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Nostalgia world online  作者: naginagi
第二章
84/370

VSレイクトレント

「さてと、どんな大型モンスターが出てくることやら」


 ショーゴが移動中にぼそっと言うが、他の人も気になっているようだ。

 陣形は崩さないが、サイクロプスなどの巨人などやそれともドラゴンかなどの憶測が飛びまわる。

 しかし、団長さんが咳払い一つすると途端に皆口を閉ざす。


「うへぇ…銀翼は相変わらずの規律だなぁ…」

「ショーゴがだらしないだけ」


 とりあえず事の原因を起こしたショーゴの横っ腹を小突く。

 皆レイド戦で緊張したりしているんだから、そういうことは言わないの。


 しばらくして一時間半地点に到着し、各PT最終的な打ち合わせに入る。


「まぁ何が来るにしても、俺たちは基本的には四人が前衛でレオーネが後衛、クルルが後衛でサポートと回復だ」

「任せて~」

「頑張ります!」

「とりあえずアリスは突っ込むなよ」

「なんで私だけ…」

「ソロプレイが長いからな。そこら辺は他のと歩幅合わせないとヘイト管理がうまくいかなくなる。だからある程度気を使え」

「そっか、人数多いからヘイト管理とかもあるんだ」


 普段は一人で戦っているため忘れがちだが、盾持ちが敵のヘイトを稼いで他の人が攻撃をするのが基本的な流れだ。


「じゃあガウルの役目って大事なんだね」

「今更か…。まぁそうだな」

「私としてはシュウが突っ込むもんだと思ってた」

「そこまで俺突っ込まないよ!?」


 いやだって…普段の様子からしたら一番槍―って形で突っ込みそうだし…。


「とまぁ、基本的にはこんな感じだな。あとは各自臨機応変に対応すること」


 ショーゴが締めると皆頷いた。

 他のPTも打ち合わせが終わったのか、再度移動を再開した。


 そろそろ予定の二時間地点に到着するため、団長さんが戦闘準備をするように指示をする。

 私も脇差を抜きスキルを近接用に入れ替える。


 そして私たちの目の前に現れたのは、太さが十メートル程あり、高さが優に五十メートルはあるのかと思えるほどの巨木のモンスターが口をニタァっと開いて私たちを見下ろす姿だった。


「まさかのトレントかよ…」


 誰が呟いたかわからないが、少なくともヒストリアの人が言っていた大型モンスターはこいつのことだろう。

 そして団長さんが声を上げる。


「各員! 戦闘開始っ!」


 団長さんの声とともに、それぞれのPTが展開を始める。

 そしてトレントは、私たちに向けてその太い枝から細い枝を槍のように飛ばしてくる。

 それは前衛後衛関係ない無差別攻撃だった。


「レオーネさん! クルル!」

「大丈夫よ~! 『ファイアーランス!』」


 レオーネさんは向かってくる枝の槍を【紅蓮魔法】で撃ち落としていく。

 他の後衛も、リンが【嵐魔法】で弾いているのが見えた。

 近接もそこら辺は慣れているのか避けれているのが見える。もちろん私も避けている。

 初撃が無差別とはいえ、特に被害がないように見えた。

 なので今度はこちらの番と言わんばかりに皆攻撃に移る。


 しかし、トレントは太い枝を盾のように操って近接職は近づけないように、遠距離は射線を塞いで攻撃を防いでいる。

 私も攻撃に移ったが、意外に相手の攻撃が激しくてうまく近づけない。


 とはいえ、ダメージが入っていないわけではない。

 攪乱として動いている御庭番衆がクナイを投げて本体の巨木に当てていたり、枝での防御が間に合わず魔法が直撃しているのもある。

 とは言っても、ダメージとしては数ミリゲージが減った程度である。


 アルトさんも敵の枝の槍を弾き避けながら近づいてはいるが、やはり太い枝までは切り刻めないためうまく近づけていない。

 しかし、まだ戦闘は始まったばかりだ。慌てる必要はない。


 とはいえ、盾持ちもゆっくりとトレントに近づけてはいるのだけど、はやり本体の巨木から数メートルは防御が厚いため近接職はうまく近づけていない。

 後衛の魔法職も貫通力の高い魔法を撃ってはいるが、枝を何重にも盾にされてしまうとどうしても威力が落ちてしまう。


 このままではまずいと感じたのか、リンが数人の魔法職の人にすれ違い様に声を掛けて構えを取る。

 リンの構えている手から小さい風が竜巻のように回転し始め、その風に雷が帯電し始める。

 おそらく闘技イベントで使った複合魔法を使う気だ。


 トレントも危険を察したのか、リンへと攻撃を集中しようとするが、それを見て機動型の近接職は本体へと攻撃を行う。

 トレントはその攻撃も無視できず、仕方なく枝の槍を飛ばしてリンに攻撃する。

 しかし、先程リンが声を掛けた魔法職がその攻撃を防ぎ続ける。

 そしてリンの複合魔法が完成し、リンが皆に声を掛ける。


「流れを作るわよ! 【迅雷・嵐複合魔法】『テンペストレールガン!』」


 帯電した竜巻状態の弾がトレントへと向かっていく。

 トレントは枝を複数束ねて盾にして防ごうとするが、【迅雷魔法】の特性の貫通の効果が強く、完全には防ぎきれなかったようで、本体の巨木に直撃してそのHPゲージを目に見えるほど減らす。

 やっぱりあの複合魔法威力高いんだなぁ…。

 そしてその怯んだ隙を狙ってアルトさんや私たちはトレントに一気に近づく。

 接近した私はさっそく新技を使う。


「『付加―【火魔法】!』」


 私が唱えると脇差が火を帯びる。

 そしてそのままトレントが体勢を戻すまでに何度か斬り刻む。

 火の追加効果か、斬った部位に火が少し燃え移る。

 体勢を戻したトレントは、慌ててその火を枝で叩いて消火する。


 そしてその火に気を取られている内に、逆サイドにいた近接職が更に攻撃を続ける。

 これらの攻撃に怒ったのか、トレントは枝を振り回し近くにいる者たちを吹き飛ばす。

 AGIが高い人たちは回避することができたが、盾持ちや運悪く回避できなかった人たちは直撃を食らう。


 ヒーラーはダメージを負った人たちを急いで回復させるが、回復させるまでの数秒間どうしても前線が薄くなってしまう。

 なので私やアルトさん、そして御庭番衆の人たちは彼らが戻ってくるまでの間囮として動いた。

 特に決めていたわけではないが、私とアルトさんは咄嗟に動いていた。

 AGIが高めな私たちが一番囮を成功させる確率が高いと思っての行動だ。

 御庭番衆の人たちも、私たちが動いているのを見て援護としてクナイを投げ続ける。


 やはりトレントも懐に潜られるのが嫌なのか、私たちにより攻撃を集中させてくる。

 いくらAGIが高いと言っても、全ての攻撃を避けられるわけがないので、枝の槍などは少し掠ってHPが減ってしまう。

 しかし、枝の薙ぎ払いなどはきちんと避ける。

 こちらの方がダメージが格段に高いからだ。


 私たちが囮をしていると、盾持ちなどが次々と前線に戻ってきた。

 そしてトレントの後方へと回った私とアルトさん。


「アリスさんあんまり無茶しないでください」

「アルトさんの方こそ無茶しないでください」


 私はさっとレッドポーションを飲んでHPを回復する。


「とはいえ、奇しくも後方に回れたんですから、こちらにも注意を向ければより攻撃しやすくなりますね」

「そうですね。それに火が付いた時焦ってたんで、見た目通り火が弱点ですね」

「あの技かっこよかったので今度教えてください」

「いいですよ。でも今は…」

「「トレント(あれ)をぶった斬る!」」


 後方に回った私たちに向けて、トレントが一部の枝でこちらを攻撃する。

 しかし、攻撃する枝が減った今、私たちを捕えることができないでいる。


「遅いよっ! 『付加―【火魔法】!』」


 私は再度【付加】で脇差に火を帯びさせて本体を斬り刻む。

 アルトさんも同じようにトレントを斬り刻む。

 そして私たちに意識が向いたため、防御も甘くなってきたのか、魔法職の攻撃が少しずつ通るようになってきた。


 とはいえ、私とアルトさんは今援護がない状態だ。

 あまり調子に乗っていて直撃を食らったらアウトだ。

 その事をアルトさんもわかっているのか、あまり無茶な攻撃はしていないようだ。

 私も数回斬ったらすぐその場を移動して、攻撃を受けないようにしている。


 そしてもう何度目かわからなくなる程の攻防をし続け、ようやくHPゲージが三割を切った。

 途中にリンも複合魔法を撃ったりして援護をしてくれている。

 そしてエクレールさんも火力の高い技でトレントのHPを削っている。

 やはり本体に攻撃が通るようになってからはある程度はHPが削れているため、そこはトレントと変わらないようだ。


 しかし、HPゲージが三割を切った途端、トレントが今までとは違う行動を取り始めた。

 今まで地面に潜っていた根っこを槍のように飛び出させて攻撃し始めたのだ。

 とはいえ、予備動作が無いわけではない。地面から飛び出してくる前に少しその場が揺れているのだ。

 なので回避のしようはあるのが救いだ。

 これが予備動作が無かったらと思うと、かなり難易度が上がっていただろう。


「ちょっとこれはきつくないですか…?」

「はい。ですが根っこも操る分、枝の操作が甘くなっているようです」


 言われてみれば、先程と比べて枝の操作が雑になっているように見える。


「おそらく操るにしても量が限られているんだと思います。そして根っこを増やした分繊細さがなくなっているので、逆に根っこの攻撃さえ避ければいけるはずです」


 流石トッププレイヤー。少しの動きで相手の特徴を見極めてる。

 こういうのを私も手に入れないといけないんだよね。頑張ろう。


「ではいきますよ!」

「はいっ!」


 私たちは再度トレントに突撃していった。

 近づくにつれて根っこの攻撃が増えるが、先読みされていないため今のところ移動先に根っこが来る様子はない。

 とはいえ、油断はできない。いつの間にか移動ルートの固定とかをされている可能性もある。

 そこは十分注意しないといけない。


 私がトレントに接近する頃には、反対側にいる皆も枝の動きが鈍いことに気付いたのか、最初よりもゲージが削れるのが早い。

 やっぱり最前線にいる人たちは観察力とか高いんだね。


「やぁぁっ!」


 私も負けずに【付加】で火属性にした脇差で斬っては離脱を繰り返す。



 そして夕日が沈む頃にようやくトレントのHPが尽きようとしていた。


「「やぁぁぁぁ!」」


 私とアルトさんが後方で攻撃をしようした瞬間、トレントのHPが尽きて光となって消滅した。


「「あわわっ!?」」


 勢いよく突っ込んだ私たちはトレントが消滅したことにより、止まるものがなくなってそのまま地面へとダイブした。


「いたたっ…」

「アリスさん大丈夫ですか?」

「はっはい…」


 私は起き上がってぶつけた鼻を撫でる。

 そんな私をアルトさんは心配そうに見つめる。


「アリス~!」


 リンの声が聞こえたので、顔を上げて声がする方を見ると、リンが凄い勢いでこちらに走ってくるのが見えた。

 そしてそのまま私に向かって飛び込んできた。


「アリス怪我ない~? 大丈夫~?」

「だっ大丈夫だから…落ち着いて…」

「【高速剣】と一緒に二人だけ後方に回るなんて危ないじゃない~!」

「だっだってそのまま戻ってこれなかったし…」


 あそこから戻る方が逆に危ないと思ったしなぁ…。


「まぁ結果的にトレントの気が引けたし結果オーライかなって…」

「でも心配だったのよ~?」

「ごっごめんなさい…」


 とりあえず心配させてしまったようだからそこは反省しないと…。

 その様子を見かねたアルトさんが声を掛ける。


「まぁアリスさんは慎重に戦われていたので大丈夫でしたよ」

「そうは言ってもねぇ~…」

「それより討伐報酬とか届いていると思いますし見ませんか?」


 そういえば今回はレイドだからそういう報酬が届くんだっけ?

 えーっとINFOっと…。



 ―INFO―

 レイドボス【レイクトレント】を撃破しました。

 報酬として『レイクアップルの苗木』が送られました。



「あら、私は枝だったわ~」

「私は葉ですね。何に使うんでしょうか…」

「私は林檎の苗木だったー」

「とりあえず一人一種類って形ね~」


 まぁ苗木だから私は育てられるし満足っ!

 うへへ~林檎が食べられる~。


 その後、このまま王都に向かうのは無理と言うことで、一度ヒストリアに戻る事となった。

 街に着いた後は、時間も時間なので大体の人がログアウトしていった。

 私はアルトさんにあの技の事を聞かれたので、【付加】スキルということと、フレンド登録だけして今日のところは別れた。

 私も眠くなってきたので、今日のところはこの辺にしておく。

 それにしても本当に疲れた…。たぶんこのまま爆睡しそう…。

 明日の講義ちゃんと出れるかなぁ…?

やはり戦闘描写とかは難しいですね…。

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