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Nostalgia world online  作者: naginagi
第二章
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こんな生活も悪くない

 一通り王都周辺の事を調べてみたところ、北西と北東に火山と雪山があることは正しかった。

 しかし、肝心の耐熱耐寒素材についての情報は見つからなかった。

 だが、火山と雪山に挟まれた北の山間でとても美味しい卵を産み落とす大きな鶏型のモンスターがいるらしいという記述があった。

 更にその鶏は不死なのか、倒してもすぐに復活してしまうとのことだ。

 そして警戒心が高いためか、誰かが近寄ろうとするとその卵を割ってしまうという。

 そのためその鶏の卵は希少品とされているとのことだ。


 その記述を読んだ私は、是非ともその卵を食べたいと思うが、どうせ食べるのならばスイーツの材料にした方がいいのではと思い至ったわけだ。

 実際のところ私は耐熱耐寒素材となる物は持っていないし、少し生活基盤を整えたいという事もある。

 サイとリアという二人を雇った以上、そういったライフラインを整えるいい機会だと思う。

 それに二人がいるおかげで簡単な農作業などはしてもらえるので、私は他の事に手を回せるということだ。

 しかもサイは【促進】スキルまで持っていたので、私が植えたばかりの苗に【成長促進】を掛ける必要がなくなっていた。

 というかサイって農業関係が欲しいプレイヤーにとって結構当たりなんじゃ…?

 リアは…うん、まだ九歳で小さいから仕方ないよね。これから頑張ろうね。


 とまぁ、私はそういう感じで色々調べる物があったんだけど、リンとアルトさんの二人は私に付いてきてばかりで本当に調べてるのだろうか…?


 そんなこんなで調べているとすっかり日も暮れてしまったため、今日の調べ事はこれぐらいにするとしよう。

 しかし一つ疑問に思ったのは、私たちがこの世界の文字を読めているということだ。

 運営がそのように設定したのならわかるが、普通ならば解読するようなスキルが必要になるはずだ。

 ということで受け付けのお姉さんに聞いてみた。


「そうですね、【解読】スキルが必要になるようなものは古代の物や宝の地図といった古い物を調べる上で必要となります。この図書館にもそういった古い書物が保管されていますが、持ち出し厳禁となっているため、業務員と一緒でなら閲覧が可能という形になっています」


 ほえー…。そういう感じなのね。

 となると、ダンジョンとかトレジャーハントしているとそういうスキルも必要というわけだね。

 まぁ私はトレジャーハントはしないと思うけど。

 てか何で二人はそんなに驚いてるの。

 普通に疑問に思う所だよね? こういうところは。

 それともこれがゲーム慣れしてしまった人たちとの違いなのかな…?


 その後二人と別れた後家に戻ると、サイとリアの二人が既に家に戻っていた。


「お帰りなさいませご主人様」

「お帰り」

「ただいま、二人とも。じゃあご飯の準備するね」

「はーい」


 私は台所へ行き、アイテムボックスから羊の肉と魚を取り出す。

 こうなると野菜も欲しくなるから早いところサイに植えてもらうとしよう。

 あっ、そういえば二人にお願いしないといけないことがあった。


「ねぇ二人ともちょっといい?」

「どうした?」

「何ですか?」

「二人はネウラはもう大丈夫だと思うけど、レヴィはどうかな? あの子も仲間だから一緒にご飯食べさせたいんだけど…」


 私がレヴィの名を出すと、二人は顔を歪めてしまう。

 とはいえ、ここでレヴィを除け者にしてしまうのは可哀想だ。

 どうにか説得できればいいんだけど…。

 するとサイが口を開いた。


「べっ別に危害加えないって言うし…俺は大丈夫…」

「リアも大丈夫です! …でも…ネウラちゃんみたいにいい子ですよね…?」

「そこは大丈夫だよ。もし悪い事したら私が叱ってあげるからね。でも二人が悪い事したらちゃんと二人の事も叱るからね?」

「子供じゃねえんだからそんなことしねえって…」


 むしろ大人の方が悪い事をする気が…。

 とまぁ、許可は得たのでレヴィとネウラを出してあげる。


「キュゥ!」

「ぁぅ―!」

「レヴィ、ネウラ、改めて二人によろしくって挨拶しようね」

「キュゥゥ!」

「ぁー!」

「よっよろしく…」

「よろしくお願いしますっ!」


 うんうん、千里の道も一歩からってことでゆっくりだけど仲良くなってほしいな。

 さてと調理を進めないと。

 人数が多くなったからその分作業も増えたからね。


 調味料がまだ塩しかないためそこまで凝った味付けはできなかったが、二人は私が作った食事に感激していた。

 リアに至っては涙を流すほどであったため、私たちの方が慌ててしまった。

 そこで話を明るくするため、今日の近況を二人に報告してもらった。


 話を聞く限り、私の紹介というのもあってリアはそこまで厳しくはされなかったが、懇切丁寧に調合の方法を教えてもらって実践していたということだ。

 おかげで傷薬はもう作れるようになったという。

 ということは明日からはポーション作りに移るかもしれないから、ルカにまた空き瓶の補充をお願いしようかな。

 レッドポーションの素材もまだあるし、ご飯食べた後にルカに連絡してから作っておこう。



「アリス、来たよ」

「えっと…私の時間感覚が正しければまだ十分ぐらいしか経ってないと思うんだけど…?」

「アリスに呼ばれたら秒速150kmで来る」

「ルカは雷か何かなのかな?」

「まぁ冗談は置いといて、空き瓶持ってきたよ」


 ホントに冗談なのかな…?

 ルカってあんまり表情豊かじゃない方だから意外に分かりづらいんだよね。

 特に無表情で冗談を言われると本当なのかわからなくなる…。


「ところでその子たち誰?」

「今日雇用したお手伝いさんだよ」

「どうも…」

「こっこんばんわっ!」


 ルカは二人をじーっと見つめてその周りを回る。

 二人は咄嗟にお互いに抱き着いて肩を震わせる。


「二人とも可愛い。私妹とか弟が欲しかった」

「確かに二人とも可愛いけどさ…誘拐しないでね?」

「善処する」


 いや、そこはしないって断言してよ怖いじゃんか。

 ほら二人も誘拐されるかもって更に震えてるじゃん。可哀想に。


「それでルカ、空き瓶ホントにもう持ってきたの?」

「うん。時間あったから一杯できた」

「一杯って…。ちなみに何個今できてるの…?」

「素材集めの方が今時間掛かってるから、大体二千個ぐらい溜まった」


 おかしい、桁を間違えているんじゃないかと思うぐらい作ってるよこの子。

 何故そんなオーバーワークみたいな感じで生産してるんだろうか…。

 ともかく、先程完成したレッドポーションを十個渡して空き瓶を二百個受け取った。

 これをリアに渡してあげる。

 あとは薬草の数が足りないようならばログアウトする前に少し回収してこようかな?

 そこも含めてリアに残りの薬草数を確認しないと。


 リアに薬草の残りを確認してルカが帰った後、私は薬草の数が少し心許ないと感じたので二人を留守番させて少し西の森で薬草採取をしに向かった。

 夜なので門は閉じているのだけれども、もう完全に顔パスになったのか私の顔を見るなり周囲を確認して門を開けてくれる。

 しかし今回は少しだけ外に出るだけなのでその事を伝えてから街を出た。


 大体一時間ぐらいかな?

 それぐらいの時間森に入って薬草採取を行い街へ戻った。

 元々一、二時間出るとは言っていたので、憲兵の人たちもちゃんと見ていてくれていたためすぐさま街の中に入る事ができた。

 憲兵の皆さん、いつもありがとうございます。そしてお疲れ様です。


 家に戻るとリアはもうおねむなのか、少しうとうとしながら私の帰りを待っていてくれた。

 これ以上起こしているのも悪いので、リアを抱えてベッドに移動する。

 サイはどこかなと見渡すと、端っこの方に私が用意していた毛布を掛けてうずくまっていた。


「サイ、そんなところにいないでベッドで寝ようよ」

「俺はいい…」


 そうはいっても私が納得できないので、リアをベッドの壁際に横にしてからサイの方へ向かう。

 そして毛布ごとサイを抱きかかえてベッドへ運ぶ。

 さすがにサイも暴れると危ないという事はわかるので、一応大人しくしている。

 ベッドへ着いたのでサイをリアの横に降ろす。

 私はログアウトすると消えるはずなので一番端っこだ。


「ほらー騒ぐとリア起こしちゃうぞー」

「ご主人様卑怯だぞ…」

「ちゃんとベッドで寝ないサイが悪いんだよ?」

「ぐぬぬ…」

「それに私がいない時は二人っきりになるんだから、ちゃんとリアの側で寝てあげないとダメだよ?」

「それはわかってる…」


 恥ずかしがってリアの方を向いているサイを後ろから軽く抱きしめてあげる。

 サイはびくっと反応するが、ゆっくりと頭を撫でてあげる。

 しばらく撫でていると落ち着いたのか、小さく吐息が聞こえる。

 どうやら二人とも寝たようだ。


「じゃあ二人とも、明日もよろしくね」


 私は二人を起こさないようにベッドから降りてログアウトした。


次で遂に百話!

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