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Nostalgia world online  作者: naginagi
第二章
83/370

【高速剣】と御庭番衆

 翌日、講義を終え早々に帰宅し、早めにご飯やお風呂など支度を終えログインする。

 時刻は午後七時半、つまりGTでは一時間半の余裕があることになる。

 ログインする前に鈴と正悟に連絡すると、鈴はもうインしようとしてると返ってきて、正悟はあと十分ぐらいということだ。

 まぁ鈴は主催者ギルドの一人だし、早めにインする必要があるんだろうね。

 正悟はまぁいつも通りだし、遅刻しないということだからよしとしよう。


 ログインすると、何人かのプレイヤーたちが集合場所に集まっていた。

 その中には見たことあるような人や、見覚えがないような人もいて、その人たちが掲示板からの参加者なのかと思った。

 するとリンが私を見つけたのか手を振ってくる。


「アリス~こっちよ~」


 リンが私の名前を出すと、何人かがこちらを向く。

 うん、注目されるのは苦手だから恥ずかしい…。

 とまぁ、このままでは目立ったままなので、早々にリンのところに移動する。


「リン、声大きい…」

「あら~? そうだったかしら~?」


 リンはクスっと笑い誤魔化す。絶対わざとだ…。

 するとリンと話していた身長が170程で私より全然大きく、背中位の長さの金髪をポニーテールにしており、そのポニーテールを黒のリボンで止め、更に黒のカチューシャを付けた赤い瞳をした女性が声を掛けてきた。


「初めまして、アリスさんですよね?」

「はっはい…」

「私はアルトと言います。一度あなたとお話ししてみたかったんです」

「はっはぁ…」

「ごめんなさいね~。アリスはちょっと人見知りなところがあるのよ~」


 こっコミュ障なんだから仕方ないでしょっ!

 てかアルトってどっかで聞いたことがあるような…。

 それにしても、なんだかエクレールさんみたいな感じに凛としてるなぁ…。

 私もそんなふうになれば大人っぽく見られるのかな?


「アリスさんどうかしましたか? そんな私の事を見つめて?」

「あっすいません…」

「大丈夫ですよ。それにしても本当にアリスさんって聞いていた通りなんですね」

「えっ!? 聞いたって誰からですかっ!?」

「今さっきリンさんと話していまして、それで少しアリスさんの事を聞いていたんですよ」

「リンー!」


 私はリンの事を両手でポカポカと叩く。

 アルトさんに何を言ったのー!

 私がポカポカ叩いているのを、リンは笑って私の事をあやす。


「だってアリスの事聞かれちゃったんだから~答えなきゃ失礼でしょ~?」

「何言ったのー!」

「大したことじゃないわよ~。普段のアリスってどんな感じなのかぐらいだし~」

「普段ってどういうこと!」

「普段って言ったら普段の事よ~。アリスが甘えん坊で食べることが好きで周りの事考えててとっても優しい子って言うことを教えただけよ~」

「あっ甘えん坊じゃないっ!」

「だってレオーネから聞いたわよ~? イベントの時眠くてショーゴに抱っこされ「あぁぁぁぁぁ!」」


 あれはショーゴを助けるためで甘えたわけじゃないんだってばっ!

 でもそれを言うとまた何を言われるのか…うぁぁぁ…。

 私とリンのやり取りを見てアルトさんはクスっと笑う。


「本当にお二人は仲がいいですね。羨ましいです」

「うぅ…」

「そうなのよ~私たちとっても仲良しなのよ~」

「私もアリスさんたちと仲良くしたいです」


 そう言ってアルトさんは私の手を握る。

 その様子を見たリンは、ちょっと他のところ行ってくるわね~っと言ってこの場を離れた。

 残された私は握られた手を離せず、顔を背けて答える。


「別に…大丈夫です…」

「ありがとうございます。では少しお話ししませんか?」

「はい…」


 そう言って私たちは、階段状になっているところに腰かけて座った。


「それで、アリスさんはどういう経緯で今の戦闘スタイルになったんですか?」

「経緯と言われても…」


 流されるようにスキル取ってたら【切断】スキルっていいんじゃない? って思ってそのまま森での戦闘スタイルに移行して…っていうことを説明すると、アルトさんは不思議そうな表情をした。


「すいません、どうして【切断】スキルから森での戦闘スタイルになったかがいまいちわからないのですが…」

「どうしてと言われても…最初に森に入ってからずーっと森で戦うようになっちゃったので…」

「それで【童謡】やそういったスキルを手に入れたということですか…?」

「まぁ…そうなるかな…?」

「アリスさんのスキル構成を皆見てみたい気持ちがわかりました…」

「あはは…」


 私としては他の人のスキル構成の方が気になるんだけどなぁ…。

 特に近接で戦うアルトさんの構成は凄い気になる…。


「そういえばアリスさんはペットを二匹持ってますが、やはりペットは可愛いですか?」

「そうですね。二人ともとっても可愛いですよ。そういえば紹介してませんでしたね。おいで、レヴィ、ネウラ」

「キュゥ!」

「ぁ―!」


 私が呼ぶと、二人がいつもの定位置に現れる。


「掲示板で知っていましたけど、本当に蛇とアルラウネなんですね」

「キュゥ?」

「ぅ―?」

「ほら二人とも、アルトさんに挨拶は?」

「キュゥ!」

「ぅ―!」

「ふふっ、よろしくお願いします」


 どうやら二人ともアルトさんと仲良くできたそうだ。

 そういえばネウラの【成長】もあと少しで15Lvになりそうだし、もう少し喋れるようになるのかな?

 確か以前はLV5で喋れるようになったもんね。


「そういえばアルトさんは誰のPTに入るんですか?」

「それについてはまだ決まってませんね。おそらく空きのあるPTに入ると思いますが。アリスさんはどうなのですか?」

「私はショーゴ…知り合いのPTに入る予定です」

「お知り合いがいるのはいいですね。私の知り合いも第一陣には入れなくて第二陣でいるのですが、ぶつぶつ文句言ってましたよ。アルトだけずるいという感じで」

「第二陣ですか。じゃあまだこっちには来れませんよね」

「それに私が【高速剣】と呼ばれてるから、彼女も槍を使って二つ名手に入れてやるーって意気込んでるんですよ…はぁ…」


 高速剣…高速剣…あっ! 思い出した! 【高速剣】ってかなり有名なトッププレイヤーの人だっ!

 ってことは…私はトッププレイヤーの人と馴れ馴れしく…ガクブル…。


「あれ? アリスさんどうかしましたか?」

「いっいえ! なんでもありません!」

「いえ…なんだか急に緊張しているような…」

「そっそんなことありませんよっ!」

「もしかして私が【高速剣】ということを知らなくて…なんてことは…」


 私はドキッとして咄嗟に顔を背ける。


「そう畏まらないでいいんですよ? そもそもアリスさんだって結構有名ですよ?」

「アルトさんには及ばないと思いますけど…」

「知らぬは本人だけっていうことですかねぇ…」


 アルトさんは小さなため息を付く。

 そんなため息つくようなこと言ったかなぁ…?


「それとアリスさんヒストリアにはどうやって来たのですか?」

「えっと…森を突っ切って…」

「っ……それでどれぐらいで到着したんですか…?」

「途中かっ飛ばしたので…えーっと…大体半日ぐらいだったと思います」

「……」


 アルトさんが絶句している。一体何か変なところがあっただろうか…?


「ちなみにアリスさん…AGI+はどれぐらいですか…? 私が今5Lvなんですけど…」

「えーっと…11Lvです…」

「なんで私の剣スキルとステータススキルのレベルが一緒なんですか…」

「その…いつも走り回っていたから…かな…?」

「アリスさん…その…普通の戦闘って…してます…?」


 普通と言われましても…。

 そもそも大量の敵が出てくるような道通ったことないからそういうのはないし…一対多なら海花たちのファンと戦った時ぐらいで、あれは各個撃破してたし…。

 あれ…? そう言われれば普通の戦闘ってしてないような…?


「アリスさん、少しレイド系のボスでそういった戦いになれましょう。いつまでも一撃で倒せるモンスターばっかりとは限らないですし」

「とは言っても…スキル的に私は対MOBとか対人でボス系のスキルがあまり…」

「ATKは上げてないんですか?」

「派生になってからは上げてないですね…。やっぱり上げたほうがいいですか…?」

「近接は武器スキルとステータスがそのままダメージに直結しますからね。上げれるなら上げたほうがいいですよ」


 アルトさん曰く、ダメージを上げるならば武器の性能が高いものや、武器やATKスキルのレベル上げをするぐらいしかないらしい。

 また、下位スキルである【刀剣】スキルも一緒に装備する事である程度の補正も掛かるらしい。

 とはいえ、他にもスキルを装備しないといけないのであまり入れられないとのことだ。

 そしてアルトさんはそこからダメージを上げるために、クリティカル率が高くなる【会心】スキルや、相手の攻撃をギリギリで回避することでATKが一時的に上昇する【見切り】スキルなどを使うことで火力を高めている。

 取得できるかは別として、そういうスキルがあることを知れたのは良かったと思う。


 アルトさんと話していると、今度は忍び装束を着た五人組がこちらに近づいて来た。

 そしてリーダーであろう人が声を掛けてきた。


「お初にお目にかかるでござる! 某はギルド御庭番衆の頭領の半蔵と申すでござる!」

「ひっ!?」


 つい勢いに驚いてアルトさんの背中に顔を隠す。

 アルトさんは特に変わらず対応をする。


「初めまして。私はアルトと言います」

「巷で有名な【高速剣】殿でござるな! 今回はよろしく頼み申す!」

「こちらこそよろしくお願いします」


 私はこそっと顔を出して彼らを見つめる。


「アリスさん。大丈夫ですよ」

「はっはい…」


 アルトさんに後押しされて、おずおずと自己紹介をする。


「あっアリスです…。よろしくお願いします…」

「先程は驚かせて申し訳なかったでござる。つい【首狩り姫】殿とお話が出来て舞い上がったでござる」

「はぁ…?」


 そんなに私って有名なのかな…?

 不安そうにアルトさんを見上げると、微笑んで頭を撫でてくれる。


「まぁアリスさんは可愛らしいですからね。注目されるのは仕方ありませんよ」

「某も勧誘しようと思って考えていた台詞が今の仕草で飛んでしまったでござる。確かにこれは【暴風】殿が過保護になるのもわかるでござる」


 半蔵さんの後ろの人たちもうんうんと頷き、アルトさんと半蔵さんも納得している。

 私はイマイチ話が分からないんだけどな…。



 そしてなんだかんだで話をしていると、時間になったのか団長が現れた。

 私たちもその周辺に集まるために移動した。


「今回急な呼びかけに応じてくれて感謝する。先程確認したところ、参加表明をしてくれた九名の確認と、他の参加者全員の確認が取れて予定通りの四十六人がここに揃った。なので予定通りにレイド戦を行おうと思う。

 PTについてはおそらく既に相談している者もいるだろう。それを含めて報告してもらいたい。

 また、PTが決まっていない者は申し出てくれればこちらで編制させてもらうので安心してくれ。では各自PT報告をしてくれ」


 団長さんの話が終わり、PTが決まっているショーゴや半蔵さんたちが報告しにいく。

 そしてソロのアルトさんも団長さんのところへ行き、配属先の話をしている。

 ショーゴがこちらに戻ってくると、軽い挨拶を皆とした後PTを組んだ。

 私たちのPTは先日決めた通りの六人構成だ。

 集まった人数が四十六人のため、七人PTが四つの六人PTが三つってとこだね。


 どうやら最終的なPTとしては、御庭番衆の人たちが五人で私たちが六人ということで銀翼含めたソロの人たちが全員七人PTとなった。

 まぁある意味これが無難な気もするかもね。

 御庭番衆の人たちも斥候タイプだから初めての人と合わせるのは難しそうだもんね。

 アルトさんは代理でPTリーダーを務めるらしい。さすがです。


 ということで、時間も時間なのでさっそく出発した。

 新たな情報によると、目的地は古都からおよそ二時間の地点。

 現在大型モンスターは餌を求めてこちら側にゆっくりと移動しているとのことだ。

 比較的に古都から近いので、早めに討伐しないといけない。

 そのため、今回決行できたのは幸いだ。


 やはり三ヶ月毎ということで、前回別の大型モンスターが現れたのが二ヶ月前程なので、時期的にはそろそろ王都か古都へ移りだす頃と一致する。

 なので、今回この件を放置していたらヒストリアは最悪壊滅していたかもしれない。

 その意味でヒストリアをこの時期に見つけられたのはある意味ギリギリだったのだろうか?

 でも、皆がいるんだ。

 絶対に街に被害は出させないぞっ!

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