キャンプイベント④
またロリっ娘にしてしまってな…。
「海花、その子は誰?」
とりあえずもう一度聞く。うん、だって海花が小学生ぐらいの女の子連れてきてるんだもん。これは通報も待ったなしかな?
「えーっと…その…お姉様…この子は…」
海花が説明しずらそうにしていると、彼女の取り巻きの第一陣の彼が前に出た。
「詳しくは私から説明させて頂きます」
「えっとあなたは確か…」
「セルトと言います。そういえば自己紹介をしてませんでしたね、アリスさ…ま?」
「…さんでいい。それでセルトさん、何があったの?」
名前がセルトって言うなんて知らなかったよ…。言われてみれば名前聞いてなかったけど…。てかなんであなたまで私の事を様で呼ぼうとしたの…。
「私たちは初日に東の方へ探索に行きました。そこで、少し北東になるのですが小さい遺跡を見つけまして、探索しようと思ったのですが…。そこで海花様が走って中に入ったところまではよかったのですが…」
「…海花…」
「すっすみませんお姉様! つい気が高ぶってしまって…」
そういう遺跡には普通罠とか仕掛けられてるだろうに…。ホントよく死ななかったね…。
「そこで海花様がある部屋に入って探索しようと真ん中にいった途端、その部屋の床が崩れてしまったのですよ」
「はいっ!?」
「幸い少しダメージは負った程度で済んだのですが、さすがの私たちもロープなどは持っておらず、どう救助すればよいか相談していたところ…」
「海花がその子を連れて戻ってきた…ってところかな?」
「はい…」
頭が痛い…。とりあえず補足させるために海花に説明させる。
「えっと…あたしが穴に落ちてからの話ですよね…?」
「うん」
「えーっと…あたしは穴に落ちてからしばらく進むと二つに分かれた道に出たんですけど、それぞれの道の奥に宝箱とこの子が見えたんです」
「それで海花はその子の方の道に行ったと?」
「あたしとしてもその時に何故この子の方に向かったかわからなかったんですけど、何故か魅かれた感じがあったんです」
んー…本能とかそういうのが反応したりしたのかな?
「それでしばらく道を歩いていると、後ろが塞がれて戻れなくなったのでそのままこの子の元へ行って、この子に触ってみたところ急に起き上がってあたしに付いて来たってところですね。あっ帰りはいつの間にか遺跡の入り口に転移してました」
となると、その遺跡は宝箱かその子を連れていくと自動的に転移される形のダンジョンってところか。とはいえ宝箱も当たりという保証がないし、行くのは少し危険だよね。
「それで海花は私にどうしてもらいに来たの?」
「お姉様は確か鑑定系のスキルが高かったと思ったので、この子を調べれるんじゃないかと思いまして…」
なるほどね。海花たちだとまだスキルレベルが足りなくて調べられないって感じなのか。まぁいいでしょう。
私は、白いワンピースを着た少女に対して【鑑定士】スキルを使用する。
名前:上位機械人形【制限中】
―ステータス―
【武器対応】【傀儡術】【命令術】【強化魔法(弱体化)】【感知】【隠蔽】【状態異常耐性】【自動修復(弱体化)】【MP上昇+(弱体化)】【INT上昇(弱体化)】
特殊スキル
【人形作製】【配下強化(弱体化)】【思念伝達(使用不可)】
【制限中】:リミッターが掛けられている状態。解放する事で弱体化や使用不可状態のスキルが解放される。
【武器対応】:あらゆる武器を使うことができる。
【命令術】:配下やペットに対して命令した通りに動かせる。
【強化魔法】:対象を強化する魔法。効果は使用した魔法によって異なる。
【状態異常耐性】:状態異常に対する耐性。
【自動修復】:MPを使用してHPと欠損部位を修復する。
【人形作製】:材料を使用して配下となる人形を作製する。
【配下強化】:自分の周囲にいる配下の人形を強化する。距離が近ければ近いほど強化値は大きくなる。
【思念伝達】:言葉を発する必要なく、対象に思念で伝える事が出来る。
ねぇ海花、この子ユニークモンスターじゃないの。しかも指揮官機系スキル持ちの。
「…海花」
「はっはい!」
「この子、ユニークモンスターだから頑張ってね」
「え?」
さてと、面倒事になる前に川でも行こうかなー。そう思って近くに置いてあったテーブルにパンを置こうと歩き始める。すると、海花が私の腰にしがみ付いて来た。えぇぃ! 私はもう面倒事は嫌なんだー!
「お姉様ぁぁぁ! 見捨てないでくださいぃぃぃ!」
「そんな強そうな子連れてきといて何言ってるの! あとは海花の問題でしょ!」
「そんなこと言われましてもー!」
私と海花が争っていると、機械人形の少女が肩まである黒い髪を揺らして近づいてきた。
「失礼。マスター、よろしいでしょうか?」
「「は…?」」
えっと…海花の方を向いてマスターって言ってるから、海花でいいんだよね?
「えっと…マスターってあたしのこと…?」
「イエス。マスターは私の事を目覚めさせてくれた。故にあなたが私のマスターです」
「ちょっちょっと待って!」
「イエス。何か問題でもありましたか?」
「あなたを目覚めさせたって…あたしはただ…」
「イエス。私はマスターの『想い』を受け取って目覚めました。故に私はマスターの『想い』を叶えるために最善を尽くします」
「想いってまさかっ!?」
突然海花が顔を赤くしてその場にしゃがみ込んだ。一体何をしたというの…。
「お願いだからあれは内緒にしてっ!」
「イエス。マスターの仰せのままに」
とりあえず相談事は終わったらしい。でもあの子が完全に海花を主と認めている以上、他のプレイヤーが手に入れることはできないし…。…はぁ…。
「海花、その子と契約しちゃって」
「契約…?」
「もうほとんど契約できてるみたいだから、あとは名前を付けてあげれば完了すると思うよ」
「名前…」
海花は、自身のペットとなる機械人形の少女をじっと見つめる。
彼女も主である海花をじっと見つめている。
「…あなたの名前は『黒花』よ。黒い花と書いて黒花。いい?」
「イエス、マスター。あなたから頂いた名前、大切にします」
その瞬間、黒花の身体が光に包まれ、その光が消えると黒い召喚石が海花の手に収まっていた。
「えっと…」
「それで契約完了だよ。ちょっと見せて」
「はい、お姉様」
私は、海花が持っている黒い召喚石に対して鑑定を掛ける。
黒花の召喚石【非売品】
契約者:海花
このアイテムは売ることが出来ず、また奪われる事も壊れる事もない。
うん。ちゃんと契約者が海花になってるね。でもこの名前って…。
「海花ってもしかして、自分の気に入った物に自分の名前の一部あげたりしてる?」
「っ!? そっそんなことありませんよお姉様っ!」
動揺してるってことはそうなんだろう。
「まぁともかく、黒花を再度出してあげなきゃね」
「えっと…どうやって出せば…」
「名前を呼んで出てくるように言えば出てくるよ。この子たちみたいに」
私のペットたちは嬉しそうに声を上げる。
「それがお姉様のペットたちですか?」
「そうだよ。蛇の方がレヴィ、緑色の人型の子がネウラ」
「キュゥゥ!」
「―!」
「ではあたしも呼ばないといけませんね。…黒花、出てきて」
海花が呼ぶと、黒花が白いワンピースの裾を指先で軽くつまんで軽く一礼しながら出てきた。所謂メイドさんがするような挨拶だろう。
「黒花、参上致しました。ご用件を、マスター」
「えーっと…そういうのはいいんだけど…」
「了解しました、マスター。以後気を付けます」
「べっ別に叱ったわけじゃなくて…」
さすが機械なだけあって真面目なんだね。っと、そうだそうだ。
「レヴィ、ネウラ。黒花に挨拶して」
「キュゥ!」
「―!」
「これはご丁寧にありがとうございます。私は黒花と申します。以後お見知りおきを」
うぉ…。対応が本当に人間っぽい。運営さん力入れすぎじゃないですかねぇ…。すると海花が私の裾を引いて来た。
「どうしたの?」
「その…あたしスキルどうしたらいいですか…?」
「……」
いや、それは私に言われても…。黒花を活かす形でスタイル組んでもいいと思うけどなぁ…。例えば…一緒に【傀儡術】取って人形操って戦う…とか…? そもそも人形って自動なのか手動なのかでも変化してくるのかな? というか、自動で動く人形って作れるものなの…?
「黒花、ちょっといい?」
「イエス、なんでしょうか?」
「黒花って自動で動く人形って作れるの?」
「イエス。材料さえあれば可能です」
作れるんかいっ! となると黒花は手札が揃ったら強くなるタイプかぁ…。
「ですが、自動で動かすためにはコアが必要です」
「コア?」
「私たち機械人形を作製する上で必須の材料です。指揮官機である私にも【強化魔法】が付加されたコアが埋め込まれております」
「ちなみにそれはどこに…」
「もしかしたら私が眠っていた場所にあるかもしれません。しかし、マスターの発言から道はもう閉ざされてしまっているため、取りに行くことはできないと思われます」
海花、どんまい。そういえば機械人形になった場合はペット扱いになるのだろうか? でも黒花が上位機械人形だから、その可能性は高いよね。しかも黒花みたいに【自動修復】とかあるとも限らないから、その修理分の材料も集めないといけない感じになるのか。海花、がんばれ。
海花の逃げ道を無くしていくスタイル。
さぁ! 海花が黒花に告げた『想い』とは一体!




