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Nostalgia world online  作者: naginagi
第二章
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アリス、家を持つ③

 あれから二時間。ひたすら濡らした布で家の中を掃除し続けた。

 おかげで家の中は綺麗になったので、後は屋根の掃除だけだ。

 そして、掃除をしていると何故か【掃除】スキルが取得可能になっていた。これ取ってどうしろと…。

 でもメイドや執事を演じる人たちにとっては欲しいスキルなのかな?


 屋根の掃除は、上から水を流して軽く掃除をする程度に済ませた。屋根まで綺麗にしようとしたら多分終わりそうにないと思ったからだ。

 そして屋根からレヴィたちの方を見ると、やっぱり雑草の量が減っているのが見て取れた。


 でもネウラが雑草を抜いて(?)くれているなら、そのまま何かの種を植えてもいいけどね。

 でも、ログアウトしている間は畑のお世話ができないからそこをどうするか考えてからかな?

 そういうのもギルドの人に聞けば教えてくれるのかな?


 後は間取りだなぁ。

 今はお店をやるつもりはないから居住と作業の二スペースでいいけど、本格的にお店をやるとしたら居住と作業とお店の三スペースが必要になる。

 単純なのは二階にするっていうのだけど、たぶんその改装にも結構お金使うよね…。


 少なくても、改装するのは二百万払ってからにするとして、問題はどこでお金を稼ぐかだ…。

 私は生産職ではないため、武器や防具やポーションを作ったりして売ることはできない。

 料理してそれを売ると言っても、調味料がまだない現状ではそれも難しい。

 料理倶楽部の人にお願いして調味料を買うべきか…。


 ギルドの方の依頼を受けるにしても、人が増えた分依頼書の数が減ってるしなぁ…。まぁそれはいいことなんだけど、今の私からしたら少し痛い…。


 これがモンスターを倒したらお金が出るとかだったら、本当に苦労しないんだけどなぁ…。

 モンスターがお金を落とすわけがないとかそういう理由で落とさないみたいだし、ダンジョン潜って宝箱からお金探すしかないかなぁ…。

 でもダンジョンの宝箱のお金ってショボイって聞いたし…。うーむ…。


 となると、やっぱり素材を売ってお金を稼ぐっていうところが妥当かな? 他の戦闘職もそうだろうし。

 では何が売れるだろうか。

 まず武器に使う金属、防具に使う糸や皮はたぶん売れるだろう。

 しかし、私は採掘系スキルを持ってないため鉱石は掘ることができない。となれば、動物の皮や採取で綿や麻を取ってきて売るのがいい感じかな?

 あとは薬草系の採取で調合の人に売るっていうのがいいと思うんだけど、問題は調合の知り合いがいないってところなんだよね…。


 まぁ今は家の整理が先だね。とりあえずコマンドからハウスボックスの中身を配置しちゃわないと。

 ハウスボックスは、各家に設定されている専用のボックスで、家具をしまう事が出来るボックスだ。

 しかも何故かこのコマンドは住人の人たちも使えるようになっている。ここについては謎だ…。

 たぶん一人暮らしの人の場合だと、一人で邪魔な家具をしまうのが難しいから住人にも出来るようにしたんじゃないかと私は思ってる。


 それと同時に、家具を自由に設置することができるコマンドも一緒にある。これも住人が使えるようになっている。

 つまり、しまうコマンドと設置するコマンドの二つがデフォルトとして存在しているようだ。

 これが現実世界で使えたら引っ越しとか整理が楽でいいんだけどなぁ…。


 っと、そんな事を考えてないでさっさと設置しちゃおっと。

 えーっと、ハウスボックスにしまわれてるのは調合関係の設備の他に…椅子、机、ベッドとアイテムチェストにあとは薬草栽培用のスコップとかに…調理用の台ぐらいって…。

 ナンサおばあちゃん…料理ぐらいもう少しまともな設備にしようよ…。


 でも、今の私には調合関係の設備に薬草栽培用の道具はいらないから、イスと机とベッドと調理用の台を設置すれば終わりだね。

 椅子と机は畑が見える側の窓側に配置して、ベッドはその反対側の窓側にっと。

 アイテムチェストはベッドの近くで調理用の台は入口の反対側の壁際に設置してっと。こんなもんかな?

 あとは少し装飾品とか増やしたいけど、また今度かな?

 ちなみにアイテムチェストは、家に設置できるアイテムボックスみたいなもので、これがあることでアイテムを置いていくことが出来るようになる。家を持ったら手に入れたい家具の一つだ。


 家の整理も終わったところで、畑に行きレヴィとネウラを回収する。二人を回収すると同時に、見知った声が掛かった。


「あれ? アリスちゃん? こんなところでどうしたかにゃ?」


 私は声が掛かる方を向くと、そこにはリーネさんがいた。


「あっリーネさん」

「こんな場所で会うなんて奇遇だにゃ。それにそのペットはもしかしてイベントでかにゃ?」

「あっはい。蛇の方がレヴィで緑色の子がネウラです。二人とも、リーネさんに挨拶して」

「キュゥ!」

「ぁ―!」

「アリスちゃん二匹もペット捕まえるなんてずるいにゃ。私なんて一匹も手に入らなかったにゃ…」


 それを私に言われても…。


「それよりリーネさんこそこんなところでどうしたんですか?」

「ただの下見にゃ。そろそろちゃんとしたお店を建てたいから、こっちの方の空き地を見に来たのにゃ」

「なるほど…」

「とはいえ、やっぱり道沿いは少し高くなるにゃぁ…家だけならいけるけど、設備代も含めるともう少し売りさばかなきゃきついかにゃぁ…」

「やっぱり生産職でもきついんですねぇ…」

「…やっぱり…?」


 あっ…。


「アリスちゃん。やっぱりってどういう意味かにゃ?」

「いっいやぁ、お金を稼ぐのは生産職でも大変なのかなーって…」

「そういえばアリスちゃん、そこの家で何かごそごそとしてたように見えたにゃ…」


 みっ見られてた!? 私は咄嗟に顔を反らす。


「えーっと…」

「確か家に関するコマンドは、所持している人しかできなかった気がするにゃ…」

「なっ何のことでしょうか…」

「しかもそこの家、二軒分あるように見えるにゃ。どういうことかにゃ…?」


 なんだかリーネさんがどんどん迫ってくるっ!? ここでやる私の選択肢は…。

 ①:正直に話す

 ②:適当な作り話をする

 ③:逃げる


 まず①だ。…うんだめだ。絶対に面倒になる未来しか見えない…。

 じゃあ③。戦闘職でしかもAGIを上げている私にリーネさんは追いつけないだろう。でも、絶対家の前とかで待ち伏せしていそう…。となると、この③もだめとなる…。

 では残りの選択肢の②だけど、適当な作り話っていっても何がある…? 家の掃除を手伝っていたって言っても今のリーネさんは絶対に信じない…。

 じゃあ、リーネさんみたいに家を借りているということならばきっと納得するはず! よし! それで行こう!


「えーっとですね、この家は今借りてるんですよー…」

「…へー…そうにゃのかー…」

「はっはいー…」

「……」


 リーネさんすっごい疑ってる! でもこれ以外にいい作り話なんて思いつかないよ!

 そしてタイミングが悪いことに、今の私を追い詰めるような人が現れた。


「アリスさん、こちらにいましたか」

「あっ…」


 終わった…。なんでこのタイミングできちゃうの…イーマンさん…。

 私はがっくしと膝を折るような姿勢を取って地面に倒れ込む。


「アリスさん…どうかしましたか…?」

「あれ、確かギルド長さんだったかにゃ? どうかしたのかにゃ?」

「あぁ、リーネさん。いえ、アリスさんに従業員の雇い方の説明を忘れていまして、それの説明に参った次第です」

「へー…従業員ねぇー…」


 あっ…これはもう無理だ…言い逃れできない…。


「ねぇアリスちゃん。せ・つ・め・い、してくれるかにゃ?」

「…はい…」


 観念した私はリーネさんに説明をした。



「なるほどにゃぁ…。住人の人から家を貰ってそのためにお金集めが必要というわけにゃ」

「はい…」

「えーっと…アリスさん…」

「…なに…」


 私はイーマンさんをギロっと睨む。イーマンさんは気まずそうに冷や汗を流してオロオロする。


「えっと…先程の話はギルドに来ていただいた時にしたいと思います…では失礼いたします!」


 そう言ってイーマンさんは走ってその場を去って行った。くそぅ…今度やらかしたら焼土下座させてやるぅ…。


「でもリーネさん…この事はどうか内緒に…」

「まぁ確かに一軒分でも買うのが大変にゃのに、二軒分も持ってるなんて知られたら大変なことににゃるし…。うん、わかったにゃ。内緒にしとくにゃ」

「ふぅ…」


 とりあえず安心した…。リーネさんは一度やらかしてるから、もう不用意な発言はしないだろうし安心だ。


「それで、お金集めだっけかにゃ? アリスちゃん料理スキル持ってるって聞いたけど作って売らないのかにゃ?」

「まだ設備や調味料とかが全くないので、ロクな物が作れなくて…」

「そんなことは百も承知にゃ。でも、試しに売ってみることも大事にゃ。とは言っても、調味料が出来てからでいいと思うにゃ」

「んー…そういうもんなんですかねぇ…?」

「そうにゃ。誰も売れるかなんてわからないのにゃ。でも、やらなきゃ始まらない事は確かにゃ」

「リーネさん…」

「とは言っても、他の金稼ぎ方法と言われてもにゃ…。まぁアリスちゃんぐらいにしかできないような方法があると言えばあるにゃ…」


 私ぐらいにしかできない方法? なんだろう?


「以前イカグモの糸っていうアイテムを手に入れたのは覚えてるかにゃ?」

「えぇ、覚えてますけど…」

「その糸を集められるだけ集めてほしいのにゃ」

「何故です?」

「イベントでアリスちゃんが泳いでた事から、女性プレイヤーがそういった泳げる用の服を作ってほしいと相談があったにゃ」

「それで糸が必要ということですか?」

「そうにゃ。前回アリスちゃんの服を作った時は、他の糸と組み合わせて作ったけど効果はちゃんと付いたにゃ。それでその時にイカグモの糸の量は毛玉一つで足りたにゃ。そこで、イカグモの糸の毛玉一つにつき5000Gで買い取るにゃ」


 5000Gっ!? 羊毛で600Gなのにその八倍近くっ!?


「でも私の服は一万Gでしたけど、半分も貰っていいんですか!?」

「あの時は相場がわからなかったから安めにしちゃったにゃ。でも、需要が高いということになれば、その分値段も上げられるにゃ。ということで、安定した供給になるまでは15000Gで販売の予定にゃ。だから一着につき一万G儲かるわけにゃ」


 なるほど…。元の値段を上げて利益を取るわけか…。それなら私に5000G払っても一着分の値段がそのまま入るってことか…。

 商売ってそういうこと考えないといけないのが大変だよねぇ…。


「わかりました。とは言っても、そんなに一杯手に入るとは思えないのでそこは考えといてくださいね」

「わかってるにゃ。あとお店はまだ今までと一緒だからそっちによろしくにゃ」

「はーい」


 さてと、この後向かう場所はクラー湖で決定だね。でも今から向かうと着く頃には日が暮れちゃうかな?

 だったらハーフェンで魚でも獲ってこようかな? お土産があったほうがたぶんいいもんね。

 っと、その前にいらない荷物をアイテムチェストに入れてアイテムボックスと【収納】の中身を整理しなくちゃ…。

その内お金のみドロップするダンジョンも考えなくては…。

○○金山と言った具合に…。

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