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田んぼで拾った女騎士、田舎で俺の嫁だと思われている  作者: 錬金王
一章

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24/89

洋風夕食


「そろそろ夕食でも作るか」


「私も手伝おう」


 スーパーから帰宅して適度に休憩したら、夕食を作ることにした。


 リビングから台所に移動すると、セラムもついてくる。


 料理が不慣れな女騎士であるが、用意をする時は毎度手伝ってくれるので助かる。


「まずはトマトを洗ってくれ」


「わかった」


 今朝、収穫したトマトを手渡すと、セラムがシンクの中で丁寧に洗ってくれる。


 その間に俺は冷蔵庫から料理に必要な食材を出したり、フライパンなどの調理器具の用意をする。


「洗い終わったぞ」


「じゃあ、俺がヘタを取っていくからこんな風にざく切りにしてくれ」


 トマトのヘタを包丁の切っ先でくりぬいて横半分に切る。


 それから切り口を下にして、二センチ幅くらいで縦と横に切る。


 実演すると、セラムはおそるおそるトマトをざく切りにし始めた。


「剣の扱いはあれだけ達者なのに包丁の扱いは不器用なんだな」


 剣で竹を斬った光景がすごかっただけでに、包丁を握ってトマト相手に四苦八苦しているセラムが残念でならない。今のセラムは間違いなく、せらむだ。


「うっ、包丁は握ったことがないのだ。短剣を使わせてもらえれば、もう少し手際よく捌ける気がするのだが……」


「そんな物騒なもの家に置けるか」


 誰かに見つかった時どうやって言い訳するというんだ。


 腰に引っ提げている剣だけでいっぱいいっぱいだというのに、これ以上物騒なものは増やさせないでほしい。


 トマトの下処理をセラムに任せると、にんにくを薄切りにし、タマネギを千切りとみじん切りにしておく。


 そういった食材の下ごしらえをしていると、セラムがトマトをざく切りにできたので耐熱容器に入れて電子レンジで五分ほど加熱。


「じゃあ、これを潰してくれ」


「大切に育てたトマトを潰してしまうのか?」


 マッシャーを渡しながら言うと、セラムがショックを受けたような顔になる。


 収穫した野菜に愛着を持ってくれるのはいいことだが、変な愛情は抱かないでほしい。


「美味しく食べるためだからな」


「ああ、すまない。お前たち……」


 きっぱりと言うと、セラムはもの悲しそうな顔をしながらマッシャーでトマトを潰していく。


 その間に俺は鶏モモ肉を食べやすい大きさにカット。塩、胡椒を振って下味をつける。


 熱したフライパンの上に薄切りにしたニンニクとタマネギを入れた。


 ある程度炒められた別皿に移し、鶏モモ肉をフライパンで焼く。


 鶏モモ肉の両面が炒められたら、鍋に入れてタマネギとセラムが潰してくれたトマトを投入。水、ケチャップ、コンソメキューブ、はちみつ、白ワインなどを入れた。


「あとは弱火でじっくり煮込んだら鶏のトマト煮は完成だな」


「おお、トマトの香りと鶏肉の香ばしさがあってもう美味しそうだ!」


 セラムが辛抱堪らなさそうな顔をするが、まだ出来上がるには時間がかかる。


「次はトマトのファルシを作るぞ」


「ファルシとは?」


「トマトの詰め物のことだ」


「おお」


 手早く一品が作れたので、次はトマトのファルシに取り掛かることにする。


「トマトのヘタを取ると、底を少しだけ切り落とす。さらにヘタ側の上部を一センチほど切り落とすと、スプーンで中身をくり抜く」


 説明しながら実演すると、セラムも真似をしてトマトの器を作っていく。


 繊細な包丁さばきのいらないものは割と手際がいいな。


 トマトの器ができると、ボウルに小麦粉を入れ、くり抜き部分やヘタ部分を刻んだトマトを入れる。さらに合い挽き肉、炒めたタマネギ、塩、胡椒を入れてやる。


「よし、これを手で混ぜてくれ」


「手で? いいのか!?」


「構わん。やってしまえ」


 そう言うと、セラムがボウルに手を突っ込んで肉ダネを混ぜ始めた。


「冷たくてムニュムニュする」


 慣れない感覚にビビりっぱなしのセラムだが、きちんと粘り気が出るまで混ぜてくれた。


 肉ダネができると、オーブンの天板にクッキングシートを敷き、トマトの器と蓋を並べる。


「ここに混ぜた肉ダネを四分の一くらい入れてくれ」


「わかった」


 セラムにスプーンで肉ダネを詰めてもらうと、そのままオーブンで加熱。


 トマト煮を煮込みながら、十五分ほど経過すると一度オーブンから取り出す。


「完成か!?」


「いや、まだだ。ここからさらにチーズを盛り付けて加熱する」


「ここからチーズで追い打ちだと!? そんな絶対に美味しいではないか!」


 セラムが驚愕する中、加熱された肉の上にパラパラとチーズを載せると、再びオーブンで十分ほど加熱させる。


 トマト煮の方はセラムがかき混ぜて面倒を見てくれているので、ファルシが出来上がるまでにトマトの玉子炒め、マリネなんかを作っておく。


 そうやって暇つぶしがてらにおかずを作っていると、オーブンがチンッと音を立てた。


 オーブンを開けると、ぐつぐつと音を立てたトマトのファルシが出てきた。


 濃厚なチーズな香りが台所に充満する。


 それと同時にトマト煮の方もとろみが出てきて十分に煮込まれた。


 それぞれのおかずを食器に盛り付けると、俺とセラムはいそいそと食卓へ移動した。


 テーブルには鶏のトマト煮、トマトのファルシ、トマトの玉子炒め、トマトのマリネとトマト尽くしだ。


「……こうやって眺めると、結構な量を作ってしまったな」


 つい暇を持て余したせいで、調子に乗って作りすぎてしまった。ちゃんと食べきれるのだろうか?


「大丈夫だ! ジン殿が食べられなくても、私が全部食べる!」


 すっかりと腹ペコな女騎士は食卓に並べられた料理を見て、鼻息を荒くしながら言った。


 今日は収穫作業と納品で忙しかったために昼食はかなり少なめだった。


 そのせいでいつもよりお腹が空いているらしい。


 とはいえ、それは俺も同じ気持ちだ。だから、食欲が暴走して作りすぎてしまったのだろうな。


「今日の主食はご飯の代わりにパンだ」


「おお! いい匂いだ!」


 手を合わせると、セラムは早速とパンに手を伸ばした。


 温められたパンを手で千切ると、その柔らかさに驚愕し、それからゆっくりと口に含んだ。


「どうだ? こっちの世界のパンは口に合うか?」


「パンがとてもふわふわだ! こんなに柔らかく、小麦の風味が豊かなものは初めてだ! きっと、王侯貴族でもこのようなパンは食べたことがないだろう」


 興奮した様子でセラムが感想を漏らす。


 どうやら大変満足できる味だったらしい。


 スーパーやコンビニでも売っているどこにでもあるパンという事実が申し訳なくなる。


 もうちょっとしっかりとしたパン屋に連れて行ってあげた方がよかっただろうか? まあ、今は普通のパンで満足しているようなので、そちらはおいおいでいいだろう。


「さて、パンを味わうのは程々にしておいて鶏のトマト煮を食べさせてもらおう」


 しばらくパンを食べていたセラムが、トマト煮をスプーンですくって口に運んだ。


「美味い! トマトの甘みと酸味が鶏肉やタマネギといった他の具材に染み込んでいるな!」


「ああ、コクもちゃんと出ていて美味しいな」


 トマトの成分のお陰で鶏モモ肉がかなり柔らかくなっている。噛むと肉汁と共にトマトの酸味と甘みを一気に吐き出してくれる。タマネギもシャキシャキとした食感を残しながらも柔らかくて甘い。


 バターロールと一緒に食べると、これまた合う。


 今回の献立はかなり洋風なためにさすがにご飯との相性は悪い。思い切って主食をパンにして正解だったな。


 主食は米派なのだが、たまにはパンを主食にした献立も悪くはない。


 トマト煮を味わうと、次はトマトのファルシに手をつける。


 ナイフで半分に切ると、中から肉汁やトマトの汁の一気に漏れ出た。


 食べやすい大きさに切り分けて口に運ぶ。


 オーブンで加熱されたトマトは旨みを増しており、ひときわトマトの存在感を肥大化させていた。


 タマネギの混ざった肉との相性も非常に良く、そこに濃厚なチーズが絡みついてくるときた。


 これで美味しくないはずがない。


 口にした俺とセラムは思わず無言になってしまうほどだった。


 箸休めとしてトマトのマリネを食べて、口の中をさっぱりさせると、安定の美味しさを誇る玉子炒め食べてほっこりとする。


 そんな風に食べ進めていると、俺はあっという間にお腹が満杯になった。


 しかし、セラムは食欲を衰えさせることなく食べ進めていた。


 あの細い身体のどこに収まっているのやら。


 なんて不思議に思いながら食べっぷりのいいセラムの様子を俺は眺めた。


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