探し物はどこですか?
現在GT12:04。
おうっ! もう待ち合わせ時間過ぎてるっ!
私は急いでポータルに乗ってレヒトに移動する。
レヒトに到着した私は周りを見渡して二人を探す。
「誰でしょ~?」
「あぅっ!?」
私がキョロキョロしながら二人を探していると、後ろから誰かに抱き着かれた。
えっとこの柔らかさは…。
「リン…?」
「あら、よくわかったわね~」
まぁ直に触れたこともあるモノだったし、声の感じで大体わかるけどね。
リンが私を離すと、その後ろにアルトさんもいた。
「こんばんわアリスさん」
「アルトさんこんばんわです。でもこっちでは昼ですから変な感じですね」
「でも実際には夜ですしこんばんわで私はいいと思っていますよ」
「それにしてもアリスが時間に遅れるなんて珍しいわね~。何かあったの~?」
んー…家の事は皆にはまだ内緒だから適当な言い訳を…。
まぁルカとリーネさんにはばれてしまったが、他の人にはばれないようにしないと…。
「ちょっとお風呂でのんびりしてたら時間が過ぎちゃってて…」
「そういえば最近アリスとお風呂入ってないわね~…。今度一緒に入りましょうよ~」
「アリスさんとそんな羨ましい事を…」
「一緒にって…それ子供の頃だよね…?」
リンが変な事言うからアルトさんが誤解したじゃないっ!
アルトさんも手をわなわなと動かさないのっ!
「変な話をしてないで早く図書館行くよっ!」
「ふふっ、そうね~」
「んんっ! そっそうですね、時間も時間ですしね」
はぁ…なんか一気に疲れた気がする…。
「えっとここでいいんだよね?」
「リンさん、ここでいいんですか?」
「そうよ~。ここがオルディネ王国の国立図書館よ」
王都にあるということと国立図書館というだけあって、結構大きいように見える。
建築の雰囲気としてはヨーロッパにあるような歴史ある建物という感じだ。
「さて入りましょうか~」
「そっそうだねっ!」
私たちは図書館の中に入ると受付の人に声を掛けられた。
「ようこそ。異邦人の方ですね」
「あれ? 私たち異邦人なんて言ったっけ?」
「入口に入る時に異邦人の場合はわかるような仕組みがあります。詳しくはわかりませんが、この建物が建てられた当初にそういう仕組みにしていたようです」
これも運営がそういう風に設定したんだろう。
でも私たちがプレイヤーだってわかる必要あるのかな?
「皆様、図書館のご利用は初めてですか?」
「まぁ初めてです…」
「ではご登録をしていただきたいのでこちらにお願いします」
そう言うと受付の女性の一人が席を立ち、私たちを個室へと案内する。
案内された部屋は何組かが座れるように机と椅子が何セットか置いてある広めの部屋だった。
私たちは言われた通りに席に座ると受付の女性に紙を渡される。
「今お渡しした紙には図書館を利用する上での注意点などが書かれております。入会金に500Gが掛かりますが会員の年会費は無料となっており、貸し出しやその期間、そして貸し出した本の紛失等の場合の支払い金額も記載されております」
私はその書かれている内容を読む。
簡単にまとめると以下のようになっていた。
①:図書館は会員になることで利用することができる。
②:図書館では静かにすること。
③:本は綺麗に使うこと。
④:入会金として500G支払う。
⑤:年会費は無料。
⑥:貸し出しは一冊100Gで、貸し出し期間は二十一日間。
⑦:本を紛失した等の場合には損害賠償として一冊10000G支払う。
⑧:資料を書き写したい場合は一度受付に告げる。
⑨:登録カードを紛失した場合は再発行のために1000G支払う。
「ちなみに異邦人の方は登録していただければ、どこの国の図書館でも利用する事が出来ます」
「この国だけじゃなくて?」
「はい。図書館の登録カードに関しては各国共通となっていまして、普通は登録カードと身分証となる物が必要なのですが、異邦人の方の場合は登録カードだけで済みます」
「どうやってそれを判断するのかしら~?」
「そのために入り口の仕掛けがあります。あれに反応した方には通常とは別の登録カードを渡すことになっていまして、それで異邦人かどうかがわかります」
つまり、男は青で女は赤みたいな感じで、見ただけで判断出来る様な仕組みになってるわけだね。
まぁ確かに私たちには身分証なんてないからね…。
「じゃあ登録お願いします」
「私もお願いします」
「私も大丈夫だからお願いね~」
「かしこまりました」
私たちは500Gを実体化して受付の女性に渡すと、女性は胸の内ポケットに手を伸ばしてカードを三枚取り出す。
「ではこちらのカードの裏にそれぞれ登録者名の記載をお願いします」
見たところ特に変わったところは見られない普通のカードだった。
とりあえず名前を記載っと。
カードの裏に名前を記載すると、一瞬カードが強く光り出す。
すると表に私の顔が写った。
顔が写ったってことは、これが身分証にもなるってことで一枚で済むというのはこういうことなのか。
でも顔が写ったカードをゲームでも持つのはなんか気が引けるなぁ…。
「これで登録は完了しました」
「じゃあこれで図書館の中を見て歩っていいわけね~?」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
さてと、ではまず何から調べようかな。
そういえば二人は何を調べるんだろ?
ちらっと二人を見るが、自由行動をする雰囲気は見られない。
「二人ともどうしたの? 調べたい物あるんだよね?」
「えっ! そっそうね~…何から調べようかしら~…」
「わっ私も何から調べようか悩んでましてー…」
「ん? そうなの?」
二人の事だから調べる順番とか決めてると思ったんだけどなぁ?
まぁいっか。とりあえず調和の森から調べようかな。載ってるといいなぁ…。
ということで、まずは地理や土地関係を調べるためにそれらの種類の本がある場所に移動する。
地理や土地と言っても、その土地柄についての本やその土地の歴史についての本もあったりするので、中々お目当ての本が見つからない。
リンとアルトさんもチラチラとこっちを見ながら本を手に取っている。
二人とも何を探しているんだろう…?
すると近くで女の子と大人が喋っている声が聞こえた。
「おかーさん、『ろくでなしの従者』ってどこにあるのー?」
「図書館ではしーっでしょ?」
「ごめんなさい…」
「まったく…。英雄譚や童話はあっちだから行きましょ。それにしても本当に英雄譚とか好きなのね」
「だってえいゆーってかっこいいんだもん! あたしもそんなえいゆーと会ってみたいの!」
「そうねー、出会えるといいわね」
「うんっ!」
おやおや、子連れの親子まで図書館に来てるんだね。
てか童話はあっちなんだ。後でチェックしておこう。
っと、それより調和の森調和の森…。
何冊かタイトルと目次をみていると、ようやく調和の森と書かれた目次がある本を見つけた。
「それがアリスが探してた物~?」
「そうだよー」
そう言って私は本の内容を見る。
書かれている内容としては、ヒストリアから南に進んだ先にある森に入ると急に霧に包まれ始めたという。
そしてそのまま進もうとすると気分が悪くなって進めなくなったということだ。
しかしそこで無理矢理進んだところ、声が聞こえたところで倒れてしまった。
気が付いた時には霧の外にいたという。
そして覚えていたのは声が調和の森と言っていたことだけであった。
その後調査隊と向かったが、誰もその森に入れずに拒むように戻されてしまったという。
そして新たに分かった事は、その森に入るためには資格が必要ということだけであった。
とはいえ、何があるかわからないため立ち入りは制限されているということだ。
んー…。
やっぱり資格が何かはわからないかぁ…。
どうにか手がかりがわからないかなぁ…。
他にも調和の森と書かれた内容はあったが、どれも似たような内容で特に情報は得られなかった。
仕方がないので他の情報も集めるため、他の本を手に取って調べることにした。
さて二人は何を探しにきたのでしょうかねぇ。




