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Nostalgia world online  作者: naginagi
第二章
73/370

アリス、家を持つ②

「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか?」

「悪いがちょいとギルド長を呼んどくれ。あたしの所有してる土地についての話なんだ」

「かしこまりました。そちらの椅子に掛けてお待ちください」


 そう言って受付のお姉さんは席を外して部屋の中に入って行った。

 私たちは指示された椅子に座って待つ。


「土地の話ってギルド長じゃないとダメなの?」

「そういうわけじゃないけど、あたしの場合は昔の付き合いでギルド長の方が楽なんだよ」


 まぁ若い頃から薬師をやってたって言ってたし、結構ギルドとは付き合いがあるんだね。

 そういえば、第二陣の時もナンサおばあちゃん経由で依頼が来たし、そういう信頼関係があるのかな?


 そうぼんやり考えていると、部屋から少し歳を取ったように見える中年のおじさんが出てきた。


「ナンサさんすいません、お待たせしてしまって」

「別にそんな謝罪はいいよ、イーマン。それで個室に案内してくれないかい?」

「わかりました。それで…そちらのお嬢さんは…」

「アリスっていう子だよ。それよりいいからさっさと案内せんかい!」

「はっはいっ!」


 イーマンというギルド長の方は、ナンサおばあちゃんにペコペコして個室に案内してくれる。

 てかギルド長に強気に出れるって、ナンサおばあちゃんあの人に何をしたの…?


 ギルド長が案内してくれたのは談話室なようで、少し高そうな木のテーブルに椅子が二つずつ対面に置かれていた。


「どうぞ席にお座りください」

「あっはい!」


 私は言われた通りに椅子に座る。ナンサおばあちゃんもゆっくりとイスに座り、イーマンさんが座ったところで再度話を戻す。


「それで、部下から土地の話でいらっしゃったと聞いたのですが…」

「あぁ、そうだよ。この子にあの北西の家を譲ろうと思ってね。その為にギルドに来たのさ」

「ということはそちらの方がお弟子さんということですか? 以前、弟子にやるから土地を寝かせてあるとおっしゃっていましたが…」

「んまぁ弟子じゃないんだがねぇ…」

「アハハ…」


 私は少し苦笑いで笑ってしまう。


「まぁそこはナンサさんたちの事情もあるということでしょうから、特には聞きません。それで、必要なのは譲渡の書類だけでよろしいですか?」

「あと振り込み用の書類も頼むよ。弟子じゃないんで一応金を払ってもらうんでね」

「なるほど…。となると、振り込み方法はどのようになさいますか?」

「一括にするとアリスが借金だらけになってしまうんでな、月の支払いで頼む」

「かしこまりました。では書類を持ってくるのでしばらくお待ちください」


 そう言ってイーマンさんは席を立ち、部屋を出ていった。

 それにしても結構本格的なんだね。

 まさか土地の譲渡でそういった書類まで必要とは思わなかったよ…。

 てっきりコマンドとかでポーンって思ってた…。


 しばらくすると、イーマンさんが書類を持って戻ってきた。


「ではこちらが譲渡の書類となります。ペンはこちらです」

「あいよ。えーっと…土地の番号はなんだっけねぇ…」

「そうだと思って管理書も持ってきましたよ、ナンサさん」

「っふ、イー坊の割には気が利くじゃないか」


 イー坊?

 私がその呼び方に首を傾げていると、ナンサおばあちゃんが説明してくれた。


 昔、ナンサおばあちゃんがまだ現役で絶好調の時に、先任の担当が代わって若手の育成も兼ねて、新人のイーマンさんが後任を任されたらしい。

 そん時に色々と説教したりしてたせいで、ナンサおばあちゃんからイー坊と呼ばれるようになってしまったらしい。

 イーマンさんも、そのせいでナンサさんにあまり頭が上がらないらしい。


「あたしは書き終えたよ。次はアリスがここに名前を書くんだよ」

「うっうんっ!」


 おぅっ! こういう間違えられない書類を書くときってすっごく緊張する…。

 だいじょーぶ…だいじょーぶ…たったカタカナ三文字書くだけだから…。

 丁寧に丁寧に…。


「ふぅ…」

「はい、これで譲渡の書類は大丈夫です。では次に、振り込みの書類をお願いします」

「はいよ。アリス、さっき決めた内容でいいよね?」

「うんっ! 私はそれでいいけど…本当にいいの…?」

「餞別って言ったじゃないか。いつまでも気にするんじゃないよ」

「うん…」


 そう言ってナンサおばあちゃんは書類に月に振り込みする金額と、振り込みの合計金額を記入する。

 それを書き終えてイーマンさんに見せる。


「…あの…ナンサさん…」

「なんじゃい」

「私の見間違いかと思うんですが、この桁…間違ってません?」

「いや、どこも間違えておらんよ」

「いえいえ…なんで二軒分あるあの家が二百万なんですか!? 相場的に考えて最低一千万でしょう!?」

「可愛い孫のような子のために値引いた結果じゃ。別にいいじゃないかい。今更大金が欲しいわけでもないしな」

「そうかもしれませんけど! 昔から結構やんちゃな方だったですけど、全く衰えてませんねあなたはっ!」

「それともう一つあってな、もし月に五万払えなくても取り立てとかはせんでよいからな。あと過剰に払ったりしたら本当に大丈夫か念を押しといてくれ」

「ちょっと過保護すぎませんか!? いくら孫が欲しいと愚痴っていたからって極端すぎませんか!?」

「イー坊のくせにうるさいのぉ。あたしがいいと言ったんだからいいじゃないかい。他の者に迷惑かけるわけじゃないのだから」


 おぅ…。なんかイーマンさん口調がすっごい砕けたなぁ…。多分ナンサおばあちゃんだけになんだろうけど…。

 とりあえず抑えないと…。


「あのね…ナンサおばあちゃん…私ちゃんと払うから大丈夫だよ…?」

「そもそもあたしとしてはタダで譲渡してもよかったんだよ! でもそれじゃああんたたちギルドとしても困ると思って、泣く泣く振り込み金考えたんだよ!」

「考えた結果が五分の一以下ってどういうことですか!? 他の異邦人の方が知ったらクレームもんですよ!?」

「だから個室で話をしてやってるんじゃないかい!」

「それはありがたいですけど! せめて半額の五百万ぐらいにしてくださいよ!」

「それじゃあアリスが可哀想じゃないかい! あの子はとってもいい子なんだよ! そんな子に大金を用意させろっていうのかい!」


 だめだ…全く聞いてくれない…。というかなんだか逆に激しくなっているような…。

 もしかして、昔からこういったやり取りをしていたんじゃ…。

 てかナンサおばあちゃん、そろそろ恥ずかしくなってくるから自慢話はやめてっ!?


 そして十数分後。ようやく落ち着いたのか、二人は用意された水を飲んで話を付ける。


「こっ今回だけですからね…!」

「安心せい! 他に寝かせてる土地なんぞ持っておらんからこんな事言わんわい!」


 とりあえず話は纏ったってことでいいのかな…? アハハ…。

 まさか私の自慢話を反論材料にされるとは思わなかった…。


 とまぁ、結局私が支払うのは月五万の合計二百万。月に五万以上払ってもいいけど、無理がない程度にすることという条件が付いた。

 そして、書類はもう処理してしまうので、今日からナンサさんの別宅を使えるようになるとのことだ。

 ただし、改装については職人が現在別の街に行っているので、今はできないとのことだ。


 とはいえ、祝! 家持ち! …まだ仮だけど…。

 と言うことでさっそくその家に向かってみることにする。

 もちろんナンサさんを自宅に送ってからだ。


「えーっと…ここかな…?」


 私はナンサおばあちゃんから教えてもらった場所を頼りに家を探す。

 とは言っても、ほとんど空き地や畑なので家自体は数が少ない。なので、案外早く見つかった。

 見つかったのはいいんだけど…。


「畑…ぼーぼーだね…」

「キュゥ…」

「ぅ―?」


 そう。長い間放置していたせいで、雑草が生えまくりなのだ。たまにこの家の草むしりを依頼としてギルドが張り出していたおかげで、他の場所に侵食するようなことにはなっていないが、結構これは大変そうだ…。


 では庭がこれでは家の中はどうなのだ、ということで、意を決して家の中に入る。


「ごほっごほっ!?」

「キュゥッ!?」

「ぅ―!?」


 まぁ、庭の様子から予想はしていたが案の定埃塗れだった。

 とりあえずレヴィとネウラを急いで外に避難させる。

 その後、息を止めて一気に各窓を全開にする。


「…この家の掃除…どれぐらい掛かるかな…?」


 ということで、少なくても住める程度には掃除しないといけないので、箒とはたきと布数枚を購入してきた。

 掃除道具ということでそこまで値段は掛からなかったのは嬉しい。


 幸い家具とかはこの家を使わなくなる前に全部ナンサおばあちゃんがハウスボックスの中に詰め込んだとのことで、掃除をする上で邪魔になることはない。そのおかげで何もない殺風景な居住スペースと生産スペースとなっている。


 ということで掃除をするのだが、掃除をする前に私は埃を吸うと辛いので、布を口に巻く。

 ちなみにレヴィたちは畑の方に避難させている。ネウラは目を離すとどこか行きそうなので、レヴィに見張ってもらう。

 そしてまずは両方の部屋の高いところの埃を落とす。とはいえ、居住スペースと生産スペースで半々ぐらいに分けているので、そこまで高いところの埃を落とすのは時間が掛からなかった。


 次に落ちた埃を箒で掃く。家具も何もないので、埃を一ヶ所に集めるのにはそう苦労しなかった。

 普通ならこの集めた埃をゴミ箱とかに捨てるのだが、そういったのはないため、土に埋めることとする。

 そう思って家の外に出て畑を見ると、雑草が少し減っているように見えた。

 まさか…と思ってネウラを探す。すると。


「ぁ―!」

「ネウラ…またあなたは…」


 そう。ネウラは雑草を食べていたのだ。

 以前、イベントでもネウラは毒草を平然と食べていたが、まさか雑草までも食べるとは思っていなかった。

 恐るべし植物系モンスター…。


「レヴィ…ネウラに何かあったらすぐ知らせてね…?」

「キュッキュゥ…」

「『地形操作―(ホール)』」


 私は畑の横に深めの小さい穴を空けて、先程集めた埃を穴の中に入れる。そして、最後に上から土を掛ける。

 これで多分微生物とかに分解されるでしょう。微生物は偉大なのだ。だからきっと分解してくれるはず。…たぶん。


 そして最後に水で濡らした布で壁とか床を磨く。あとはこれだけだ! よーっし! 頑張るぞーっ!

掃除方法を書いていると小学校の頃の掃除が懐かしい…。

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