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Nostalgia world online  作者: naginagi
第六章
351/370

いともたやすく行われるえげつない嫌がらせ

「すばしっこさに翻弄されるな! 攻撃する前には尻尾が必ず立つことを見逃すな!」

「はっ!」


 リバーヴィードラはその巨体に見合わぬ素早さで私たちの周りを駆け回り、時には川の中に潜ってその姿を隠して私たちに場所を把握されないように動き続けながら攻撃をしている。

 だが団長さんやエクレールさんはこれまでの僅かな時間でリバーヴィードラの癖を見抜き、それを皆に伝える。


「流石銀翼といったところですね。こうもすぐに癖を見抜くとは」

「そう言いながらトアさんも実は見抜いてたりしてない? 団長さんが言う前に回避行動とか取ってたような気が…」

「お嬢様、メイドというのは相手の些細な癖も見抜かないといけないのです。ですので何もおかしいことなどありません」


 いやいや…そんなメイドって万能なものじゃないよね…?

 トアさんのメイドのイメージって本当になんだろう…?


「ただ、高い攻撃力と機動力なだけあって、しばらくすると息を整えるために動きが止まるというのが弱点なようですね」

「まぁあれだけ動いてたら息も切れるよね」


 人間でもそうだけど、全力で動いていられる時間ってのは案外短いものだ。

 全力疾走で一番早いとか言われてるチーターでも精々数十秒程度っていうらしいし、走るだけじゃなくて攻撃もするんじゃ更に動ける時間は少なくなるだろう。

 まぁさすがにゲームの中だから、レイドボスとかにはある程度そういった制限は無くしたり下げたりしてるだろうけどね。


「ですが好き放題に動き回られ続けるのも厄介ですね」

「それもそうだね。じゃあ少しかき乱そっか。おいで、ネウラ」

「はーいお母さん」

「えっと…お嬢様…何を?」

「えっ? 何って…嫌がらせ? じゃあちょっと行ってくるねー」


 私はネウラを片手で抱えて戦場を駆ける。


「じゃ、ネウラは私が土を盛り上げた場所と場所との間に蔓を伸ばしてね」

「うん、ネウラ頑張るー」

「『地形操作―隆起』!」


 私は空いている方の手で地面に触れ、地面を盛り上げる。

 いやぁ久々にこの地形操作使ったなぁ。

 最近だと使う機会があんまりなかったからなぁ…。

 まぁこういう地形操作系って普段の戦闘だとあんまり使わないもんね。


「じゃあどんどんやるよー」

「はーい」


 っと、盛り上げるだけじゃなくて穴も掘らないとね。


「『地形操作―穴』!」


 私たちが移動しない範囲に一メートル程の穴を掘ってーっと。


「でもお母さん、穴掘ってどうするの? あれだけ大きかったらこれぐらいの穴だとあんまり関係ないんじゃないのかな?」

「確かにあれだけ大きかったらあんまり関係ないんだけど、相手が素早く動くなら話は変わってくるんだよね」

「??」


 確かにこれぐらいの穴なら私たちサイズなら塹壕のように使えるけど、リバーヴィードラのサイズからしたら邪魔な穴ぐらいにしかならないだろう。

 ただ、リバーヴィードラのように素早く動くタイプならこの穴はかなり厄介になるだろう。


「まぁその成果はもう少しすれば見れると思うよ。じゃ、戻ろうか」

「はーい」


 さて、リバーヴィードラがこっち側へ駆けて来る前に皆のところに戻らないと。



「ただいまー。それで戦況は?」

「お帰りなさいませ。戦況と言いましても、タンクで耐えて息切れの時を狙って魔法職で攻撃といったことに変わりはありません。そもそも私たちはあまり眼中に入っていないようで、お嬢様が何か悪巧みをしようとしている事にも気付いていないようです」

「なら好都合だね」

「一体何を…っと、またリバーヴィードラが動くようですね」


 リバーヴィードラは銀翼に攻撃され続け、段々イライラし始めたのか身体から熱気を出すように体毛を赤黒くさせていった。

 おーっと、これは更に怒りモードになってる感じかな?

 ああなっちゃう前に先に仕掛けといてよかった。


「フシャァァァァァァァァァ!」


 リバーヴィードラは怒りに任せ、さっきよりも激しく私たちの周りを駆け回り始めた。

 だが、その動きもすぐに止めざるを得なくなった。

 いや、正確には止められたというべきだろう。


「フシャァァァ!?」


 横にもステップしながら駆け回っていたリバーヴィードラが突然盛大に横に転がるようにこけたのだ。

 私はそれを見てニヤリと笑みを浮かべる。


「またお嬢様が何か仕掛けましたか…」

「人聞きの悪いことを。単に段差と足払いを作っただけです」


 素早く移動しているということは、ほんの些細な段差や障害物が大きな影響を与えるのだ。

 具体的に言うならば電車などだろう。

 普通ならばあれほどの鉄の塊が小石にぶつかれば砕いたりしてしまうものだが、場合によっては電車をほんの少し浮き上がらせ脱線の元にさせてしまうこともある。


 さてさて、その素早い生物が突然段差などにぶつかったらどうなるだろうか。

 単純な話、崩れたバランスを制御できずに吹っ飛ぶだろう。

 それも鋼のような体毛をしているのだから本体も相当重いだろう。

 それがバランスを崩すということは大きな隙になるということで…。


「今よ! 目標に向けて斉射!」


 まぁ精鋭たる銀翼のメンバーにとってはただの的となるわけである。

 うまく起き上がれない事に合わせ、あまりの斉射にリバーヴィードラのHPは一気に削れ、ようやく起き上がれたリバーヴィードラは慌てて川の中へと逃げようとする。

 まっ、水陸両方いけるんだし逃げるなら陸路じゃなくて海路を選ぶよね。

 でもそれは悪手だよ。


「リエル!」

「ようやく出番ね!」

「…契約者アリスが天使リエルを緘する枷を今解き放つ!」


 私が両手を祈るように合わせると、私から漏れ出すように出てきた無数の光の玉が上空に待機していたリエルの元へと集まり、リエルが光に包まれる。



 契約者の蒐集した徳の消費――実行中――完了。



 契約者の封印――解除中――解除完了。



 天使 ウリエルの封印が解除されました。



 天使 ウリエルのスキル修正――完了。



 天使 ウリエルの能力が本来のものに戻ります。



 天使 ウリエルの能力再封印まで残り8分です。



「さぁ! 能力解放された私から逃れることはできないわ!」


 次の瞬間、川へ飛び込もうとして逃げようとしたリバーヴィードラの行く手を遮るように土壁が分厚く展開される。

 そしてその土壁はリバーヴィードラを囲むだけでなく、一方向だけ直線の通路のように逃げ場が作られていた。

 リバーヴィードラはその逃げ場を目指すように駆けるが、その奥に佇んでいる存在に気付く。


「うふふ~」


 既に必殺技の複合魔法の発射態勢に移っているリンを見て、直線の通路の途中まで進んでいたリバーヴィードラは慌てて来た道を戻る。


「あら、こっちに来て良いのかしら?」


 同様に能力解放されたリエルが自身の必殺スキルを準備していた。


「さぁこれで消し飛びなさい! 【迅雷・嵐複合魔法】『テンペストレールガン』!」

「人に害為す罪深き獣よ! 神の裁きたる炎によって滅されなさい! 『神の光』!」

「フッフシャ…キュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」




「ふぅ、すっきりしたわ!」

「久々に最大威力で撃てたわ~」

「二人とも大満足だね」


 二人の極大魔法に焼かれたリバーヴィードラは、直撃後少しの間形を保っていたが、すぐに霧散して消えていった。

 てかリエルはともかく、リンの複合魔法威力上がりすぎてない?

 リンに話を聞いてみると、どうやらリンのペットのニルスにも手伝ってもらっていたらしい。

 理論的なものはよくわからないが、ニルスの雷も相まってあの威力になったそうだ。


「リエルー! そんな事よりアンタが破壊した地形の修復手伝いなさいよー! 皆だってしてるんだからー!」

「そっそれでも土壁で被害を抑えたのよ!?」

「やりすぎって事なのよー!」


 まぁ実際、そんな高い威力で攻撃したら破壊痕はお察しの通りにはなるよね。


「これも依頼の一種と思えばいいだろう」

「リンにもしっかり言いつけておかないといけませんね」


 黙々と修復作業を続ける銀翼のメンバーを横目にリンは苦笑いをする。

 うん、リンもちゃんと反省するんだよ。



「いやまぁ破壊痕の責任の半分はお嬢様にあるのですけどね?」


 …トアさん、ちゃんと私も作業するのであまりいじめないでください…。

結構久しぶりに投稿した気がする…(遠い目

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