はここでしっかり休みなさい。それと、ニール、お前にも伝えておかねばな。
先程体内で魔力暴走が起こった。本来なら母子ともに助からん運命だったのは分かるな?
だが、家族が協力して腹の子とリア君を助ける事は出来た。出来たのは良いのだが、魔力暴走前と後で腹の子達の魔力の質が変わったようだ。どうなるか私も分からない。覚悟はしておいた方が良い」
モーラ医務官のその言葉に私はどうして良いか分からず涙が出る。ニールも動揺しているようだ。すると、話を聞いていたミレーユが
「お母様、私達は家族でしょう? 今だって家族みんなで乗り越えたじゃない。なんとかなるわ!」
ミレーユの言葉に感動してしまう。
「そうね。私達は家族だもの。なんとかなるわ」
「そうだな。ミレーユもライネルもマルクも私も居る。大丈夫だ」
そしてその日は大事をとって医務室で私は一晩明かす事になった。
魔力暴走も収まり、安堵していたが不思議な事に翌日から段々と私の魔力が足りなくなっている事に気付いた。
それはニールも気付いたようで『大丈夫か?』と私のお腹に手を当てる。すると、不思議な事にニールの魔力がお腹に吸い込まれているようだ。
「ニール、今、ニールの魔力を吸ったわ!?」
私もニールも驚いて目を見開いた。
「あぁ、魔力が枯渇しているのか? でも、リアから魔力は入っているはずだが」
モーラ医務官に診て貰う。
「こんな症状は今まで見た事がない。まぁ、リア君もニールも魔力は膨大なのだから欲しがるだけ与えれば良い」
そうしてモーラ医務官の助言通り出産までの間、ニールは魔力をお腹に流し、たまにミレーユも手伝ってくれた。
臨月になり、いつ生まれても良い状態で私は子供たちを連れて侯爵家へと里帰りをすることになった。
そうは言っても同じ王都内で近い距離に住んでいるためあまり里帰りという感じもないのだが。
里帰りをするに当たって家族には今の私の状況を伝えてある。
母は『待ってました!』とばかりに私を心配してお腹に魔力を流してくれる。『私がおばあちゃんよ?』と。
ニールのお義母様も毎日顔を出して(入り浸って)同じく魔力を入れてくれるの。
不思議だけど、モーラ医務官や他の人の魔力は弾いて受け付けないみたい。お腹の子供に与えられるのは近い家族だけの特権らしい。
お母様達は私達の魔力を必要としてくれているわ! と上機嫌になったのは言うまでもないわね。反対にニールはそんな母に不機嫌な様子だ。
「そういえば、ここ二、三日魔力を拒否されているのよね。そろそろなのかしら?」
母と話をしている間にギュッとお腹が痛み始めた。
「う、生まれそう。お母様っ」
ついに陣痛が始まった。母はニールに知らせを出し、私は産婆様と共に部屋へ入る。
……五時間後、ついに双子が産声と共にお腹から出てきた。
「おめでとうございます。元気な男の子と女の子です!」
産婆は赤ん坊を抱えて家族の待つ部屋へと入った。
そこで家族、いや、待っていた親戚一同が驚き目を見開いた。
二人とも、属性が無い。
それなのに漏れ出す魔力。家族達は大騒ぎだ。
産婆様は『とりあえず、母親の元に子供達を』と部屋に連れ戻ってきた。
私はぐったりしながらも子供達にお乳をあげている時にふと違和感に気づいた。
ん!?
あれ?
子供達がお乳を飲みながら治癒魔法で私を回復させている!?
これには産婆様も私も驚愕する。
もしかして、属性無しというのは全ての属性が使えるのかもしれない。
魔力量自体はミレーユより少ない感じはするけれど、こればかりはニールにしっかりと見てもらわなければ分からないわ。
後日、モーラ医務官にも診てもらったが、魔力暴走で枯渇した魔力を家族達から取り込み、属性が混ぜ合わさったのではないかと結論付けられた。
『ぷにぷにほっぺだ!』と双子に悪戯したマルクを蔦で縛り上げる赤ちゃんたち。色々と先が思いやられる。
普通の貴族であれば乳母に子育てを頼むのだけれど、我が家は魔力が多く、魔力の少ない乳母では育てられず侯爵家、公爵家を巻き込んで子育てに当たる事になってしまった。
大変申し訳ない。
けれど、お父様達は物凄く喜んでくれている。早く隠居して孫育てを楽しみたいと兄に溢しているのだとか。
ミレーユを始めとして子供達は本当にみんなから愛されているわ。
私は本当に幸せです。
【完】
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