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「おはよう御座います。ニール師団長、サウラン副団長」
「おはようリアちゃん。今日も可愛いね」
朝はメイジーに起こしてもらい、眠気眼で準備をした後、二人と合流し、私たちは宿を出た。
村を出てすぐに森になっているため魔物と遭遇し、戦う事もあるので装備を忘れずに持っていく。
湖までは徒歩で一時間程度の距離のようだ。私達は魔物から見えにくくなる魔道具を一応付けているおかげで襲われる事は少なくて済んでいる。それでもばったり会ったら戦闘になるんだけどね。
森に入った時よりも確実に魔物が増えている。これはスタンピード予兆かもしれない。どうやらニール師団長もサウラン副団長も危険だと判断したみたい。
村の人達が言っていた湖に到着し、二人とも険しい表情で魔物から見つからないよう慎重に周辺を調査している。
「やはりこの湖を中心に魔溜まりが発生しているようですね。次のスタンピードはここかもしれません」
「これはまずい。何とかしないと」
二人が今後の対応を話している中、私は割り込むように言葉を掛けた。
「ニール師団長、サウラン副団長。私、こんな事もあると思い、浄化の魔石を一つ持ってきました。私自身も浄化魔法の準備はバッチリです」
「それは助かる! やっぱりリアちゃんを連れてきて正解だった」
「サウラン、魔溜まりの影響で魔物が集まり始めている。魔物が生まれる前に浄化しておこう。私は上空へ飛び魔石を投げますからサウランはリアを守るんだ」
「もちろんだ。リアちゃん、僕が付いているからね」
「ありがとうございます」
私は浄化の魔石をニール師団長に渡すと彼はスッと空へ飛び上がった。周辺の状況を観察しているようだ。
「では浄化を行う」
私とサウラン団長は背丈の高い草の影に身を潜めている。魔道具を身につけているとはいえ、混乱し、暴れる魔物が向かってくるかもしれない。緊張しながらニール師団長の行動を見守る。
ニール師団長はそのまま湖に向かって浄化の魔石を投げると魔石の魔法が発動し、光の柱が立った。
その光と魔溜まりの消失に驚いた森の魔物が混乱し、魔物の唸り声や足音、魔物同士がぶつかり合う音が響いている。
私は咄嗟に結界を展開した。
サウラン副団長と二人を包む結界は逃げまどう魔物にぶつかられながらもしっかりと維持が出来ていた。
何頭か過ぎ去った時、こちらに気付いて攻撃しようとしてきた魔物がいた。
……アースドラゴンだ。
土色の体で硬い鱗に覆われたアースドラゴンはトカゲに似ていて、体が大きく、尻尾や噛みつき攻撃をし、中ランク程度の強さだ。
アースドラゴンは尻尾で結界を叩き割るつもりのようだ。
ドラゴンの攻撃を受け続けるのは私の結界をもってしても難しい。それほど尻尾の威力は高い。
「サウラン副団長、アースドラゴンはこの結界を叩き割るつもりです。後、三回叩き付けられたら結界は消滅します」
「分かった。二回叩き付けたら結界を解いて後ろへ下がって」
「了解です」
1回目、
2回目。
「解きます!」
大声で叫び、後ろへ下がる。
サウラン副団長は左方向へ移動し、ドラゴンの尻尾の攻撃を避ける。私は『アイスショット』を何度も唱える。少しでもドラゴンの足止めをするために顔や足に打ち込む。サウラン副団長は凍った箇所を避け、器用に皮膚を切り裂いていく。
しかし、アースドラゴンはやはりドラゴン、中ランクとはいえ一回の斬撃で深い傷を負わせる事は出来ないらしい。
私は傷口に向かって浄化弾を放つ。何度か傷口に浄化弾が当たるうちにドラゴンの動きがようやく鈍くなってくる。
「リアちゃん、グッジョブ!!」
サウラン副団長が高く飛び上がると剣に水の膜が張られる。心臓を貫くように胴体の中心部に剣を刺した。同時に空中から『ウイングカッター』が放たれドラゴンの首が切り落とされた。
凄い!
サウラン副団長ってやっぱり副団長というだけあって強かったんですね。
ニール師団長も一回でドラゴンの首を切り落とすなんて。感動したわ。
「リアちゃん、怪我は無かった? ニールめ、いいとこ取りを」
フワリと地上に降りてきたニール師団長はドラゴンをうっとりと見つめているが、すぐさま周りを見渡し状況を判断する。
「リア、湖周辺からこの辺まで浄化を掛けて下さい」
「分かりました」
私はサウラン副団長とニール師団長に守ってもらいながら湖近くから少しずつ移動し、土地の浄化を行った。
「ニール師団長、これくらいで大丈夫ですか?」




