闘技イベント閉幕
前話の第48話の内容と文章を少し変更修正しました。そのため、「リバースグラビティ」を「チェンジグラビティ」にスキル名を変更しました。「チェンジグラビティ」の効果がわかりにくかったため、修正を行いました。
「んっ…」
なんだか柔らかくて温かいものの上にいるような…。でも瞼が重くてうまく開けない…。とりあえず頑張って目を開けよう。
「んぅっ…?」
目を開けたら目の前は真っ暗だった。
「んぅ?」
「アリス、起きた?」
上の方からルカの声がする気がする。と言うことは…。
私は寝ぼけているであろう頭をフル回転させて今の状況を考えた。
とりあえずごろんと上を向くと、真っ暗な視界から少し眩しく光る太陽とルカの顔が映った。
「…おはよ…」
「おはよ」
私はゆっくりと身体を起こす。どうやら私はルカの膝の上で寝ていたようだ。
「あれ…? 私…試合は…?」
「もしかしてアリス、覚えてない?」
「何が?」
んーリンの複合魔法食らってからの記憶が…。【重力魔法】を使ったとこまではなんとか覚えてる…。そこからどうしたんだっけ…?
「アリス、リン追い詰めたところで、意識失ってそのまま倒れた」
「えっ!?」
ということはあと少しで勝てたのか…。あぅぅ…悔しぃ…。そういえばそのリンはどこにいるの?
すると今度はガウルたち四人組が私が起きたことに気付いてこちらに寄ってきました。
「おっアリス起きたか」
「アリスちゃんかっこよかったわよ~」
「アリスちゃん惜しかったね!」
またもやこのラッシュですか…。そろそろ慣れないと…。あれ? クルル、そんなに心配そうな顔してどうしたの?
「あの…アリスさん…」
「ん?」
「えっと…リンさんの複合魔法食らった時もそうですけど、結構痛そうにしているのが見えたんですけど…痛覚軽減って…どれぐらいにしているんですか…?」
痛覚軽減って登録時に決めたやつでしょ? えーっと…。
「確か最低値にしてたから…五十%だっけ?」
「ごっ五十っ!?」
「いやいや嘘でしょアリスちゃん…」
「ちょっとお姉さんびっくりしちゃったわよ~…」
「アリス…お前ってMなのか…?」
いやなんの話してるかわからないけど…。とりあえずMではない…と思う…。
「痛覚だからもしかしたら辛味とかも軽減されるのかなーっと思って最低値にしたんだけど…」
もしかして辛すぎると痛いっていう分類に入るかもと思ってつい…。
「アリス…悪い事は言わん…今からでも遅くないから運営に連絡して痛覚軽減を九十%ぐらいにしてもらえ…」
「んー…」
痛覚軽減に関してはある程度年齢によって上限値が定められているため、十八歳…高校卒業以上で痛覚軽減が五十%まで設定できる。ちなみに変更する場合は運営に連絡する必要がある。
これは例えば、PKとかに脅されて無理矢理痛覚軽減を最低値にされたりすることを防ぐために運営が変更管理をしているらしい。
まぁ度胸試しとかそんなので問題になると困るもんね。
でも噂では二十歳以上では強制的に痛覚軽減を無くすスキルを持つモンスターがいるらしい…。それはそれで嫌だなぁ…。
「でももうこの痛覚軽減で慣れちゃってるから、今変えちゃうとなんか調子が変になりそう」
「むっ…だがな…あのような悲痛な声を聞く側からするとな…」
「それに…今はこの世界がリアルっていうことを感じたいっていうのもあるから…」
私の我儘…というか自分勝手な考えだけど、少しでもこの世界を現実だと思いたいから痛覚軽減を最大値から変えようということは考えなかった。
確かに痛い思いもしたこともあるけど、それはそれでこの世界を感じられるってことなのかなって私は思ってる。
「だから変えるっていう考えはないかなーって…」
「やっぱりアリス、変わってる」
ずっと口を挿まなかったルカが口を開いた。
「やっぱり変わってる…?」
「うん」
そんなきっぱり言わなくても…。
「でもそこが、アリスのいいところ。だから、街の人とうまくやってる」
「確かに、アリスさんが最初の時の危険性を知らせてくれましたからね」
「そこまでの思いがあるなら俺はもう何も言わん」
「でも辛かったらすぐ変えてもらうのよ~?」
「アリスちゃんがM…アリスちゃんがM…アリスちゃんがえ…ぐあっ!?」
なんかシュウがクルルにタコ殴りにされてるけど放っておこう。とりあえず納得してもらえたのかな?
「そういえばリンは?」
「あぁ、そういえばアリスは寝続けてたから知らんのか。もうB会場の決勝が…今終わったようだな」
「えっ!?」
『試合終了! 勝者! リン選手!』
タウロス君の声が聞こえたということはそういうことなのだろう…。えっと…私が三回戦目だから…大体今は五回戦目ぐらいなのかな? 私はそんぐらい寝ていたのか…。
するとリンが観客席に戻ってきた。リンは私の姿を見て少し気まずそうにする。
「あっあら~…アリス起きたのね~…」
「うっうん…。あっ…Bブロック決勝突破おめでとう…」
「えぇ、ありがとね~…」
なんかリンが気まずそうにするから私まで気まずい感じになっちゃった…。どうしよう…。
でもこのままじゃ気まずいままになっちゃうから言わないと…!
「りっリンっ!」
「なっなぁに~!?」
「隣りに座ってっ!」
「わっわかったわ~…」
私に言われてリンは隣にゆっくり座った。
「えっとね…その…試合の事は私気にしてない…というか…ちょっと熱くなりすぎただけっていうか…その…ごめんなさい…」
今思えばリンに勝ってみたい衝動がなんか出てきて、多分少しおかしくなってたところがあるし…。
するとリンも口を開いた。
「私こそごめんなさい…。私もアリスの前では格好つけようとして少し熱くなってたところあるし…なんかアリスを挑発するようなことも言ってた気がするし…」
確かに挑発するようなことを言ってたような気もするけど…。でも私としては今はもう気にしてないし、これから他のブロックの決勝突破のプレイヤーと戦うんだし、元気ださせなくちゃいけないんだけどどうしたら…。
って言っても私に出来ることはこれぐらいかな? そう思って私はリンにぎゅっと抱き着く。
「あっアリスっ!?」
「とりあえず、お互い熱くなってて少し変になってたってことでお互い謝ったからこれでこの話はお仕舞いっ! だから今度はリンを元気づけるのっ!」
「っ~~~!!」
私がそう言うと、リンは嬉しそうに私を抱きしめ返す。ちょっと苦しいかも…。
「やっぱりアリスって可愛いわぁ~! アリス大好きよ~!」
「わっ私もリン大好きだよぉ~…」
「よしっ! これでこの後の試合も頑張れるわ~! アリス~応援よろしくね~」
そしてその後、A、B、C、D会場の決勝突破者でランダムに対戦相手が決められ、リンはC会場でまさかの準決勝まで進んだショーゴに勝った相手と戦うこととなった。しかし、相手も魔法職であったのだが、別のベクトルでやる気を出したリンの前に伏していった。
そしてAとD会場の決勝突破者は団長さんとエクレールさんだった。まさかの銀翼の団長副団長対決であり、激戦の末、当初不利とされていた団長さんが勝利した。
そして決勝戦、リンと団長さんが戦うこととなった。この試合も団長さんとエクレールさんとの試合同様に激しい試合だったが、予想以上にエクレールさんとの試合で団長さんの盾の耐久度が下がっていたのか、攻撃を防いでいる最中に耐久度が0となってしまい、リン相手に優位に進めることができていた付加効果がなくなってしまった。
武器防具は耐久度がなくなってしまうと壊れることはないが、付加効果が無くなり、威力や耐性なども下がってしまうのだ。
そしてそれが決定打となり、団長さんはリンの魔法を防ぎきれなくなってそのまま倒されてしまった。これによって、闘技イベントの優勝者はリンとなった。
最後に本選出場者がフィールドに集められ、表彰式のようなことをして闘技イベントは幕を閉じた。賞金は後日メッセージに付属されて送られてくるらしい。
そして一週間後にはついに第二陣が合流するため、色々やるべきことをやっておかないと…。
これにて第一章は終了となります。
お便りコーナーとかを活動報告で作ったほうがいいのだろうか…。




