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Nostalgia world online  作者: naginagi
第二章
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キャンプイベント⑦

 拠点へ戻るために森を歩いていると【感知】スキルが反応する。モンスターかなと思って辺りを見渡すが、特にそういった影は見られなかった。ネウラの時のようにモンスターの幼体かと思って耳を澄ましてもみるが、やはりそういった音は聞こえなかった。

 すると、木の陰から一人の男性が姿を現した。


「嬢ちゃん、こんな森を一人で歩いてると危ないで」

「…誰?」

「そういや自己紹介がまだやったな。自分はジャックっちゅーもんや、よろしゅう」

「私はアリスです…」


 姿を現した男性は、頭から目元にかけてバンダナで隠していてイマイチ顔の全体像が分かりずらい。でもバンダナからはみ出ている髪が金色なので、おそらく金髪なのだろう。


「それで、私に何の用ですか?」

「いーや、女の子が一人で歩いてるのは危ない思ってな。よかったら送ってこうかとな」

「別に大丈夫です」


 なんか子供扱いされた気がする…。少しむっとしたので、そのまま彼の横を通り抜けようとする。すると私の首にナイフが構えられた。


「…何のつもりですか…」

「だから言うたやろ? 危ないって」

「あなたはPKか何かですか…?」

「さーって、どないやろうな」


 彼は私の首に構えたナイフを腰に仕舞う。まるでさっきの事を悪びれた様子もなく。つい私は彼を睨み返す。


「そんな怖い顔せんといてや。せっかく可愛いんやから」

「……」

「とはいえ少し気ぃ抜きすぎちゃうんか? もしほんとに自分がPKだったら君、死に戻りしてたで?」


 確かに少し気を抜きすぎていたかもしれない。心のどこかで、PKがイベントに参加するわけがないと思い込んでいたのだろう。だから今の彼の動きに反応できなかった。


「さてと、注意勧告は済んだし自分もう行くわ」

「…勝手にしてください…」

「そう機嫌悪くならんといてやー。ちょっとした冗談なんやからー」


 この人…嫌い…。

 私はそのまま彼を無視して拠点へ向かって歩き始めた。



 ---------------------------------------------------------------



「何をしているんですか」


 アリスが去った後に、ジャックが寄りかかっている木の上から声が掛かる。


「いやぁーちょっと女の子ナンパしてただけや」

「あれがナンパなら、世の中の犯罪者はナンパで通りますね」

「カニス君ちょっと自分に冷たくない?」

「当初の計画通りにしなかったですからね。あれじゃあ彼女絶対に入ってくれませんよ?」

「気が変わったんや」

「はい?」


 ジャックは、姿を見せないカニスに対して淡々と答える。


「確かに最初はあの子を口説く気もあった。でもあの子の目を直に見て気が変わったんや」

「目…ですか?」

「あの子はぶれない。そう、良い意味でも悪い意味でもな。だから勧誘するだけ無駄と思ったんや」

「そんなのが勧誘しない理由だったと?」

「それに、あんな危うい子をうちに入れとく方が危ないわ。確かにスキルからしてうちにピッタリやけどな。でもそれだけや。だから勧誘しなかった」

「んー私からしたらただの女の子のように見えましたが…」


 ジャックはカニスの発言にため息を付く。


「カニス君、普通の女の子があんな人を始末するだけのようなスキルを取り続けるわけないやろ?」

「ですが、そういったのも効率を重視してというのもありますし…」

「効率だけなら確かに有り得る。でもあの子の闘技イベントの一試合目見てみぃ」

「…すいません、勉強不足です」

「あの子…笑ってたんやで? 一瞬の事でちゃんと見ないとわからんけど、首を切断した瞬間に薄っすらとな。あれを見た瞬間、自分鳥肌が立ったわ。それでも効率重視って言えるんかいな?」


 カニスは反論できなかった。効率重視ならそういうスキルも取っているだろうとは思っていたが、相手を倒した瞬間笑みを浮かべる猟奇的な部分については気づかなかった。


「とは言っても、あの子が笑ったのは一試合目以降見てないがな。まぁ大方対戦相手が怒らせるようなことをしたんやろうな」

「怒らせた相手にはそういう部分が出てくると? そういうことですか?」

「まだ憶測やけどな。まぁ、おそらくは敵と認識した相手には容赦がないタイプや。…なぁカニス君、そんな子を暗殺ギルドに入れられるか?」

「…考えが及ばす…申し訳ありません…」

「別に説教っちゅーわけやない。ただ、注意しといたほうがええで。七つの大罪のやつらも動き始めてるっちゅー話やからな。遅かれ早かれあの子とぶつかるやろ」

「では我々グリムリーパーはどのように…」

「傍観や傍観」

「それでよろしいのですか?」

「少なくとも今うちとあっちが当たるメリットはない。だったら傍観しかないやろ。それに…」

「それに?」

「あの子はまだ牙を隠しとるだろうしな、触らぬ姫に祟りなしっちゅーことや」


 ほんま、首狩り姫とは妙な事を言うたもんや。姫は姫でもあの子は冷女と書いて『ひめ』やないかと思うけどな。敵対者には容赦しない冷酷なお姫様ちゅーほうがな。



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 はぁ…。せっかく楽しかった気分が一気に落ちた…。確かに私も不用心だった部分もあるけど…。んー! やめやめ! こんな顔ルカたちに見せたら心配させちゃう! あんな人の事なんかもう忘れよう!

 私は顔をぱしんと両手で叩いて気持ちを切り替える。


 その後、私が拠点に着いたのはちょうど夕方ぐらいだった。しかし、まだ誰も帰ってきていないようなので一人で食事の支度をしようと思う。

 今日のご飯は魚の塩焼きと野菜炒めにしようかな? キノコとかがあればホイル焼きとかでもいいんだけどね。ってアルミホイルがなかった…。そもそもアルミホイルの原料はアルミニウムだった気がするけど…。アルミニウムってそのままあるのかな?

 まぁ、ないものを強請っても仕方ないし、早いところ野菜炒め作ろうかな? とはいえ、もっと遅くなると困るしどれぐらいで戻ってくるか連絡してみよっと。


 それぞれに連絡をすると、ルカからはすぐ返事が戻ってきた。どうやらそろそろ拠点に着くとのことだ。ショーゴの方も連絡が来て、もう少し時間が掛かるらしい。とはいえ二時間以内には戻れるとのことだ。

 じゃあルカが戻ってくるまで少し待ってようかな?


 しばらくするとルカが戻ってきた。


「あっルカーお帰りー…?」

「ただいま」

「…もしかしてルカも…?」

「何が?」

「何って…その肩にいる子蜘蛛の事なんだけど…」


 朝は海花で夜はルカか…。ホント私の知り合いのペットの遭遇率凄いな…。

 するとルカがその子蜘蛛が付いて来た経歴を語り始めた。


「あれは北の山脈に到着して、適当に鉱石を掘ってた時、子蜘蛛を見つけた」

「いきなり話がぶっ飛んだね…」

「それで子蜘蛛が攻撃してこないから、ネウラと一緒なのかと思った」

「なるほど…」

「それで連れてきた」

「うっうん…」


 つまりルカもペットが欲しかったってことだよね…? まぁペットいると楽しくなるし、気持ちはわかるよ。


「それでその子蜘蛛はなんていうモンスターだったの?」

「土蜘蛛」

「…ん?」


 土蜘蛛…? 土属性の蜘蛛ってことだよね? まさか妖怪の土蜘蛛とか言わないよね? 一応確認しないと…。


「ルカ、土蜘蛛って土属性の蜘蛛ってことだよね?」

「土蜘蛛ってなってた。たぶん妖怪のやつ」

「ちっちなみにスキルレベルはあった…?」


 いやいや! まだわからない! スキルレベルがあればきっと土属性の蜘蛛のはず!


「スキルレベルない。それに幼体って書いてあった」


 幼体はともかく、スキルレベルがないってことは…。ユニークモンスターじゃないですかやだー…。

 てか幻獣って妖怪もいるの…? ってことは鵺とか天狗とかも出てくるってことなんだよね…? それならそれで妖狐とかがいいかなぁ…尻尾もモフモフしてみたい…。

 とはいえ、土蜘蛛の幼体かぁ…。何食べるんだろう…? やっぱりお肉かな…? てか絶対ショーゴたち驚くよね…。はぁ…今日は厄日なのだろうか…?

やらかしは連鎖する!

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