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Nostalgia world online  作者: naginagi
第二章
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キャンプイベント⑧

「それで、その土蜘蛛はもうペットにしたのか?」

「一応。アレニアにした」


 ルカが土蜘蛛の名前を呼ぶと、前足を上げてアピールする。とりあえず声は出せないようだ。そういえば蜘蛛って発声器官がないとか聞いた気がするし、やっぱりモンスターによっても変わってくるよね。

 そしてクルル、そう怖がらないであげなよ。爬虫類とか虫が苦手なのはわかるけどさ…。


 まぁ予想はしてたんだけど、アレニアは生きた生き物が好みらしい。ということで新鮮な魚を与えると、その魚に牙を突き刺した。すると何かが溶かされるような音が聞こえてきたので、おそらく毒で溶かしてるんだろうなーっと思って食事の支度をしていた。

 まぁ、そういう予感はしたのでクルルを遠ざけといて正解だった。その場にいたら多分気分が悪くなっていただろう。私、グッジョブ。


 とまぁそこは置いといて、本日の夜ご飯は魚の塩焼きと野菜炒めだ。そろそろタンパク質が欲しいから、明日には卵も探さないとなぁ。

 私たちが食事をしていると、何人かのプレイヤーがこちらに近づいて来た。


「いきなりすみません。こちらの料理を作ったのはどなたでしょうか?」

「私だけど…何か…?」


 私が答えると、彼らはヒソヒソと相談し始めた。しばらくすると相談が終わったのか、再度こちらに顔を向ける。


「もっもしよかったら私たちのギルドに入りませんか!」

「…はい?」


 その発言にルカとショーゴが待ったを掛ける。


「そこは譲れない」

「訳もわからないところにアリスを入れるとでも思ったか?」


 何言ってるの二人とも…。てかショーゴ、あなたは私のお父さんかなんかなの?


「すっすみません! 私たちはギルド、料理倶楽部の者です!」


 ほほぅ、料理倶楽部とな。それは少し興味がある。


「それで今同志を募っていて…よかったらどうですか!」

「んー…」


 料理倶楽部に入れば色々な食材情報が入ってくる。その点ではメリットは大きい。でも、私が知らない人が多いところで喋れるかと言われるとちょっと厳しい。少しの人数ぐらいなら平気にはなってきたけど、まだ大人数となるとちょっと無理な気が…。ということで申し訳ないけど断ることにしよう。


「えーっと…すみません」

「そうですか…ですが何かありましたら連絡してください。いつでも歓迎しますよ」

「ありがとうございます…?」


 とりあえずフレンド登録をお願いされたので、登録だけして彼らは去って行った。

 んーギルドかぁ…。そういえばショーゴとかルカはどうするんだろ?


「ギルド? んまぁやるとしたら自分たちで作ろうとは考えてるけどな。と言ってもガッチガチじゃなくてある程度は自由にするつもりだけどな」

「特に考えてない」


 ショーゴはともかくルカの回答は予想していた。私よりも人見知りなところあるもんね。


「とはいえ生産系からも勧誘きてんのかよ。他から勧誘来たりしてないのか?」

「特には来てないけど…」


 そもそも声を掛けてくる人いないし。だから勧誘とかそういうのもされたことないなぁ…。って、あれ…? 私って実は避けられてる?


「ショーゴ」

「どうした?」

「ショーゴは勧誘とかされたことあるの?」

「んまぁ一応な。断ったけど。つか闘技イベント本選出場者はほとんど勧誘受けてんじゃね?」

「……」


 これってやっぱり私避けられてるんじゃ…?


「まっまぁ、女だから声掛け辛いとかあるんじゃねえかっ?」


 ショーゴがフォローしようとしてるけど、さっきの話し聞いた限りじゃ全く気休めにならない。


「あっアリスさんは高嶺の花ですからっ! 誘うのは気が引けるんですよっ!」

「そっそうだな!」

「おっお姉さんもアリスちゃん誘うのは気が引けちゃうし~」

「それにアリスちゃん可愛いしな!」


 クルルたちがフォローをしてくれるのは嬉しいんだけど、なんか無駄に追い打ちになってる気もする…。いっそのことばっさり言ってほしい時もあるんだよ…?

 そう思ってルカの方をチラっとみるが、ルカはそっと顔を反らす。


「…たぶん、怖いんだと思う…」


 うん…そうだよね…普通に考えたら首切ってるような人を誘おうと思わないよね…。

 私は地面に手を伸ばして付いて土下座のような体勢を取る。そんな私にご飯を食べていたレヴィとネウラがそっと近づいて来た。


「キュゥ!」

「―!」


 きっと励ましてくれているのだろう。うん、私頑張るよ!



 食事が終わって片付けをしていると、ショーゴたちが私の方に来た。どうやら今日の収穫物でドロップ以外に拾える物を取ってきたから鑑定してほしいとのことだ。

 まぁそれぐらい構わないので、鑑定してほしいのを出してと言ったところ、小さな山が出来るぐらいのアイテムが置かれた。

 よくもまぁ集めてきたものだ。しかし誰も採取系は持ってないので、本当に落ちていた物ばかりなのだろう。結構汚れているのが多い。幸い機械部品のようなものはなさそうなので、レヴィにお願いして水で一回丸洗いしてもらった。さてと、何があるかなぁ…?


 んー…ロクな物がない…。ただの石ころや鉱石の破片とかばっかりだ。鉱石の破片は個数が集まればインゴットに出来るらしいから別に分けてるけど…。まぁ採取系のスキル持ってなくても鉱石の破片取れるだけマシなのかな?


「キュゥッ!」


 すると、取ってきたアイテムの山の中に潜っていたレヴィが突然飛び出してきた。


「レヴィ、どうしたの?」

「キュゥゥ…」


 んーこの反応…もしかして…。

 私はアイテムの山を崩して下の方のアイテムを漁る。破片…石ころ…石ころ…破片…破片…水晶玉…ってこれだ!

 私はその水晶玉を手に取って鑑定する。



 ペット用初級スキル取得玉(赤)【消耗品】

 使用回数:1回

 ペットに対してスキル取得が行える。玉の色によって使えるペットが異なる。各ペットに対して各級毎に一回ずつしか使えない。



 まさかこんな物まで拾ってくるとは…。とりあえずショーゴたちを呼ばないと。


「そんなもんがあんのかよ」

「それでどうするの? 誰がこれ持つ?」

「とは言ってもなぁ…」

「確かにユニークペットは欲しいが…」

「ここは女性陣の方がいいんじゃねー?」

「あらぁ~? そんな決め方でいいのかしら~?」

「ですが私たちよりも、今ペットを所持しているルカさんやアリスさんの方がよいのでは?」


 んー…でもネウラも嫌がってたから多分適合しないんだよねぇ…。ルカのアレニアはどうなんだろ?

 ということでルカを呼んでみて、アレニアにスキル取得玉を近づけてみた。だが、アレニアも嫌がるように後ろに下がった。

 ということで、私たちが所持しているペットたちには使えない色の玉なのだろう。まぁレヴィは青色っていうことがわかってるからいいとして、ネウラの色は何色なんだろ? ある程度関連しているなら緑とか茶色かな?


「それで振り出しに戻ったが、誰が所持する?」

「普通に考えたらショーゴたち四人だよね?」

「異議なし」


 まぁ、後は四人で相談して決めてね。私たちは寝るとしよう。



 ……寝れない…。昼過ぎに会ったあの人の発言が気になっているのだろうか? 少し外に出ようかな…?

 私は横で寝ているレヴィとネウラを起こさないようにベッドから出て、音を立てないように注意して外へ出る。

 他のプレイヤーたちも就寝しているのだろう。周りに騒いでいるような音は聞こえない。

 私は近くの椅子に座って月を見上げる。


「もう二日目が終わっちゃうのかぁ…」


 まだ二日しか経っていないのに、色々な事があった気がする。大豆の発見にネウラ、更には海花とルカもユニークペットを手に入れる。この調子だとあと二~三匹捕まえちゃうんじゃないかな…? それはそれで問題だろうから、運営も私たちの行動範囲外に移動させると思うけどね。


「嬢ちゃん、こんな月明りにどうしたん?」


 私は聞き覚えのある声を聞いてぱっと立ち上がる。そして森から出てきた男を睨みつける。


「ジャック、何か用でもあるの…?」

「今回はホンマにただ散歩してただけや。そしたら嬢ちゃん見つけたもんでな、声掛けてみただけや」


 この人は平気で嘘を付く人であろうから、私は警戒して彼を見続ける。


「今はそんな警戒せんでええよ。ホンマに散歩してただけなんやから」

「信用できません…」

「そんなに怒らせてもうたか? 軽いジョークやないか」

「それで…何の用ですか…」

「可愛い女の子と喋りたいっちゅーのに理由なんかいるんかいな?」

「あなたに言われても別に嬉しくないんですけど」

「カニス君にしてもそうやけど、皆自分に対して冷とぅない?」

「自業自得です」


 あんなことしといて、優しくしてもらえると思っている方がおかしい。それにちょっと気になる事があるから聞いておこうかな…? 嘘付かれる可能性あるけど…。


「じゃあ質問を真面目に答えてくれたら、少しは冷たくしないであげます」

「ホンマに? 何が聞きたいんや?」

「あなたは一体何者なんですか…?」

「だから言ったやろ? 自分はジャックっちゅー…」


 私は彼をじっと見つめる。すると彼も察したのか、言葉を直した。


「…自分は暗殺ギルド、グリムリーパーの団長やっとるジャックや」

「暗殺ギルド…」


 ということはやはり彼はPKということだろうか…? でもPKならなんであの時、私を倒さなかったんだろう…。


「ちょっと勘違いしているようやから説明するわ。暗殺ギルド言うても、そこら辺のプレイヤーをPKするわけやない。依頼を受けてPKするんや」

「依頼…?」

「せや。例えばPKを受けたプレイヤーがそのPKに仕返しをしたいとする。でも実力が足りなくて仕返しできない。そないな時に自分らの出番や。依頼人から報酬の前金受け取って、そのターゲットに報復する。そういった事を目的としたギルドや。一応誰彼構わず依頼を受けるっていうわけじゃないで」

「所謂義賊っていうやつですか…?」

「そんな上等なもんやない。ただ自分らは必殺仕事人みたいなのに憧れて、そういうのが好きな連中を集めてギルド作っただけや」


 おそらく嘘は言っていない。でもならどうして私に注意勧告をしたのかがわからない…。


「嬢ちゃん少し顔に出やすいところがあるな。どうして声掛けたか気になってる顔してるで」

「っ!?」


 嘘っ!? 私ってそんなわかりやすい顔してるのっ!?


「おっ、当たったって顔しとるな。適当に言ってみたけど当たるもんなんやな」

「むぅ…」


 からかわれた事に少し腹が立った。でも確かに、依頼を受けているわけでもなかったのに私に声掛けた事は気になった。


「まぁホンマは君を勧誘しようと思って声かけたんや」

「私を暗殺ギルドに…?」

「でも気が変わってやめたんや」

「理由は…?」

「そこは秘密や。こっちにも事情があるもんでな」


 まぁそれなら仕方ない…。


「ほな、自分はそろそろ戻るわ」

「わかった…」

「それと、最後に忠告や。PKギルド、七つの大罪には気ぃつけとき」

「七つの大罪…?」


 それが私と何の関係が…?


「理由はいくらでも後付け出来るからのぉ。ちゅーことで自分は伝えたからな」

「…ありがとうございます…」

「おっ! アリスちゃんデレてくれたっ!? 自分もしかしてチャンスあるんかいな!」

「いえ、それはないです」

「そうきっぱり言われるとキツイもんがあるんやで…?」

「でもまぁ、少しは評価を上げときます。ほんの少しですけど」


 そう言うと、彼はにっと笑ってそのまま去って行った。

 さてと、私もベッドに戻って寝ようかな。それにしても七つの大罪かぁ…。注意しないとなぁ。

なろうに接続できないと何もできないです…。

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