準備①
さて困った…。私の戦闘方法と言っても【切断】スキルに頼り切っている部分がある…。まぁそれについては当てるのも技術だからいいとは思うんだけど、それ以外に武器がないということだ…。PVPとなると相手も色々考えてくるし、そんな簡単に当てることができないだろう。
さてどうするか…。これから新しいスキルを取って育てるべきか…。まぁ魔法は取っておいても別に構わないだろうしそこはいいとして…。
「どうしよう…」
そんな調子で悩みながらうろうろしていると、後ろから声が掛かった。
「あっ! この前のおねーちゃんだ!」
「おねーちゃん! またあそぼーよ!」
「あそぼー!」
振り向いてみると、何人かの子供たちが私に遊ぼうと声を掛けてきていた。彼らは以前一緒に遊んだ子供たちで、【童謡】スキルがより上がる要因にもなったのである意味感謝してる。それにずーっと考えっぱなしじゃ気も滅入るし、気分転換にもいいかもね。
「せっかく誘ってもらえたし遊ぼっか」
「わーいわーい!」
「あそぼあそぼー!」
さてと、子供たちと遊ぶことだし、【水泳】スキルと【童歌】スキルを入れ替えてっと。さてどんぐらい上がるかな?
「それで何して遊ぶの?」
「おにごっこー!」
「かくれんぼー!」
「かごめかごめー!」
「おうたー」
……私…倒れないかな…? 頑張ろう…。
「ふぅ…」
「おねーちゃん見つけたからあと一人だー」
「頑張ってね」
「うんー!」
いやぁ…ステータス的に鬼ごっこは大変だった…。あっさり捕まると怒られちゃうし、あんまり捕まらないと泣いちゃうし…。ステータスが子供たちに比べて高すぎるっていうのも問題だね…。スキル交換しとけばよかった…。というか…。
「ちょっと皆重いんだけど…」
「たかいたかーい!」
「おねーちゃんの着物きれー!」
「ふわふわー!」
「いいなー! あたしもきたーい!」
とまぁこんな感じで、座っている私の頭の上に乗ってきたりしがみ付いたりしてきてるんだよね…。子供が苦手っていうわけじゃないけど、この無邪気さが少し大変…。
そんなこんなで子供たちに構っていると、鬼の子が最後の一人を見つけてきました。
「じゃあ次かごめかごめー!」
「あたし鬼やるー!」
「ぼくも鬼したいー!」
「鬼やりたい人はジャンケンしようね。喧嘩はダメだよ」
「「「はーい!」」」
とまぁ喧嘩になる前にジャンケンで決めさせることに成功した。よかった…。
「じゃあ始めるよ。準備はいい?」
「いいよー!」
「おねーちゃんもいくよー! せーっの!」
「「「「「かーごめかーごめー♪かーごのなーかのとーりーはー♪いーついーつ出ーやーる♪よーあーけーのばーんに♪つーるとかーめがすーべったー♪」」」」」
「後ろの正面だーあれ…♪?」
そう私が歌った瞬間、子供たち全員が私の方へ顔を向けた。
「え?」
「「「「「あれ…?」」」」」
「皆どうしたの? いきなりこっち向いて?」
「んー…わかんない」
「なんかおねーちゃんの方につい向いちゃったー」
「なんでだろー?」
「なんかおねーさんに呼ばれたような気がしたー」
「ぼくもぼくもー」
どういうことだろ? 何か私が変な事したのかな? スキルも特に変なのは…。
「あっ!」
もしかして派生スキルの内に影響したのがあるかもしれない。私はスキルを確認してみると一つレベルが上がっているスキルを見つけた。
【童歌Lv2】
でもこれは子供たちと遊んでいたから上がったということもある。なので今度はこの【童歌】スキルを【水泳】と入れ替えてもう一度かごめかごめを歌ってみた。もちろん私は歌う側だ。
すると今度は子供たちは私の方を向くことはなかった。これで確信した。【童歌】スキルは歌を歌うことで効果を発揮するタイプのスキルなんだと。
でもよかった…。もしこれが攻撃系のスキルとして発動してたら子供たちが危なかったんだよね…? そう考えると不用意に【童歌】をセットするのはやめたほうがいいかな…? ルカにお願いして手伝ってもらおうかな…? リンやショーゴに言うとまた何か言われそうだし…。
でも【童歌】スキルに反応する歌の基準って何だろ? おそらく何にでも反応するわけじゃないと思うんだよね。今のところ反応したのがかごめかごめだけだから判断つかないけど…。かくれんぼも私が鬼になったわけじゃないから効果があったかわからないし…。
そういえば人に効くってことはモンスターにも効くのかな? それも確認しないと…。【鑑定士】スキルになったから少し詳しくステータスを確認できるようになったらしいし、その確認もするからちょうどいいかな?
ルカにお願いするのはその後にしよう。
子供たちには「用事が出来たからごめんね」と断って抜けてきた。ということでさっさと森に向かいます。
森に入る前に【水泳】スキルと【隠密】スキルを【童歌】スキルと【促進】スキルに入れ替えます。【促進】スキルも派生にすることで何か変化するのではないかと思って入れ替えました。
ではモンスターを探しましょう。私は木の上に登ってモンスターを探します。すると狼が一匹でうろついていたので早速実験です。今度は別の歌を歌ってみることにします。
「『通りゃんせ通りゃんせ♪こーこはどこの細道じゃ♪天神さーまの細道じゃ♪ちっと通して下しゃんせ♪御用のないもの通しゃせぬ♪この子の七つのお祝いに♪お札を納めにまいります♪行きはよいよい帰りはこわい♪こわいながらも通りゃんせ通りゃんせ…♪』」
狼は歌っている私を見つけたのか、登っている木に向かってきて吼え始めた。私はその狼を【鑑定士】で調べてみた。
名前:エアストウルフ
―ステータス―
【牙Lv3】【爪Lv2】【AGI上昇Lv1】【嗅覚Lv1】【集団行動Lv1】
状態:位置把握不能
ん? 位置把握不能? どういった効果なのか調べてみた。
位置把握不能:自身の位置がわからなくなり、位置情報が取得できなくなる。
ようは場所がわからなくなるってことかな? 歌の長さの割に微妙な効果だなぁ…。でもまぁこれで【童歌】スキルはモンスターにも効くことがわかった。
とは言ったものの…【切断】スキルと【童歌】スキルをどう併用しろと…。
しばらくアリスのスキル準備期間となります。




