39 その後の話1
「お母様! ライネルとマルクがまたお勉強をサボってるわ! 二人を引っ捕まえて叩きのめして!」
そう怒りながら部屋に入ってきた長女のミレーユ。
「あらあら、女の子が叩きのめすだなんて言葉は良くないわ。ライネルとマルクは何処へ行ったの?」
私はニールと目を細める。
「ライネルはモーラおじいちゃんの所でマルクはサイモンおじちゃんの所よ。いつもそうだもの」
あれから六年が経ち、私達は三人の子供に恵まれた。
不思議な事に三人とも光属性魔法持ちだったため、生まれてすぐに国の保護対象になった。
私が光属性に目覚めてからは毎年一人位の光持ちが産まれていたが、私が結婚して以降、二、三人が産まれるようになっている。やはり仮説は正しかったのかしら??
長女のミレーユは光属性のみだったが、将来的に魔力量は私を超えると思う。長男のライネルは今年で五歳。属性は光と風。どうやら風魔法の方が得意らしく、いつもマルクの悪戯に付き合っている。
姉に比べて魔法を上手く使えないといつもしょげていたのだが、モーラ医務官と出会い、悟りが開けたのかモーラ医務官に薬の知識を請いによく医務室へ出かけている。
モーラ医務官もライネルの事が可愛くて仕方がないらしい。『自身の全ての技術をライネルに教え込む!』と意気込んでいるわ。
四歳のマルクの属性は光と火を持って生まれた。ライネルと同様で光属性より火属性の方が強いようだ。
魔力量は豊富なのだが本人は騎士になりたいと隙あらばサイモン様の所へ出かけては剣術を教わっている。
サイモン様もマルクを気に入っているらしく『俺の弟子だ』と周囲の人に公言している。
たまにサボっているけれど、子供達三人とも普段はしっかりと魔導師師団長執務室の隣部屋で勉強をしている。
私の父やディルクお兄様が仕事ついでに子供達に会いに来てくれる。父に至ってはほぼ毎日かもしれない。
ニールのお父様も大臣なのでたまに孫達にこっそりおもちゃを買って部屋に置いていくの。
だが、両家の母達は『貴方達だけ毎日孫に会うのはずるいわ』と拗ねていて、長女のミレーユは気を利かせているのか、空気を読んだのか毎日練習といいながら『おばあちゃん、元気? 今日は弟達を締め上げたわ! だって勉強しないんだもん!』とメッセージを一言乗せて公爵家のお義母様と私の母に魔法で飛ばしている。
父達の良き緩衝材となっていて賢い娘だと感心してしまうわ。
因みに三姉弟とも護身術を習っているのだけれど、ミレーユが飛び抜けて強い。本人は私やニールのような魔導師を目指しているらしい。
私は六年経った今も相変わらずニールの補佐のままだ。
私自身王宮魔導師を希望すればすぐにでもなれるの。
けれどニールの補佐となっている理由はニールが離れたくないと駄々を捏ねるのと、私が居なくなると物理的に部屋が荒れる。(主に書類)一応、私の部屋は隣なのよ? 今は子供達の部屋となっているけれど。
そして最大の理由は私のお腹の中で二つの命がもうすぐこの世に誕生しようとしている。
ニールは心配で目が離せないと私が王宮魔導師になることを拒んでいるのよね。
国としては光属性持ちの子を産む私は保護対象でどんどん産んでもらいたいらしく、当分補佐のままでもいいのではないかと言われたの。




