キャンプイベント⑨
「はぁ…」
「アリス、どうしたの?」
「んー…ちょっとね…」
ジャックと別れた後、さっさと寝たんだけど、あんまり眠れなくて結局明け方には起きてしまった。それで今後どうしようかなと朝食の時間まで考えていたが、まぁすぐにはそんな考えなど思いつかないので、ベッドの上で唸っていた。
確かに私としても新しい武器は持ったほうがいいとは思ってる。とは言っても、そんなすぐに新しい武器なんか思いつくわけがない。それに、分からないからと言って誰かに聞くというのも少し違うと思うし、それは自分の武器とは言えないと思う。でもなぁ…。
「うーん…」
「さっきから唸ってばっかでどうしたんだよアリス」
「なんか悩み事か?」
「お姉さんたちに相談してもいいのよ~?」
「アリスさん大丈夫ですか?」
皆が心配してくれるけど、これは私が解決しないといけない事だから、大丈夫と伝えた。
ショーゴたちは、今日はまた色々動くというので、拾い物があったら取ってきてと言っておいた。まぁラッキーでペット用の取得玉だと思うけど。
ルカは昨日私が卵が欲しいと言ったからか、取ってくると気合を入れて旅立った。
ということで拠点にいるのは私一人だ。まぁログハウスの中に閉じこもって考えるよりは、外に出て簡易プールで遊ぶレヴィとネウラを見ている方が何か思いつくと思うし、そっちの方向で考えることにした。
手っ取り早く新しい武器を造るとするなら、新たな魔法を取って派生魔法を取得するのがいいとは思う。しかし、魔法は四種類が限度とされているため、現在二種類取っている私には少し覚悟が必要になる。
「今私が持っているのは土と闇…それと相性がいい魔法かぁ…」
ネウラの持っている【植物魔法】はきっと土と何かの派生魔法だろうから、後は何と相性がいいかを当てるだけ…。
掲示板を見ても、やっぱり土関連は重力以外見られなかった。でも以前PKに会った時に使われた【爆魔法】についての書き込みはなかった。まぁPKが書くとは思わなかったけど。
それで新しく見つかったのは光と氷で【鏡魔法】と風と闇で【毒魔法】だけかぁ…。
んー…風取って【毒魔法】取ったとして、それをどう使うかとなると…。毒で相手を苦しめて首を斬る…とか? でも毒となると、毒耐性系のスキル取られると使えなくなるよね…? それに多分武器にも毒を付けるとかそういう系だから、近距離よりも遠距離が取ったほうがいいスキルだよね。
となると、風は却下ということで他を考えないと…。
では何を取るかとなるんだけど、残りは火、水、雷、光の四種類だ。でも光って支援だよね…? そんな支援している暇があるなら多分斬りに行ってるよ。
雷もせっかくの地形を破壊することになるのでダメかな? リンの見た限り結構破壊してるし…。
また消去法で二種類残ったけど、火と水かぁ…。水はともかく火はダメだと思うんだけど…。森で戦う人が火で森を焼き払うってどういうこと…。
でも水は先に取っておこうかな? 後残り一つはまた今度考えよう。それに、【水魔法】取ってればレヴィが寝てても水使えるもんね。
と言うことでしばらくは【水魔法】のスキル上げかな? どこかいいところあるかな? 掲示板でちょっと調べてみよっと。
調べてみた結果、それほど敵が強くないが北西側のモンスターが結構美味しいらしい。ということで北西に出発。
中心部から森が広がっているため、相変わらず景色は変わらないが、私としてはこちらの方が落ち着くからいいんだけどね。とはいえ、のんびり歩いていると無駄に時間が取られてしまうので、移動速度を上げる。
しばらく進むと、近くで戦闘音が聞こえた。こっそり木の上から様子を見ていると、四人PTが少し大きめのムカデと戦っていた。見たところ、初期装備の割合が多いためきっと初心者だろう。
とはいえ、確かにそこまで強くはなさそうだ。初心者たち相手でも十分戦えてるところから、やはりそこまで強くはないのだろう。
さてと、私も空いているところを探して狩らないと。
んー…。掲示板で情報が上がっているからか、空いている場所があんまりない。そのため、いつの間にか北西より少し北側に来ていたようだ。
木の上にいる私だからわかるが、山脈に少し近づいていた。ということは山脈にいるモンスターにも遭遇する可能性があるわけか。でも【水魔法】なら土や岩系のモンスターに有効…って相性的に逆なのか…。
でもまぁそこまで強くないと信じて戦ってみよう。
ということでさっそくみーっつけた。えーっとあれは…ハリネズミ? でもハリネズミにしては少し大きくて、随分針が岩っぽくてごつい…。それに何匹かでモソモソしているから、たぶんユニークペットとかの類じゃないよね? 攻撃して大丈夫だよね?
「『アクアショット!』」
私は比較的手前側にいたハリネズミに向かって【水魔法】スキルの初期魔法を放つ。
さすがに木の上からの攻撃に対しては警戒していなかったのか、私の攻撃が背中に直撃する。とは言っても、削れたのは二割ちょいなので、あと四発ぐらい当たれば倒せるかな? それにしてもやっぱりエアストの森にいる狼よりは堅いね。まぁ堅そうな背中だったからその分ダメージが下がったのかな?
するとハリネズミは怒ったのか、三匹程残って私に向けて背中の岩の針をいくつも飛ばしてくる。
針の速度はそこまで速くないので、初心者でも十分避けきれるぐらいだ。ということは、私にとっては遅すぎるぐらいだ。
私は木を伝って移動を繰り返す。移動を繰り返していると、ハリネズミたちは視界が狭いのか、私を見失ったのかキョロキョロと周りを見渡している。
「まぁそもそも、木の上から攻撃してくるとは想定してなかったんだろうなぁ…」
なんだかタウロス君にあなただけです。とか言われた気がするけど気のせいだね。うん。
とまぁ、今回は【水魔法】スキルのレベル上げだから他のスキルは極力使いたくないんだよね。
そういえばあのハリネズミたち、背中は堅いけどお腹はどうなんだろ? 少しひっくり返してみようかな。
「『地形操作―隆起!』」
私がさっと地面に降りてハリネズミたちがこちらを向く前に、地面に手を付けて魔法を唱える。
すると、ハリネズミたちがいる場所が小さな山状に隆起し、ハリネズミたちはその山から転げ落ちる。転げ落ちたハリネズミたちは、地面に針が刺さってひっくり返れない状態になった。
そして私はその無防備なお腹に向けて再度魔法を放つ。
「『アクアショット!』」
今度は4割ぐらい効いたので、さっきの二倍ぐらいだね。となると、やっぱり背中が硬い分お腹は柔らかいようだ。ということで、周囲のハリネズミたちにも魔法を放ってHPを全損させる。
【狩人】スキルのおかげで死体は消えないので、さっさとハリネズミたちを回収する。そうだ、回収前に鑑定しておこっと。私はハリネズミを鑑定した。
「えーっと…種族名はロックヘッジホッグ。直訳で岩ハリネズミってところかな?」
ということはやっぱり私は山脈側のモンスターのテリトリーに来ているようだ。でもこれぐらいの強さなら平気だろうし、このまま北寄りでスキル上げの狩りしようかな。
そう思ってハリネズミを回収して立ち上がろうとした瞬間、横から火の玉が飛んできた。
「『アースシールド!』」
私は咄嗟に土壁を作って火の玉を防ぐ。そしてその土壁から少し顔を出して火の玉が飛んできた方を見る。
すると、そこには四足歩行で地を歩く茶色の肌をした大きめなトカゲがいた。
えっと…あれってまさかサラマンダーってやつ? でも肌が茶色いけど…。でもこれがユニークペットだとしたら、倒したら大変だよね…? どうしよう…。
そんな私の気遣いなど関係なく、トカゲは火の玉を飛ばしてくる。
私は何重かアースシールドを展開して防ぐ。とはいえ、このままではいけないので、被弾覚悟で近くによって鑑定するしかない。
タイミングは次に火の弾を発射した後っ!
そしてMPが回復したのか、トカゲは火の玉を再度飛ばしてきた。そして、私が展開した土壁にぶつかって相殺された後、私は飛び出してトカゲに接近する。
トカゲは急に接近しようとしてきた私に対して、少し長めの尻尾を横に振って攻撃しようとする。
私はそれをジャンプで避けてそのまま横をすり抜ける。その瞬間、【鑑定士】スキルでトカゲに対して鑑定を行う。そして、その結果は。
「…ロック…リザード…しかもスキルも普通だし…」
サラマンダーじゃないじゃん…。だっ騙されたー!
私は八つ当たり気味でアクアショットを連発してロックリザードを倒した。
まったく! 紛らわしいよっ! とりあえず茶色の肌をしたトカゲは火の玉出すけどサラマンダーじゃないっと…。注意しないと…。
てか土属性のモンスターでも火を使うのもいるんだなぁ。ってことは土と火って実は相性がいいとかなのかな? でも森で戦う私としては、火は厳禁なような…。
そういえば火と水で霧だった気がするけど、霧だったら別に森に影響ないよね? となると、残り一つの属性を火にしてもいいのかな…?
でも…【火魔法】スキル上げるところどこかあるかなぁ…? 北の草原とかかなぁ…? もしくはダンジョン? そういえばダンジョンに入ったことないしなぁ…。今度潜ってみようかな。
でも今は【水魔法】のレベル上げが優先。【火魔法】はその後っ!
なろうサイトの調子が悪いので隙を付いて書かないと…!
アリスのイラスト描いていただきましたので活動報告の方に載せました。




