王都目前
すいませんちょっと短めです…。
古都ヒストリアから出発し早一日が経過した。
私たちが今通っている道は、どうやらモンスターはほとんどは出現しないそうだ。
とはいえ、絶対に出現しないというわけではないので警戒は必要だ。
しかし到着まで二日―およそ十六時間だが、何もせずずっとログインしっぱなしというのも苦痛と感じる人もいるので、そこは交代で休憩のためのログアウトをしている。
もちろんそれは私にも当てはまり、私も暇なのでレヴィとネウラを出して日向ぼっこをしている。
「ぁぅ―!」
「いい天気だねー」
「キュゥ!」
ネウラも【成長】スキルのレベルが順調に上がっているため、気持ち少し体型が大きくなっている気がする。
あんまり大きくなるとネウラも定位置変えないといけなくなるね。
でも大体アルラウネって一般女性ぐらいの大きさって聞くし、そう考えると一緒に移動するって感じになるのかな?
レヴィみたいに特殊スキルで身体を小さくできれば別なんだけどね。
「お二人ともペット持っていて羨ましいです…」
一人ペットを持っていないアルトさんは羨ましそうにペットと戯れている私たちを見ている。
リンもペットであるサンダーバードのニルスを肩に乗せて頭を撫でている。
その様子を見たレヴィがアルトさんの元へ向かう。
私のもう一人のペットのネウラは…まぁお休みモードで、私の膝の上に乗ってくてーっと寄りかかっている。
「アルトさん、レヴィもアルトさんとふれ合いたいそうですよ」
「本当ですか!」
「キュゥ!」
まぁこれでアルトさんの落ち込み具合も直るだろう。
ふと空を見上げると、どんよりとした雲が広がってこちらに流れているのが見えた。
「一雨来るかもな…。濡れちゃまずいもんは仕舞っといたほうがいいぞ!」
誰が言ったかわからないが、雨が降って移動速度が落ちるのは勘弁願いたい。
ということで、私はスキルを入れ替えて雨に備える。
予想通りというか、やはりというか、どんよりとした雲が上に来たぐらいに雨が降り始めた。
なので私は【童歌】スキルを使って歌う。
「『てるてる坊主♪てる坊主ー♪あーした天気にしておくれー♪いーつーかの夢の空のよにー♪晴ーれーたーらー金の鈴あーげーよー♪』」
私が歌うと次第に雨が止んでいき、しばらくすると雲も通り過ぎて行った。
んー…以前は全部歌ったから完全に晴れたけど、今回は一番の歌詞だけだから雲は消えなかったってところかな?
「いきなり歌い始めるからびっくりしましたよアリスさん」
「咄嗟に耳塞いじゃったじゃないの~。歌うなら一言言ってよ~」
「あっ…ごめんなさい…」
「別に怒っているわけでは…それより今のがアリスさんの【童歌】スキルなんですね」
「もしかして雨が止んだのもアリスが歌ったから~?」
「そうだよー」
私がそう言うと、二人はヒソヒソ話をし始めた。
「あの…天候まで操作できるって結構やばいと思うんですけど…」
「あの子ホントに天然でやらかすから今に始まったことじゃないわよ~…」
「森で暗くされた上に雨とかまで降らされたらもう詰みですよ…?」
「本人がそのやばさを分かってないんだからどうしようもないのよ~…」
「歌で回避不能のデバフや地形効果に一撃必殺スキル…恐れられた理由がなんとなくわかりましたよ…」
二人は依然ボソボソと話し合っている。
「まったく、二人だけで話して仲間外れにするなんてひどいと思わない? ねぇ、ネウラ」
「ぁぅ―?」
丁度起きたネウラに向かって愚痴を言うが、ネウラは何の事だか全くわからないで首を傾げる。
まぁわからないよね…。
そして今頃気づいたのだが、今まで両側に森が続いたがいつの間にか片側は見晴らしがいい草原に出ていたようだ。
となると、このまだ森が続いている方がリンの言っていた大回りの道側ってことだね。
その内そっち側の街にも行ってみたいなぁ。
そういえばハチミツも作ってないから作り方とかも調べとかないと…。
やる事が一杯だ…。
「そういえば王都の周辺ってどうなってるの?」
「えーっと~…確か北西と北東それぞれに火山と雪山があるって聞いたわ~」
「つまり属性素材がついに取れそうですね」
あれ? 属性武器が作れるってことは…。
「アルトさん…それじゃあ技を教えた時に貰った五十万も…」
「あっそれは別ですので大丈夫です」
「デスヨネー…」
まぁ無理でした…。
でも火山に雪山ってことは耐熱に耐寒素材も必要になってくるんだよね?
以前毛皮系が耐寒に使えるかもっていう話があったけど、それだったら防具に耐寒っていう項目が出ると思うから、たぶんまだ弱いんだよね。
となると、各環境用の素材を見つけないといけないってことだよね?
まぁ私は当分そっちには挑むつもりはないからいいけどね。
そういえばレヴィって【環境適応】のスキル持ってた気がするんだけど…。
つまりそういう系の効果を持ったのを探せと?
いや無理でしょ。
巨大化レヴィの鱗を分けてもらって素材にしたらもしかしたらいけるかもしれないけど、そんなのが手に入ったとか知られたら絶対騒ぎになるからやりたくない。
ということで自力で探しましょうってことだよね…。
皆頑張るのだー。
「おっ! あれ王都じゃねえのか?」
誰かがそう口ずさむと、私たちは馬車から顔を出してその方角を見る。
まだぼんやりとしか見えないが、大きなお城みたいな建物がちょこんと見えた。
まだ一日半ぐらいだし、この調子なら夕方には到着できそうだね。
さすがに夕方には奴隷雇用のところもやってないだろうし、朝になったら出直そう。
あとはポータル登録して家に戻って畑にお水やって…あとは…。
「アリスさん、アリスさん」
「はっはいっ!」
「王都に着いたらまずどうしますか? 図書館行くんですよね?」
「えっと…多分夕方ぐらいに着いたら閉まってると思うで、次の日にしたほうがいいと思います」
「そうですか…。でも必ず行きましょうね!」
「もちろん私も行くわよ~。それよりこの距離であれだけ見えるんだから結構大きそうね~」
「そうだね。全部回るのにどれぐらい掛かるんだろう…」
迷子になったら出てこれなくなりそうで怖い…。
とはいえ、サービス開始からおよそ二ヶ月経ってやっと王都に到着だ。
運営さんとしてはどれぐらいの月日で辿り着くことを想定してたんだろう。ちょっと気になる。
でも私は探索より先に色々やることがあるので、運営さんの意図したような動きはしないので、迷惑掛けたらごめんなさい。
先に言っておけばきっと許してくれるはず!
それに時期的にまたイベントが開始されそうだし、それも楽しみだなー。
久々に【童歌】スキル使った気がする…。




