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Nostalgia world online  作者: naginagi
第二章
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奇妙な縁

意外に海花の台詞に悩みます…。

 それから私はクラー湖へ向かったが、やはりAGIが上がっているためか、かなり移動時間を短縮することができた。おかげで苗木を集めてエアストに戻るのに半日も掛からず、日が沈む前に戻る事が出来た。


 私が街に戻る為に森から出ると、何人かのプレイヤーが集まっていた。何事かなと思ったが、よく顔を見てみると朝私に絡んできたネットアイドルたちだった。

 だけど朝より人数が半分以上減っているけど、何かあったのだろうか?


「あっ戻ってきたわね」

「まだ何か用なの?」

「えっと…その…」


 なんだろう? 口をもごもごさせながらこちらをチラチラと見ている。何か言いたいことでもあるのかな?

 すると取り巻きの第一陣の彼が一言声を掛けると、彼女は頷いて私の方を見る。


「朝の時はごめんなさい!」

「え?」


 彼女が私に頭を下げると、他の取り巻きの人たちも一斉に頭を下げる。

 私には何が何だかわからないが、彼女はそのまま説明する。


「ネットアイドルで有名になったからって、このゲームの世界まで偉いと勘違いしてあなたに迷惑をかけてごめんなさい!」

「うっうん…」

「それで…その…反省してるから許してください!」


 許すも何も…あれは朝に方が付いたから、私としては終わってた内容なんだけどなぁ…。


「そういえば随分人数減ってるけど何かあったの?」

「ここにいないファンたちは今朝の一件であたしから離れていったわ…。あたしといれば美味しい思いが出来るっていうファンもいたようだし…」


 確かにアイドルの彼女といれば何かしら優遇されることもあっただろう。そういうのを理由に彼女の取り巻きとしていたのだろう。でも彼女にそんな待遇などないことがわかって見限った。そういうことだろう。

 別にゲームをするスタイルは自由だから口出しできないけど、その人の立場を利用してまでする事ではないと思う。あくまで私の考え方だけど。

 とは言っても、私もリンとかに頼ってる部分があるから何とも言えないんだけど…。


「でも、そんなあなたにもまだファンが残ってる。それって嬉しい事じゃないかな?」


 彼らの中でも純粋に彼女を思っているファンだっている。第一陣の彼だってその一人だ。

 すると彼女は目に涙を溜めて突然泣き始めた。

 いきなり泣き始めたので私もあたふたしてしまう。


「わっ私何か言った!? いきなり泣かないでよっ!?」

「泣いてないっ!」

「でもそんなに…」

「泣いてないってばっ!」


 んー…ここで言い続けても多分否定するだろうし、しばらく大人しく見てようかな…。

 しばらくすると彼女は泣き止んで、再びこちらを見た。


「それで…しばらく一人で行動しようかなと思ってるんだけど…その…」


 彼女は腕を手前に寄せて、一指し指同士をツンツンとし始めた。しかもなんだか…顔も少し赤い…? 夕日のせいかな?

 彼女の後ろでファンたちが「海花様っ! 頑張ってっ!」と言っているが、何を頑張るのだろう…。


「別に一人で行動するのは悪くはないと思うよ。私だって一人で行動してるし」

「そっそうなの…。じゃあPTとかって組まないの…?」

「んーまぁ一緒に行動するなら組んだりするかな?」

「そう…。…じゃあその…一つお願いしたいんだけど…」


 私にお願い? なんだろう…。


「その…あたしと…ぱっパーティを…組んでほしいんだけど…」

「…えっ?」


 私とPTを組みたいってこと? その事を伝えた彼女は茹ダコみたいに顔が真っ赤になった。なんかその様子見てたらタコ食べたくなってきた。


「だっだからっ! あたしとPT組んでほしいのっ!」

「えーっと…理由は? そこのファンの人たちとじゃ駄目なの?」


 別に私と組まなくてもファンの人たちがいるし、彼らじゃだめなのかな?


「あたし自身がちょっと今はファンと距離置きたいっていうのがあって…。皆には悪いとは思うけど…」


 そう聞いて後ろの彼らを見たけど、特に誰も不満はなさそうだった。

 と言うことは彼らは納得して距離を置くということなのか。でもそれでなんで私なんだろう?


「それは今朝の事とファンがいなくなったことが原因?」

「まぁ…そうかな…。チヤホヤされてた分、裏切られた…とまではいかないけどショックな部分があったからね…。それにあたしも心を落ち着かせたいっていうこともあるし…。…この世界じゃあたしは『海花』っていう、一人のプレイヤーだってことを受け止めなきゃいけないしね…」

「そこで現実でも関係のない私ならってこと?」

「本当に自分勝手なことなのはわかってる…。それに女の子だから…その…あんまり気を遣わなくていいかなって…」


 まぁ、彼女のファンを見た感じ男性しかいないし…。多分女の子の知り合いなんて学校とかぐらいしかいないんだろうな。私も人の事言えないけど…。


「まぁ私も特にやることないし…」

「じゃっじゃあっ!」


 その瞬間、彼女の表情がぱぁっと明るくなった。


「ただしっ!」

「っはいっ!」

「付き合うのは昼頃に告知が来たイベントまでの一週間ね。それまでに色々受け入れる事。いい?」

「うんっ! ありがとうっ!」

「わっ!?」


 突然彼女に抱き着かれて、そのまま後ろに倒れ込む形になった。それほど嬉しかったのか…。

 でもこのまま地面に寝っ転がったままは嫌だから、無理矢理剥がして身体を起こす。


「それで? 私はあなたの名前聞いてないんだけど」

「あっそういえばそうだった。あたしのプレイヤー名は海花。昨日から始めた第二陣です」

「私はアリス。第一陣だよ」


 まぁ自己紹介は基本ということでしておきます。一応戦った仲だけどね。


「それともう口調戻していいよ。なんか堅っ苦しくてめんどくさい」

「なっ!? 人が謝ろうと思って丁寧に話してたらその言い方って何よっ!」

「あー…でもその言い方もめんどくさいかも…」

「じゃあどうすればいいのよっ!」


 でもなんかしおらしくしてるのも変だと思うしなぁ…。


「友達と話す感じの口調でいいよ」

「っ…」


 あれ? 急に海花が黙った。地雷踏んじゃったかな…?


「まっまぁ普段通りでいいや…」

「うんっ…」


 たぶん私と一緒であんまり友達できなかったんだろうなぁ…。今後そのネタで話すのはやめておこう。私もダメージ食らうし。


 彼女とPT組むのはいいんだけど、さすがに初心者に夜の森で狩りをさせるのはどうかと思うので、活動は平日は毎日夜七時頃から十時頃までにしようと思う。その事を伝えると彼女も了承した。まぁイベントが来週の土曜日の昼からだから、それまでにどれぐらい戦闘に慣れさせられるかかな?


 そして彼女の戦闘スタイルを聞いてみた。まぁ予想は付いたがやっぱり魔法職を目指すようだ。そして私も魔法を使うが、使い方が随分特殊だ。なので、彼女にどう戦い方を教えればいいかがいまいち思い浮かばない。どうしよう…。

 その事を彼女に話すと。


「あれからあたしも掲示板を見てアリスの事調べたけど、まぁ…随分特殊ってことはわかってたから…」


 と言った感じに顔を反らされたので、そこまでは期待はされていないのだろう…。くそぅ…。少しは先輩面してみたかった…。


 そして彼女のファンたちは合流した時に備えて、各々鍛えてくるらしい。海花、良い人たちに囲まれてるじゃん。彼らはその内、海花の親衛隊ギルドでも作るらしい。ただ、今回みたいな事が起きないようにメンバーは厳選するらしい。まぁそんなんで海花が酷い目に会うのもなんだしね。


 とりあえず武器はともかく、防具は早いうちにどうにかしたほうがいいからリーネさんのところに向かおう。でも絶対混んでるだろうなぁ…。先にメッセージ送っておこっと。


「…アリスってやっぱり凄い人なの?」

「何故…?」

「掲示板とか見てるんだけど、闘技イベントの優勝者をあと一歩まで追い詰めたんでしょ? ってことはアリスってやっぱり結構強いんだよね?」


 んー…そう言われるとちょっと誤解が…。別に私自身はそこまで強くはないんだよね。ただ【切断】スキルという一撃必殺スキルがあるから、それを当てればどうにでもなるっていう感じなんだよね。

 リンとの戦いにしても、私の所持スキルを知られてなかったから戦えた部分があるし、単純に運がよかったところもある。もし本当に格上と当たったら、きっと私は一方的に倒されるだろう。


 そう考えると、やっぱりこのまま森での戦闘に特化した方がいいんだよねきっと…。今更どんな地形でも対応できるようなスキルを揃えたとしても中途半端になりそうだし…。

 となると、掲示板で見た派生魔法…。この中で土と闇に関連して良さそうなのを探さないといけないのか…。って言っても、まだ情報がないから取ろうとは思わないんだけどね。


 そういえば海花も、魔法については光だけ取って他は武器と補助スキルを取得したそうだ。まぁここでいきなり四種類取った、とか言われても私は困るけどね…。

 でもまずは戦闘に慣れさせる意味で色々させようかな。ふふっ。さぁどう慣れさせようかな~?



「うっ…なんだか寒気が…」


 そして、当事者の海花は一人震えていた。


「まぁ気のせいよね…」


 この一週間、彼女の身に何が起こるかを知らずに。

関東地方は台風直撃ですので皆さん気を付けてください。

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