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Nostalgia world online  作者: naginagi
第二章
78/370

甘い蜜には危険が一杯

 私がヒストリアから出ると、ちょうど先程街道で出会った人たちが到着したそうだ。

 私はその横を通り過ぎて森へと入る。

 そもそも、そう簡単に蜂の巣が見つかるとは思ってないので、【感知】スキルで探しつつ【採取士】スキルと【鑑定士】スキルで新しい素材を探すことにした。


 少し鑑定をしてみたが、やはりエアスト近くの森とは違って効果が一段階高いようだ。

 それに、状態異常系の物もかなり多い。

 毒や麻痺や混乱などは今までもあったが、それに加えて沈黙、衰弱、魅了、暗闇、幻覚といったのまであった。

 沈黙については、発動条件として言葉を発する必要があるスキルや魔法を封じる状態異常だ。

 これは魔法だけでなく、言葉を発する系のスキルアーツも封じられるだろう。意外に厄介な状態異常だ。


 それと一つわからなかったのは反転といった効果のものだ。

 まぁ何かしらを反転させるんだろうとおもうんだけど、何をどう反転させるのだろう…?

 そもそも反転ってどういうこと…?

 でもまぁ回収はしとく。何かに使えるかもしれないので。


 他にはステータス減少系の物もあった。これは効果が単純だ。

 それにしても…バッドステータスのばっかりって、この森結構危ないんじゃ…?

 プラス効果の素材ってないのかな?


 そして蜂の巣を探しつつ散策していると、何やら怪しい葉の色をした草を見つけた。


「オレンジ色…?」


 そう、葉の色がオレンジ色でいかにも怪しさ満点の草だった。

 よもやモンスターの擬態かもと疑って長めの棒を取り出して、ツンツンと突いてみた。

 しかし、特に反応はないため、擬態ではなく普通の草なのではと考えた。

 私は恐る恐るそのオレンジ色をした葉を採取した。

 鑑定した結果はこうだった。



 エリスロ草【消耗品】

 回復効果のある草。そのまま食べると少しだけ傷が癒える。



 ん…? 回復する草? ポーションの素材なのだろうか?

 一応ある程度の数を集めようっと。

 とはいえ、本当に調合系の生産者の知り合い作らないとなぁ…。

 素材が売れない…。リーネさんに紹介してもらおうかなぁ…?


 ということで、探した結果二十三枚見つかった。

 やはりまだヒストリアに到着してないプレイヤーが多いため、そこまで荒らされていないのだろう。

 とはいえ、私は採取して種が落ちていたらそのまま植えて移動した。

【変換】スキル持ちの私は、現物があればそれを変換して種にすることができるため、種を所持している必要はないのだ。

 それよりも…。


「んー…」


 さっきから【感知】スキルの反応があるんだけど、襲い掛かってこないなぁ…。

 警戒してるのかな? それとも私から溢れ出すなんちゃらオーラが敵を寄せ付けないとか…?

 んまぁそんなわけないので、決定的な隙を伺っているのだろう。

 でも、リーネさん曰く森で新たに見つかったのは蜂ぐらいって言ってたんだけどなぁ…。

 とはいえ、そこまで警戒するような生き物って何かいたっけ?


 私が考えた素振りを見せると、こちらの様子を伺っていた生物は突如動きだし、風を切るような音が聞こえた。


「っ!?」


 私は咄嗟に木の陰に避け、その生物の正体を探る。

 その生物は、私が避けた先の木に衝突して止まると思いきや、衝突部位を貫通してそのまま通り過ぎた。


「うっそでしょ!?」


 数十センチはあった木を貫通させるってどういうこと!? てか少し見えたけど、あれって鳥だよね…?

 木を貫通するぐらいの(くちばし)を持った鳥ってどういうこと!?

 鳥は方向転換して、再度こちらに突っ込んできた。

 今度は私はあの鳥を鑑定するため、わざと立ち止まった。

 そして、方向転換できないぐらいの距離で再度横に避ける。

 その間際にその鳥を鑑定した。


 えーっと、種族名はブレットホーク。スキルは…【飛行】に【爪】に【嘴】に【貫通】っと。ちなみにスキルレベルはあったから普通のモンスターだね。

 そして、どうやら先程の木に穴を貫通させた方法は、【貫通】スキルの影響らしい。

 おそらく【雷魔法】のような設置物に対する貫通効果だろう。人体すら貫通だったら強すぎるだろうし、たぶんあっていると思う。


 ということは、突っ込んでくる系の相手によくある対抗手段の壁は役に立たないということだ。

 しかし、【貫通】スキルは全身ではなく、一部位だろうからいくらでも対抗手段はある。というか全身でも私には関係ないんだけどね。


 再度ブレットホークは私に突っ込んでくる。今度は身体を回転させて突っ込んでくるようだ。

 そして、私はある魔法を唱える。


「『グラビティエリア』」


 私の周囲十メートルに重力場を発生させた。

 その影響下に突っ込んできたブレットホークは地面に叩き落とされた。

 いくら【貫通】スキルで設置物を無効化することができても、空間までは無効化できないでしょう。


 とはいえ、ここからでは私は攻撃できない。

 動いてしまうと私も重力場に捕まってしまうし、かといって解除すると逃げられてしまうかもしれない。

 ではどうするか。

 答えは簡単だ。逃げられないようにするか、この重力場の中で仕留めるかだ。


 ということで、私は別の魔法も唱える。


「『地形操作―(ホール)!』」


 私が唱えると、ブレットホークのいた場所に穴が空く。

 ブレットホークは重力場の範囲内のため、穴が空いた分更に落ちていく。

 そしてすかさず魔法を解除して、先程作った穴の中に入る。

 ブレットホークは咄嗟に動けずに、未だ地に這いつくばっている。そんなブレットホークの背中を私は踏みつける。

 ブレットホークは苦しそうに鳴き声を上げるが、もう逃げられない。


「じゃあ、バイバイ」


 私は動けないでいるブレットホークの首を脇差で両断する。

 その後、死体を回収して穴から出る。


「少し時間掛かっちゃった」


 とはいえ、この森には鷹もいることがわかったからよしとしよう。

 今度襲ってこられても、同じような手段で倒せるだろうし。


 っと、蜂を探さないといけないんだった。

 いけないいけない…。

 でも…どこにいるんだろう…?



 かれこれ一時間以上は歩き回っている気がする。

 その間にエリスロ草を見つけては種を植えていくは、また鷹には襲われるはで蜂がまったく見つからない。

 むむむ…。蜂ぃー…。どこだぁー…。


 再度歩き続けていると、ぶううんっという羽音が薄っすら聞こえた。

 私はその音を頼りに、その音の元へとゆっくりと近づく。

 草を掻き分けたその先には、大きめな木にいくつもの穴が開いたボールのような丸い球状の蜂の巣があった。

 私は咄嗟に地面に伏せて様子を伺う。


「あれ…? よく考えたら蜂の巣ってどう取ればいいんだろ…?」


 今更気づく問題点。

 普通ならば、防護服を着て周りの蜂を無視して巣を取るか、殺虫剤とかで蜂を駆除しつつ巣を取るかののが一般的なはずだ。

 では今の私の状況ではどうだろうか。


 防護服⇒そんなの持っていない。

 殺虫剤等のスプレー⇒まず作られてるのかすらわからない。


 あれ? どうすればいいの?

 別に蜂の巣自体は【収納】の中に入れてしまえば関係ない。

 問題は、巣の周りをうろうろしている蜂たちだ。

 幸い普通のサイズの蜂なので、倒すだけならそこまで手間は掛からないだろう。

 問題はその数だ。優に百以上はいる。

 どこぞのガンナーではないので、飛んで向かってくる蜂を全て撃ち落とすとかはたぶん無理。


 そもそも、私は範囲攻撃が重力系しかないのだ。

『グラビティエリア』で蜂を全部落とすという方法もあるが、落とした後をどうするかだ。

 では『チェンジグラビティ』で蜂だけに重力を掛けて、その間に倒すという方法…と思ったけど、そもそも対象って何体まで平気なのかを調べていなかった。

 ということでこの案もだめっと…。


 そういえば煙で蜂を追い出す方法があるって聞いたことがあるような…。

 あれなら私にもできるし、それを試してみようかな?

 問題は火が燃え移らないように注意しないと…。

 ということで、レヴィを呼ぶとしよう。


「キュゥ!」

「レヴィ、静かに。蜂いるから」

「キュゥ…」


 レヴィを呼んで蜂がいることを注意した上で、風向きを確かめる。

 幸い私たちの位置が風上のようだ。

 なので、少し離れて周りに木がない位置に来る。

 そこで焚き火をするように並べて【火魔法】で火をつける。

 レヴィには周りに火が付いた時の消火役をしてもらう。


 焚き木に火を付けると、次第に煙が出て風に流れて蜂の巣の方へ行く。

 こっそり近づいて見たところ、煙で少し見にくいが蜂が動き回っているのが見えた。

 焚き火の側にはレヴィがいるので、おそらく火が燃え移るようなことはないだろう。

 とりあえずどれぐらい待てばいいのかな?


 巣の様子を見続けて一時間以上。ようやく蜂がいなくなったように見える。

 なので、ささっと蜂の巣を回収しよう。

 蜂の巣も【採取】スキルの対象だったため、あっさりと取る事が出来た。

 回収後、ぱっと【収納】の中に入れてレヴィの元へと戻る。


「キュゥ!」

「レヴィ、火消していいよ」

「キュゥ!」


 レヴィが焚き火を【水魔法】で消火したので、さっさとこの場を退散する。

 もし蜂が私たちの仕業と知って襲い掛かられると面倒だからだ。


「行くよ! レヴィ!」

「キュゥ!」


 レヴィを定位置の肩に乗せ、私はその場を去ってヒストリアへと全速力で戻る。

 結構な時間森に潜っていたため、ヒストリアに戻ったのは日が暮れる前だった。


サブタイトルをかっこよく考えたい(願望

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― 新着の感想 ―
[一言] テイム系スキル取ったり餌付けすれば簡単よな(笑)
2020/02/11 18:12 退会済み
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